―第7章― 千夏が3月を生き永らえる為の理恵達の「訪問」
隼人が勢いよく扉をノックして開けると、重たげな息を吐き出す死神がいた。
部屋の空気は張り詰めて、緊張感が漂っている。
死神の瞳はどこか遠くを見つめて、何か深く試案に沈んでいるようだった。
思いつめていたような息漏れが部屋に響く。
「鍵、見つかったぞ」
飛鷹が鍵を掲げると、死神は固まった。
まるで時間が止まったように瞳の先が凍り付く。
「どうやって探した」
低く、冷たい声。
その奥には焦りと苛立ちが混じり、真っ暗な部屋という要素が相まって、空気はさらに重くなっていた。
壁の影が揺れ、まるで何かが潜むような不気味さを醸し出す。
「木に登っていた子供が落としてったんだよ」
飛鷹がぶっきらぼうに答えると、死神は肩を引き締めていた力を抜いてふっと笑った。
その笑いはどこか自嘲じみていて、諦めにも似ていた。
「上の方は探さないと思って木の上に隠したのにな。まさかそんな偶然が起きるとはね…」
長い息が部屋の闇に溶けていく。
「死神さんがわざと隠したの?なら、どうして千夏を助けたの?」
想空はただただ疑問を追い求める子供のように純粋な声で尋ねる。
嫌になる。
想空の純粋な声を聴くと、自分の愚鈍さが身に染みて伝わって、罪悪感に押し潰される。
あんな風に、純粋に一つの事だけを追いかけて生きられたらどんなにいいか。
そう思ったところで、私は思うだけ。
行動に移すことはしない。
傍観者。
何の役にも立たない、ただ存在するだけの傍観者。
死神は想空の疑問に答えることはなく、「千夏に寿命1ヶ月分あげとくよ」と言って、静かに私達をまた追い出した。
部屋の扉が閉まる音が重苦しい沈黙を引き立てる。
千夏の寿命が1ヶ月増えたというのに、何処とない焦燥感が体の奥に積もっていた。
むしろ濃く、深く、沈殿していく。




