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なろうラジオ大賞

冬の観覧車

作者: 地野千塩

「観覧車に乗りなさい。きっとそこで運命の人に出会えるから」byよく当たる占い師


 失恋続きでダメ男ばかり捕まえる私は、ついに占い師に頼り、その言葉通りにやってみることにした。


 地方の遊園地の観覧車は活気がなく、何周観覧車に乗っても大丈夫らしい。


 一周、二周、三周とぐるぐる繰り返すが、だんだん寒くなってきた。


 当たり前だが、観覧車のゴンドラに暖房などない。今は二月。足元から冷えてくる。


「寒い」


 鼻水垂らしながら四周目。まだ占い師の予言は成就しない。あれは予言というより寝言だったのだろうか。運命の人の影も形もない。


 思えば観覧車という乗り物は、目的地はない。ずっと同じ場所でぐるぐる回る乗り物。確かに頂上は少し怖いが、ゆるく移動しているせいでスリルもない。景色も特に良い訳でもなく、田舎のダサい看板だらけの県道やショッピングセンター、小さな山が見えるだけ。


 どんどん身体も冷えてきた。何度も繰り返す観覧車に潰されていくような感覚も覚える。指先がぷるぷる震えてきた。


「思いきって降りてみようか?」


 運命の人は、ぐるぐる回る乗り物ではなく、自分で目的地を見つけた先にいるのかもしれない。あるいは散歩道の途中に。身近な所にひょっこりいる可能性だってある。


 もう占い師の言葉に頼れないのは、少し怖いけれど。そのスリルも楽しいかもしれない。五周目、視界の隅にジェットコースターも見える。


 六周目、後ろ髪が引かれつつ、なかなか降りられない。


 七周目。ようやくここから降りる決意がついた。


 地上に降りた。足に地がついた。ぐるぐる回る運命から逃げられたらしい。


 地上の方が寒くはないかもしれない。そう思うと、一歩だけでも前に進める気がした。

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