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 もう、何がなんだか……。勘弁してくれーい!

 尋常じゃないこととは無縁でいたいのよー。


 キュウもそうだったけど、タツの成長のスピードはバグってる。


 あっ。

 今、タツがトリケラトプスに炎を吐いて丸焦げにしたのが見えた。遠目からでも分かるほどに業火を浴びせた。


 ……こ、怖いんですけど。




「あやつら派手にやっておるのう」


 シモーネさんが帰ってきた!


「シモーネ様! あれ! あんなのどうかしてます! 今すぐやめさせたいんですけど!」

「まあな。あやつら、魔物どもをおもちゃのように蹴散らしておるのう。あそこまで力の差があると、いたぶっておるようにしか見えんな」


「だーかーらー。キュウにそんなことさせたくないんです。どうしたら止められますか?」

「お主はバカか」

「はい! もう、俺、バカなんで! 教えてください!」

「ふん」


 へ? 「ふん」てどういうことです? 

 あんまり魔物を倒し過ぎて、キュウがタツみたいにでっかくなったらどうしよう!


「あやつらはお前の支配下にあるんじゃ。お前が好きに命じればよかろうが」

「へ?」


 どうやって? ここから叫んでも、俺の声が届くはずがないと思うけど。

 まあ一応。


「おーい! キュウ! 帰っておいでー」


 ふう。やっぱ無理です。




「シモーネ様。声が届かない時はどうすればいいんですか?」


 バシン!


 シモーネさんは枝を一振りしてから応えた。


「バカ者が」


 ええーっ? こんなに丁寧に聞いたのに? 上から見下ろしているのが気に入りませんか?

 あれか。子どもに話す時みたいに、膝をついて目線を同じ高さに――ってやつか。


 もしかしたらと思って、しゃがんでシモーネさんの目と同じ高さに合わせた。

 間近で見ると、(黙ってさえいれば)可愛らしい金髪美少女なんだけどな――目つき以外は。


 じゃあ、もう一回改めて聞こうかと思ったところに、「帰ったでしゅ」という可愛らしい声が聞こえた。


 立ち上がると、キュウが飛びついてきたので抱きとめてやる。


「お帰りー。ちょうど呼びに行こうかと思ってたんだよ」

「よしつねが呼んだから帰ってきたでしゅ」

「キュウ……!」


 ああ。俺たちは繋がってるんだね。俺が伝えたいって思う言葉はキュウには聞こえるだね!


 あー。そっか、タツ。お前にもね。

 それにしてもタツ。

 お前、視界から消すことができないくらいの存在感を放ってるね。


「か、帰りました――です」


 いや、キュウの喋り方は真似しなくていいから。

 ……タツ。……お前。三メートルは超えてるよね?


 ぶるんぶるんと頭を振って、胸に抱えたキュウに尋ねる。


「ねえキュウ。たっちゃんはどうしてこんなに大きくなったの?」


 キュウは少し斜めに体を傾けると、パチンと瞬きをするように、目を大きく見開いて言った。


「えっと。全部食べたでしゅ」

「食べた?」

「はいでしゅ。やっつけた魔物を全部食べたでしゅ。キュウが溶かしちゃったの以外、全部食べたでしゅ」


「ひぃっ」


 あれを? トリケラトプスとか諸々をだよね?


「ご、ごめんなさい。そんなつもりはなかったのに気がついたら食べていたんです。もうしません。もうしませんから許してください。うっ。うっ」


 うわあー。タツがしょんぼりを通り越して、土下座する勢いで謝ってるよー。

 えー? どうして? ちょっとびっくりしただけじゃない。

 俺、パワハラじみたことしてないよね?



「ドラゴンなんじゃ。そんなの当たり前じゃ」


 シモーネさんが、「ふん。ものを知らん奴じゃ」とかぶつぶつ言いながら横目で俺たちを見ている。



「ご、ごめんなさい。こんなになっちゃって。ぼく……」


 え? 泣いちゃう? 泣いちゃうの?


「キュッキュウ!」


 キュウが腕の中から飛び出して、ものすごい勢いでタツに体当たりしまくっている。


 もしかして、慰めてる?

 いや。どう見ても面白がってる。というか、嬉しがってる?

 まあ、ぶつかれる体積が増えたんだもんね。




 ギューーーーン。


 地の底から響くような低音が、タツの方から聞こえた。


「す、すみません! すみません!」


 いや、そんな謝らなくても……。

 それに今のって、もしかして腹の虫が鳴る音?


「え? まだ食べ足りないってこと? もっと魔物が必要なの?」

「いえっ。そ、そんな――」


 シモーネさんが枝でタツの体をつつきながら話に入ってきた。何を確かめているんだろう。


「火じゃ。火が足りんのんじゃ。こやつは元々火山に生息しておるんじゃからな。レッドドラゴンは溶岩を食って育つと聞いたことがある」


「え? ええーーーー!!」


 お、お前、溶岩なんて飲むの? 溶岩を飲んでも平気なの? 粘膜やられないの?

 マグマが産湯って……。



「ここから一番近い火山は――そうじゃのう。あっちじゃな」


 ちょっと! シモーネさん! なに勝手に決めてんの!

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