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都賀という禰宜は話を終えると、水筒の水をごくごくと飲んだ。


「その後は橘様のご自宅で橘様と奥様に介抱して頂きました。

私は先程体験した奇天烈極まりない出来事を全て橘様に申し上げました。橘様はにわかには信じ難いと仰いましたが、何しろ、松が無いのですから、松が。・・・松が一本」


男はそう言うとじっと俺を見詰めた。

そして指を空に向けると、つう・・と空に線を描いた。

こんな風に空を渡って行って・・・。こんな風に・・・。行ってしまった。松が・・。


暫し、空を見る。


視線を戻すと話を再開した。

「私は連絡を受けて迎えに来た妻の車に乗って帰りました」

「しばらくはゆっくりと休養しなさいと橘様は言ってくださいました・・・」


「それから半月も過ぎた頃、どうにも我慢が出来ずに、私はお暇を頂いて・・・旅に・・一か月ほど・・・」

禰宜はそう言うとまた、呆けた様に黙って宙を見た。


「大丈夫か?この男」

俺はこの男が心配になった。


男は首を振ると、また俺を見て言った。

「これで私の話は終わりです。最後まで聞いてくださって有難う御座いました。これから私は四国に参ります。四国の霊場などを廻る所存に御座います。全ては修行のため。・・・では行って参ります。くれぐれも無事にめぐり終えて、また○○神社に戻れますことを心からお願い申し上げます」

彼はそう言って立ち上がると、社の前でぱんぱんと柏手を打って祈りを捧げた。

彼は踵を返すとじっと俺を見詰めた。

そして呟いた。


なぜ、私はこの様な石作りの狐様の前で滔々と話をしているのだろう・・・。

まあ、だが、仕方が無い。

人には話すことが出来ぬのだから・・・。しかし、このお狐様。良いお顔をしてなさる。

まるで親しい人に打ち明け話をした様な、さっぱりとした気分になった事よ。

ああ。これは幸先が宜しい。

流石に『最強のパワースポット。誰も知らない日本の神社10選』に載る神社だけの事はあるな。


男はそう言って俺の頭をなでると社を後にした。



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