表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神を狩る  作者: アキナカ
最強の剣
37/73

最強の剣⑤

 狩猟拠点アドン。


 中央王都以外に人類が居住できる、数少ない霧の拠点だ。

 王都以外では最大規模の人口を有しており、物流の中間地点として《狩人》が行き交う。遠方の狩猟地に向かう場合は、ここで物資を補給するのが通例となっている。


 都の外の拠点は、かつて《狩人》によって編成された遠征団によって開拓された。今そこで暮らすのは、遠征団の子孫たち。しかし《狩人》の子孫といえど、誰しもが十分な《狩人》適正を持つわけではない。

 拠点に設置された簡易的な《霧の塔》は、そんな子孫たちを瘴気から守るためのものだ。


「さて、そろそろ到着ですよ。懐かしいなアドン。子どものころに行ったことあります。中央では見たことないような名産品もあって…」

「へぇ~」


 俺たちは雪原を抜け、狩猟拠点アドンまでの道を進んでいた。

 もう数十分もすれば着く距離だ。いろいろあった旅路だったが、ようやく休めるというもの。何よりまともな食事にありつけるのがありがたい。


 狩猟拠点アドンでは《狩人》による物々交換も盛んだ。おそらく、新しい助っ人も簡単に見つかるだろう。

 …まあ、助っ人が見つかるまでは姫サマに付き合うとするか。


「おい、見ろ」


 先を進んでいたジョルジュが何かを見つけたようだ。おそらく目的地が見えてきたのだろう。

 しかし、様子がおかしい。

 ジョルジュは、進行方向にあるものを見るように促した。


 目の前にあったのは、やはり狩猟拠点アドンの遠景だ。しかし、子供のころに見た光景とは、明らかに違うことがある。


 霧が、晴れている。


「なん…でだ?」


 そのとき、複数の視線と――刺すような殺気。


「危ない!」


 殺気の向かう先には、姫サマがいた。俺は思わず、その間に入る。次の瞬間、凄まじい勢いで何かが飛んできた。それが矢だと気付いたのは、俺の腹に突き刺さる直前だった。


「っっ!!」

「メルさん!」


 腹部に激痛が走る。俺はすぐさま腹に刺さった矢を抜き、矢じりを舐める。舌にわずかな刺激を感じた。


「逃…げろ。ジョルジュ」


 大声を出したつもりだったが、虫の鳴くような小声にしかならなかった。意識が朦朧としている。

 遠くで泣きわめく姫サマと、それを抱えてこの場から逃げるジョルジュが見えた。そうだ、それでいい。今は何より逃げるんだ。

 おそらく、俺は毒矢にやられている。


 俺はついに地面に倒れ込んだ。意識を失う前に朧気な視界の中で見えたのは、近づいてくる複数の人影だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ