転がる獣③
ギガンテの偵察を終えてから、三日が経過した現在。
俺たち――ゴミ拾いの面々も含めての一行は、マラタイ鉱山でひたすら穴掘りに従事していた。
ジョルジュは、ゴミ拾いたちを指揮して工作機械を動かしながら、自身も汗と土にまみれてスコップで穴を掘っている。
「本当にこれでうまくいくんだろうな?」
「プラン作りは俺に一任したんだから、そこは信用してほしいもんすね」
文句をいうジョルジュに軽口を叩きながら、周囲一帯を見回す。
三日前はただのくぼみだったこの場所も、すっかり立派な穴となった。
俺が決めた狩りのプランとは、“落とし穴を掘る”というシンプルなもの。
一週間使って落とし穴を掘って、ギガンテを誘導し落とす。残りの日数でギガンテを弓や投げ槍で攻撃していく。
長期間の無力化と持久戦は、ギガンテの狩りにおいてはセオリーといっていい。神授を発動していないタイミングを見計らって攻撃し、じょじょに体力を削っていくことで、安全に狩りができる。
本来はもっと大人数でローテーションしながら見張りと攻撃を続けるものだが、いかんせん攻撃役は《狩人》以外には任せられない。実際の狩りでは、俺とジョルジュの負担が大きくなりそうだ。
「おめぇもちょっとは働け」
「体力を温存してんすよ。いざ狩りのときにバテてちゃしょうがないでしょ? それに固い地盤に当たったら《狩人》の力じゃないと掘れなくなるんだから。そっちも体力使いすぎないようにしないと」
なおも不満そうにこちらを見るジョルジュを無視して、また周囲の状況を見る。
「ふぅ!」
穴の端では、姫サマが穴掘りに参加している。さわやかな汗を流しながら、どこか満足気な様子だ。いいとこのお嬢様だろうに、意外にも肉体労働は性に合うらしい。
それを心配そうに見守りながら、ゴンゾウじいさんは掘り出された土砂を穴の外に運んでいる。もちろんゴンゾウじいさんは姫サマの参加には反対したが、最終的には押し切られた。
まあ、この段階では危険も少ない。本番の狩りまでに体力を消耗させて、しばらく寝ていてもらうのがよさそうだ。
そして俺はと言えば、もちろんジョルジュのいったようにサボっているわけでは決してない。穴づくり以外に必要な作業があるのだ。
それをするために、俺は除去された土砂を物色していた。
「これと…これと、これは使えそうだな」
土砂から取り出したのは、神獣の羽や骨。主にギガンテの食い残しだろう。
「なんに使うんです? そんなもの」
「うぉ! びっくりしたぁ」
いつの間にか姫サマが背後に寄ってきていた。土砂を物色する俺の様子に、好奇心を刺激されたらしい。
「狩猟武器作りですよ」
神獣の素材には、死後も神授が宿っている可能性がある。詳しく調べてみないとなんともいえないが、これらの素材でも簡易的な狩猟武器であれば作成できるはずだ。
「狩猟武器作り…! 見てみたいです!」
ですよね。しょうがない。まあ危険性も低いし、見学させても問題はないだろう。
俺はゴンゾウじいさんに姫サマを連れていくことを軽く報告すると、鉱山のふもとの選鉱場へと向かった。




