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女の子とのお出かけはデートに含まれますか? ――5

 ランチのあと、軽くウインドウショッピングをして、俺と彩芽はモールを出た。


「このあとはどうしよう? 特に用事もないし、帰る?」

「その前に、哲くんを案内したい場所があるんですけど……」

「俺を案内したい場所?」


 目をパチパチとしばたたかせると、彩芽がコクリと首肯する。


「はい。きっと気に入ってくれると思うのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ、いいよ。今日、彩芽は付き合ってくれたんだし、今度は俺が付き合う番だ」

「ありがとうございます。では、行きましょうか」


 ニッコリと笑って、彩芽が俺の手を引いた。




 彩芽が俺を連れてきたのは、先ほどのショッピングモールから少し離れた位置にある、海浜公園だった。


 園内を進み、彩芽がある設備を指さす。


「ここです」

「あれって、観覧車?」

「はい」


 俺を案内したい場所とは、あの観覧車のことらしい。


 けど、どうして観覧車なんだろう? 『きっと気に入ってくれる』とも言っていたけど……。


 首を傾げる俺に、彩芽が笑みを向ける。隠していたプレゼントを、満を持して披露しようとしているみたいな笑顔だ。


「あの観覧車を見て、気づくことはありませんか?」

「気づくことって言われても、俺がここに来るのははじめてだし……」


 困惑しつつも、改めて観覧車に目をやる。


 ジーッと眺めて――違和感を覚えた。


 あの観覧車、どこかで見たような気がするな……ここには来たことがないのに、どうしてだろう?


「うーん……」とうなりながら記憶をたどり、ハッとした。


「『甘ニャン』に出てきた観覧車!」

「そうなんです! 東京旅行編で、和希くんと奈緒さんが乗っていたものにそっくりなんですよ!」


 気づいてもらえて嬉しいらしく、彩芽がパアッと明るい顔をする。


「ネットを眺めていたら偶然見つけたんです。なんでも、『甘ニャン』に出てきた観覧車のモデルになったそうで」

「そうだったんだ! だったら、聖地巡礼じゃん、これ!」

「聖地巡礼?」


 首を傾げる彩芽に、俺は説明する。


「自分が好きな作品のモデルになった場所に行くことをそう呼ぶんだ。近頃は、聖地巡礼を目的にしたツアーもあるらしいよ」

「楽しそうですね! 哲くんと一緒に参加してみたいです!」

「たしかに楽しそうだね。いつか行きたいなあ」

「ふふっ。約束ですよ?」


 俺の返答に、彩芽がふにっと目を細めた。


 ご機嫌そうに鼻歌を奏でつつ、彩芽が観覧車を指さす。


「せっかくですし、一緒に乗ってみませんか?」

「ああ、そうしよう!」


 迷いなく頷いて、俺たちは観覧車の受付に向かった。

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