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神を狩る  作者: アキナカ
虎穴に入る
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虎穴に入る④

「ジョルジュ、作戦はどこまで知ってる?」

「作戦なんて言えるものかよ、こんな雑なものが」


 そちゃまあ、ごもっともで。


「今朝がたキャンプに戻ったときに、嬢ちゃんに聞いた。シェロが来ていることもな」

「ああ、あいつには存分に暴れてもらってる」

「そりゃ…適材適所だ」


 状況を確認しながら、俺とジョルジュは二階へと移動する。

 どうやらジョルジュはいなくなった姫サマを探すために、三日前からアドンに潜入していたようだ。


 うまく回帰派に潜り込めたのは、身分を偽る必要がなかった点も大きいだろう。実際、はぐれ《狩人》なのは間違いない。

 とはいえ、あのサァミラとかいう女に会っていたら一目で見抜かれていただろうが。


「ここが書庫か」


 書庫は、二階の片隅にあった。周辺地域の地図を始め、雑多な書物が未整理なままにところ狭しと並んでいる。


「この中から見つけんの…?」

「うるせえ、文句言わずに探せ」


 書庫に所蔵されている本は膨大な量があった。書棚をひっくり返し、それらしい書類を探す。何せこの数だ。思ったより時間がかかりそうだな…。


「おい…」

「聞こえてますって」


 建物の外から、多数の足音。追手だろう。


「こちらが本命だとバレたな」

「…しゃーなしかね」


 すぐ近くまで追手が来ている。やむを得ないな。


「ジョルジュはそのまま手掛かり探しを!」


 書庫で戦って書物が破損する可能性を考慮し、窓から建物の外に出て、ロビーに入る。多数の足音が聞こえてきた。予想したよりも数が多い。

 俺はロビーで、追手の到着を待ち構えた。


「おいおい、こりゃぁ流石に…」


 その数、およそ三十。どうやら、任務に出ていった一団が帰ってきたらしい。街の中央から聞こえてきた爆音も聞こえなくなった。

 囮作戦は時間切れか。


「甲部隊! 前へ!」


 回帰派の《狩人》の部隊は、統率された動きで俺を取り囲もうとする。こう見通しがいいと、小細工は通じないだろう。

 時間稼ぎができればいい。ここからはガムシャラだ。


「《渦巻く双刀》!」


 先ほどの《狩人》から拝借した狩猟武器を構える。

 そして敵の攻撃をいなし、躱し、反撃。しかし敵は訓練された動きでそれをやり過ごす。決定的な一撃を加えようと踏み込むと、別の《狩人》が前に出て防ぐ。直後、別の角度から反撃を繰り出してくる。


 一撃一撃に大した威力はない。だが時間をかけてでも、確実に敵を削っていくという動きは実にやりにくい。こいつら、多対一の戦闘に慣れている。

 おそらくこの部隊によって、アドンに駐屯していたギルドの《狩人》は一網打尽にされたのだろう。


 しかし、時間稼ぎであればこちらの目的にも一致する。ここで釘付けにしておけばそれでいい。そう思い、持久戦を覚悟したとき――。

 ものすごいスピードでこちらに迫る足音。これはまさか…?


 「ドゴォ!!!」という音とともにロビーの扉が吹き飛び、回帰派の《狩人》たちもまた四~五人ほど吹っ飛ぶ。あの爆音、確認するまでもないだろう。シェロだ。


「ハッハァ!! アッチは品切れだ! おかわりを寄こしなぁ!!!」


 戦闘狂みたいな台詞を吐くシェロ。まずい…目がイッてる。

 その姿を見て俺よりも警戒すべき対象が現れたと判断したのか、回帰派の《狩人》たちは部隊を分けて迎撃にあたる。


「バカ! 逃げろ!」


 俺がそう叫んだ瞬間、背後から斧を持つ《狩人》が攻撃を仕掛けてくる。俺はそれを《渦巻く双刀》で受けて、つばぜり合いをする形になった。


「仲間の心配をしている場合か!?」


 斧使いの《狩人》は斧に力を込め、こちらを押し切ろうとする。

 こいつは実に間抜けな勘違いをしている。

 シェロを? 俺が? 心配する? 冗談だろう。

 自分よりはるかに格上の《狩人》を心配するヤツがどこにいる。


「違う…逃げろはお前らに言ったんだ。死にたくなければ、すぐにこの場から逃げろ!!」


 つばぜり合いながら、回帰派の《狩人》たちに警告するのは純粋な親切心からだ。あの女…シェロが囚人服を着ている理由を知っていれば、正面から戦いを挑もうなどとは考えない。


 そのとき、「バギィ」と音が鳴った。どうやら、シェロの槌の柄が折れた音らしい。無理もない。ずっと無茶な戦いを続けたからだろう。


「ここまでだ!!!」


 だが、敵にとってはあの槌が壊れないほうがよかった。あの武器は単に火薬を仕込んだだけの仕掛け武器であって、狩猟武器ではない。

 シェロの狩猟武器は――。


「《ヤマネコの爪》」

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