キュウがしゃべった!
キュウはみるみるうちに、鉄の山を平らげてしまった。
もしかして、お腹減ってた?
俺、主人なのに、ひもじい思いをさせてた?
「もっと食べたいでしゅ」
え? この声って……。
「もっと欲しいでしゅ」
今、俺を見ている――キュウの口があるらしいところが、むにゃむにゃっと動いているよね……?
「キュウ――お前。しゃべれるの?」
「話せるようになったでしゅ」
「俺のこと分かる? 義経だよ。分かる?」
「うん。よしつね、大好きでしゅ」
「キュウーーーー!! 俺もだー!! 俺も大好きだぞっ!」
うおおおおおおっ!!
可愛い! 可愛い! 可愛い! 可愛い!
「痛っ!」
どうして、そう俺を小突く?
俺とキュウのことで、お婆さんに小突かれる筋合いはないんだけど。
「従魔はペットではないぞ」
「もちろん違いますよ」
そうだよな、キュウ。
「お前は心の友だ。相棒よ。マイバディ! 痛っ!」
い、今のは小突くとかじゃなくて、もう先っぽが刺さっていたよね?
「従魔というのは使役するものぞ。一線を引いて付き合え。さもなくば――」
「なんだよ。もう俺とキュウは一心同体なのに。そうだよねー、キュウ。それを下僕みたいに使役って。痛っ――くない? え? あれ?」
来る、と思っていたところにバシンと来ないと、なんか変な感じ。
いや、決して物足りないとかじゃなく。
老婆はプイッと顔を背けて、壁の棚の方へ移動した。
「もう、勝手に機嫌を損ねるんだから。それにしても――」
「か、会話するスライムなんて、初めて見ました!」
店主が興奮気味に話しかけてきた。
あ、やっぱり? うちの子すごいでしょ。
「すみません。まだ在庫ってありますか? ええと」
大金だからなー。先に払ってあげた方が安心するよね。
ええと。一山八百ギッフェだっけ。
俺は千六百ギッフェを取り出して、店の中央にあるテーブルに置いた。
多分、買いたい品を並べたり、測ったりする作業用なんだろう。
「二山分、ここに置きますね。もう一山ください」
「は、はい! ただいま!」
店主は駆け出さんばかりに、ビュンと奥へ急いだ。
「キュウ。すぐにおかわりがくるからね」
「うわーい。やったー」
「そうか。そうか。嬉しいか」
「うん」
結局、キュウがもういいと言うまで、更に二回おかわりをした。合計四山。
三千二百ギッフェ。ま、痛くも痒くもないけど。
「どうだ? 満足した?」
「うん。キュウは大満足でしゅ」
「そうか。そうか。あははは」
よかった。あんまり大きさは変わってない。
食べたら食べただけ大きくなるのかと思った。ビビった。
そういえば、食べたってことは、体力が回復していたりするかな?
「どうかなー? ステータスオープン」
キュウのステータスを見て見ると、魔力自体が少し増えて回復している。
それと、なんだこれ!? スキルの「???」って何?
「ほうー。久しぶりに見たの。こやつ……」
お婆さん、いつの間に。素材を見てたんじゃないの?
「お婆さん。キュウのこれ、何なんですか?! 『???』って!」
「ふっふっふっ」
いや、笑ってないで教えてくださいよー。
誰かー!
なんかキュウさんが、おっかないものに変身しそうで怖いですー!
素材屋を出ると、老婆の方から、「ここでさらばじゃ」とお別れを言われた。
ちょっと拍子抜け。
もっとごねて、何とかして俺についてこようとするかと思ったのに。
ま、いいけどね。
ふうー。日が沈んじゃった。早く部屋でゴロゴロしたーい。
俺はポケットをポンポンと叩いて、小声で言った。
「キュウ。これからお家に帰るけど、俺がいいって言うまで、出てきちゃだめだからね。それと、絶対に声を出さないこと」
「分かったでしゅ」
「ほらー! 声を出しちゃだめ」
「……」
キュウは黙ったまま、うにょん、うにょんと、ポケットの中で動いた。
何、そのジェスチャー?
超、可愛いんですけど。
「はい、よくできました」
<キュウのステータス>
Lv:18
魔力:120/7,080
体力:400/400
属性:水
スキル:感知、水球、氷刃、水結界、???
<俺のステータス>
Lv:16
魔力:13,350/14,800
体力:4,800/4,800
属性:
スキル:虫眼鏡アイコン
アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、魔力ポーション(2)、体力ポーション(2)、72,102ギッフェ
装備品:短剣
契約魔獣:スライム




