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もしかしてだけど――4

 山登りのゴール地点には野外調理場があった。ここで、二番目のレクリエーションである、飯盒炊爨(はんごうすいさん)とカレー作りが行われる。


 山登りの疲れを取るために休憩を挟んでから、昼食を兼ねたレクリエーションがはじまった。


「まずは、それぞれの役割を決めよう」


 四人の班員の前で、俺は切り出す。


「俺はカレー作りをやるよ。料理の腕はあるつもりだからね」

「わたしも哲くんのお手伝いをしようと思います」

「哲くんと彩芽ちゃんに任せておけば間違いないよね」

「だったら、俺とちぃは飯盒炊爨だな」

「わたしは状況に応じて、双方のサポートをしようと思います」


 料理が得意な俺と彩芽は、必然的にカレー作り担当になるので、修司・知香・美影の役割もスムーズに決まった。


「いやー、楽しみだね、修くん。哲くんと彩芽ちゃんが作るカレーなんて、美味しいに決まってるよ」

「二年一組の――いや、桜沢高校の料理上手ツートップだからな。きっと、いままで俺たちが食べたことがないほどの、素晴らしい一品が出てくるに違いない」

「ハードル上げるなあ……でも、期待に応えられるように頑張るよ」


 苦笑して、俺からもふたりに頼む。


「修司と知香もしっかりやってね。カレーはご飯あってのものなんだからさ」

「おう! やるだけやってみるわ!」

「期待しないで待っててね!」

「期待はさせてほしいんだけど!?」


 軽口を叩き合ったのち、俺たちはそれぞれの作業に取りかかった。


 段差に腰掛けている彩芽に、俺は呼びかける。


「それじゃあ、はじめようか」

「はい」


 彩芽が応じて立ち上がるが、その足元はおぼつかない。よくよく観察すると、呼吸も整っていなかった。


 もしかして、山登りの疲れがまだ取れていないのか?


 だとしたら、調理に携わってもらうのは危険だ。疲労で注意散漫になり、手を切ったり、火傷したりしてしまうかもしれない。


 そう危惧(きぐ)した俺は、彩芽に勧める。


「疲れてるなら、休んでいてもいいんだよ?」

「そういうわけにはいきません。山登りで皆さんの足を引っぱってしまいましたので、カレー作りではお役に立ちたいんです」


 彩芽が首を横に振る。眉を寝かせた表情からは、責任感と罪悪感が見てとれた。


 彩芽の気持ちはわかる。けど、ケガをさせるわけにもいかない。


 それならと、俺は第三の選択肢を提示した。


「だったら、下ごしらえを任せてもいいかな? 野菜の皮むきとか、お肉に下味をつけたりとか」

「哲くんのサポートをするということですか?」

「ああ。具材を切ったり煮込んだりするのは、俺がやるよ」


 下ごしらえに専念してもらえば、彩芽がケガをする可能性はぐんと減る。希望通り調理にも携われるので、一石二鳥だ。


 俺の提案が満足のいくものだったらしく、彩芽は目を細めた。


「わかりました。気を遣ってくださり、ありがとうございます」

「どういたしまして」


 俺もまた笑顔を浮かべ、ふたりでカレー作りに取りかかった。

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