―第6章― 千夏が3月を生き永らえる為の隼人達の「焦燥」
3月31日。
3月の最終日。
今日のうちに見つけなければ、千夏は死ぬ。
「部活、今日は休むから顧問に伝えといて」
テニス部の友達に短く告げ、足早に公園へ走った。
息が荒いのか、焦りで胸が締め付けられているのか、自分でもわからない。
深呼吸もおざなりにあの世へ飛ぶ。
これまで感じたことのないほど強烈な焦燥感が胸を締め付けていく。
視界が揺れ、地面が足元に戻った瞬間、胸の奥で何かが爆ぜた。
「どうすれば…。どうすれば…」
呟いたところで答えは出ない。
「くそ。何なんだよ。助けてくれるって言いやがったのにこれかよ」
飛鷹が苦々しく顔を顰めて叫ぶ。
その声は怒りよりも絶望に近かった。
不満を叫ばずにはいられない。
でも、舌を噛みしめて、必死に探し続けるしかなかった。
その時、小学生くらいの赤いキャップを被った男の子が突然走り出した。
ぴょんぴょんと反動をつけて、木に飛び乗っていく。
「おい、危ないって」
コイツが怪我をしたところで俺には関係ない。
こんなところですら、千夏を失う八つ当たりで、卑屈な考えが先立ってしまい、嫌になる。
小さく息を吐いたら、その男の子は木から思い切り飛び降りた。
そしてそのまま綺麗に着地して、走り去っていく。
何かが落ちた。
「落としたぞ」
その少年を追いかける。
人助けをしたところで、僅かな徳を積んだところで、千夏が助かる訳じゃない。
そんなことは分かっているのに、僅かなもしかしたらに賭けて、動いてしまう。
「隼人。ちょっと待て」
飛鷹の声に振り返る。
その手の中に、銀色に輝く鍵があった。
御伽噺に出てくるような先がでこぼこしていて、持ち手の丸い鍵。
「これだよな。輪廻転生室の鍵」
飛鷹が呟く。
今まで一生懸命探してきたのが嘘みたいにあっさりと。
これで、千夏を助けられるんだよな。
鍵を強く握りしめて走った。




