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世界箱  作者: 水楽
1/3

酒、男、アイン

――鉄。

それは人類の文明を語る上で切れない物。

――火。

それもまた人類を語る上では切れぬ物。

だが、一人の愚か者によって時代も世界の可能性もひとつに纏められた世界が生じた。

そんな世界でこの世界が生まれた意味を探す一人の男の物語。


「出ていきな!」

そう声が鳴り、酒場から一人の酔いどれが蹴り出される。

「酒を飲みきってからでもいいだろうがよ」

と…呟く。

「お前さんまたやったのか?」

見るからに筋肉と結婚してますといった風貌の男が声を掛ける。

彼はこの街、火を信仰するアグニ王立国に拠点を構える冒険者カンパニーの社長ギリガンだ。冒険者カンパニーと言っても実際は日雇い労働者組合だが。

「昼間で客がいねぇのに追い出しやがる店の方が悪ぃんだよ」

と、どう考えても自己中心的な発言をする酔っ払い。

「アイン、ビール一杯で何時間も居座るからだろうがよ」

ギリガンは正論をアインと呼ばれる酔っ払いに突きつける。

「正論ビームはやめろ社長それから、その名で呼ぶな」

アインは言う。

「お前さんは魔法学校を卒業したんだから卒業した奴らは魔法名で通さないとならない事ぐらい分かるだろ?」

ギリガンはさらに続けて

「まぁ着替えてから、ウチで仕事の依頼もたまには受けてみな」

「来てやったぞ、オッサン」

「誰がオッサンだぁ?てめぇに言われたかねぇわ!」

アインとギリガンは軽くいじり合う。

「社長の方がどう見てもおじさんでしょ〜?」

受付の女は言う。

「人は見た目だけじゃ分からねぇんだよ」

と、ギリガンは言う。

「そういうことにしておきますよっと」

「真面目に聞けよ!」

ギリガンはそうツッコミを入れた後にアインに向きなおると

「で、お前に出せる依頼はこんだけだ」

と言い、掲示板に貼ってあった紙を何枚か引っ張ると無造作にアインの居るカウンターの前に置いた。

「えぇ…っとなんだ?こんな舐めた依頼しかねぇのか?」

出された紙の内容には薬草採取の護衛、生垣の刈り込み、ミミッチーの駆除と書かれている。

「まぁそう言うなよ…ミミッチーの駆除なんてどうだ?この時期だと食べ頃のスイカを狙うミミッチーが大量発生するから農家の方々に喜ばれるぞ〜」

ミミッチーの駆除をギリガンは勧めた。

「そんなボランティアみてぇな仕事じゃなくて俺はもっとドラゴンとか山のヌシを倒してドカンと稼ぎてぇんだ!」

そうアインは怒る。

だが、それを聞いていた冒険者カンパニーに依頼受けに来ていた見るからに山賊の様な男たちが

「そんなこと言ってっが魔法学校卒業してから一度も受けてねぇ証なしのガキは違ぇよな〜」

と野次を飛ばす。

「死ぬか?」

そう言うとアインはクロークの裏に隠し持っていた銃を抜き三人組に向ける。

「てめぇ、そんなレアもん何処で盗ってきた!」

三人組の野次を飛ばしていた男が叫ぶ。

「盗ってきた?何を言ってんだこれは俺のだぜ?」

アインは男の発言を訂正する。

「……はっ、どーせ偽モンに決まってらァ!怯える必要なんざねぇ!」

と男がまだ虚勢を張り続ける。

「…チッ」

アインが舌打ちすると天に向かって銃弾を八発射撃した。

「嘘だろ…」

男たちは愕然とし、そそくさとこの場から逃げ去る。

「てめぇ!ここで銃を打つなと言っただろ!何度目だ!」

ギリガンは憤慨する。

「すまねぇ、ついカッとなってな」

アインはすまなそうにしながら弾を込める。

「次やったら今までの分弁償させると言ったよな?」

ギリガンがそう言うとアインは動きを止めた。

「それだけは勘弁してくれ」

アインは先程と違い、許しを乞う。

「まぁいい、弁償の代わりにこの中の依頼を受けろ」

ギリガンは依頼を選べと言わんばかりに顎をしゃくる。

「じゃあこれだな」

アインは一番楽そうな薬草の採取の護衛の依頼をギリガンに突き出す。

「楽そうなの選びやがって…」

ギリガンはため息を吐く。

「護衛なんて立ってるだけでいいんだろ?こんな離れの村じゃ狼一匹出るのが珍しいだろ」

アインは言うが人生はそう上手くいくはずもなく…

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