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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

熊を駆除するのはかわいそうなのでやめてください

作者: 山本福志

轟音とともに、窓枠がひしゃげた。


大型のツキノワグマだ!


その熊は山小屋の窓を破壊して今にも室内に入ってこようとしている。


中に入られたら終わりだ。

簡素な作りの山小屋は身を隠す場所が無い。



私は震える手で猟友会に電話をかけた。


「早く来て!あの熊を撃ち殺してよ!」


「ああ、例の山小屋にいるんですね。でも、本当に駆除していいんですか?」

電話ごしの担当者は言った。


「当たり前でしょ。何悠長なこと言ってるのよ!人命がかかった緊急事態なのよっ!」

私は金切り声を上げた。


「わかりました。しかし我々猟友会のハンターも本業の仕事があります。それにこちらも命がけですし。今すぐに来いと言われましても困ります。まあ、できるだけ早くメンバーを集めて駆けつけたいとは思いますが……。」


次の瞬間、熊が窓を破壊して入ってきた。


熊は前足の一撃で私に致命傷を与えた。


血しぶきとともに私は床に転がった。


これはもう助からないな。

そう直感する。


熊は音を立てて私の内蔵を食べ始めた。


薄れゆく意識の中で私は回想した。




近年熊の害の増加に伴う駆除件数が増加している。

一方「熊を駆除するのはかわいそうだからやめてください」というクレームが寄せられることも物議を呼んでいた。

かくいう私も猟友会や行政への批判を展開した一人だった。しかし本心では熊がかわいそうとは微塵も思っていなかった。ただSNSや動画サイトで動物愛護系の人々からいいねをたくさんもらえることが快感だったのだ。おまけに動画は収益にもつながった。そして私はいつの間にか害獣駆除反対派の代表のような立ち位置になっていた。


そんなとき、私の元へ一通のメールが届いた。


「あなたは東京で熊駆除反対を訴えていますが、熊の生息地域で暮らす地方の人の気持ちがわかりますか?熊が頻繁に現れることで有名な山小屋があります。そこで一泊してみてはどうですか?」


よくあるアンチの煽りメッセージだ。

最初はそう思った。

でも、その山小屋で一泊したら動画の再生数が上がると考え直し、くだらない挑発にあえて乗ってやることにしたのだ。

私は山小屋に一泊することを高らかに宣言した。その様子はメディアにも取り上げられた。


そんなわけで、今こうしてツキノワグマに食べられている。




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