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神を狩る  作者: アキナカ
虎穴に入る
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虎穴に入る②

 また翌日、俺は地理院の近くで身を隠していた。

 当然、姫サマは留守番だ。今回は荒事になる可能性もある。そうなれば、未来視の神授(ギフト)でも安全とはいえないだろう。


 シェロには別行動でやってもらうことがある。内容は実にシンプル。昨日キャンプに帰ったあと、俺はシェロにただこう告げた。


「暴れろ」

「いいねぇ」


 ただ一言だけで、シェロはすべてを理解したようだった。

 回帰派の《狩人》を引き付けるため、街の中心で暴れまわる。それがシェロに頼んだ今回の仕事だ。


 俺は今、その合図を待っている。作戦開始の合図となる狼煙を。


「ドゴォン!!!!!!」

「ヒャーーーーハッァァァァア!!!!」


 街中で爆音が鳴る。それにつられて、多くの回帰派の《狩人》が音の方向に向かって走り出す。間違いない、シェロの“合図”だ。

 …なんだか聞き覚えのある奇声まで聞こえてくるような気がするが、気のせいだと思いたい。

 何はともあれ、これなら十分だろう。作戦開始といこう。


 俺は二階の倉庫の窓から内部に入り込む。

 ここは元々研究所として建設されたものだ。周辺地域で狩られた神獣をここに持ち込み、神授(ギフト)の研究をしていたらしい。

 近年では地図の作成に重きを置いており、名前も地理院に変わった。


 今回用があるのは、この建物の書庫。そこになら、何か手がかりがあるかもしれない。

 地図はすでに頭に入っている。武器と呼べるものが、その辺の資材置き場で拾った鉄棒と急ごしらえの弓しかないのが心細いが…極力戦闘を避けながら、書庫を目指すしかないだろう。


「だ…!!!」


 廊下で見張りをしていた回帰派の《狩人》を、大声を出されるより先に鉄棒で締め落とす。

 目的地は二階にある。そのまま階段を駆け上がろうとすると…そこにいたのは回帰派の《狩人》の二人組。


「お前は…!!!」


 目撃された以上、ここで仕留めるほかないだろう。鉄棒を構えると、まだ状況をのみこめていない一人を殴り倒した。先手必勝だ。


「《手招く鎖》!」


 もう片方の《狩人》が狩猟武器の名前を叫ぶと、その手に持った鎖の片側が虚空に消える。そしてその先は…いつのまにか俺の持つ鉄棒にまとわりついていた。

 鉄棒は鎖に引っ張られ、動かすことができない。


「もらったぁ!!」


 武器の動きを封じて、勝ち誇っている様子だ。それなら、それでいい。


「そんなに欲しけりゃ…あげますよっと!」

「なに!?」


 鉄棒に込めた力をゼロにする。当然、鉄棒は強い力で引っ張られるが、その勢いで《狩人》がよろめいた。そのスキに、俺は武器を背中の弓に持ち替え、矢を放つ。矢は《狩人》の肩に命中した。


「くっ!!! くそ、これ…し…き…」


 そのまま《狩人》は眠りに落ちる。

 対人戦は予想して、あらかじめ矢には強力な眠り薬を塗ってある。


 戦いを終えたあと、入口のほうから足音が聞こえてきた。おそらく物音を聞きつけてきた回帰派の《狩人》だろう。無視して先に進むことも考えたが、足音はひとつ。ここで仕留めてしまったほうがいい。

 そう思って、隠れて様子をうかがうと…そこに現れたのは意外な人物だった。


「ジョルジュ?」


 姿を見せなかったジョルジュがいた。こんなところにいたのか。俺は周囲の注意を引かないよう、小声で話しかける。


「おい、ジョルジュ! おいって!」

「……」


 ジョルジュはこちらを見たが、返事はない。


「?」


 様子を訝しんだ、次の瞬間。


「こっちだ!」


 ジョルジュが大声を上げ、誰かを呼ぶ。現れたのは、回帰派の《狩人》が…六人。


「ジョルジュ……!」

「悪いな、メル。俺はこっちに付かせてもらう」

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