学習室
頭に装着して使う学習装置を見て、イオは顔をしかめた。
「どうしたの?」
「こいつで情報を得ようとすると、俺の場合、拒否反応で機械が壊れちまう」
「機械が拒否反応?」
「厳密に言うと、俺の頭から出てる周波数の違う電波で機械が壊れるんだ」
「頭に何かの装置をつけてるの?」
「俺はーー強化人間なんだよ、シホ」
「強化人間ってなに?」
「欠損した肉体を強化した肉体で補ってるんだ」
私は尻込みしそうになった。
「イオ。前に、イオの歳になったら私も手術するって言ってたの、そのことに関係ある?」
「……ああ」
「私は手術したくない」
「今はそうだろう。でも、この都市から外に出たら嫌でもそれをしなきゃ生きていけなくなる」
どういうことだろう?
「私は都市の外には出ないわ」
「俺の仲間たちがこの都市を制圧して、利用できるものを何もかも手中におさめるだろう。その時、人間をどうするか決める。お前は俺が所有する」
なんて事だろう。
「シホ。学習装置をお前が使って情報を俺にくれ」
「嫌だって言ったら?」
「他の奴が犠牲になるだろう」
私は渋々学習装置を装着した。
10年前の第三次世界大戦。A国とB国の圧勝。両国はそれぞれの技術を駆使して都市を建造する。タッキンリーはA国の都市。いずれB国と小競り合いが起こることだろう。
「イオはB国から来たの?」
「そうだ。シホ。都市を外部から遮断してジャミングしているシステムの情報を調べてくれ」
「それをやったら、あなたがシステムを壊して外の人たちをここに連れ込むことになるわ」
「まさにそれこそが、俺の目的だ」
どうにかして阻止できないかしら、と私はない知恵を絞る。
「イオ。ジャミングシステムの情報は、誰にでもわかるようにはしてないわ」
「なんだって」
「パパたちの評議会にかけられてからその情報を開示するかどうか決めるの。私は無理」
イオは親指の爪を噛んでなにか考えているようだった。