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あなたは美しい

作者: ゆう

あなたはいつもきれいだった。

均等のとれた姿は誰もが望み羨望のまなざしを向けていた。

長い黒髪は先が整えられており毛先にまで気を使っていることを静かに物語る。

お互いに違う道を選び、長い時間が経った。

馬鹿みたいに長い時間話した大学時代。

カフェテリア、230円のうどん、スマホのカバー、

あの時を昨日のように思い出せるのに時間は残酷だ。

私はあの時間が有限であることに気づいてはいなかった。

もしも、なんて言うつもりはないけれど。。


私たちは大人になった。

時間に縛られながらも明日の食べ物のために長い時間を使役する。

毎日は何のためにあるのか、

そんなことを考えていたある日の三条烏丸通りの交差点

対抗側の信号はかなり遠いのに、あなたの姿がはっきりと見えた。


何年たっても同じ時間を過ごした人は案外見つけられる。

自分の中にある経験則だ。


信号は青になった。

徐々に近づく距離。

白を基調とした長いワンピースがまぶしい。

声をかけよう。

声は出ない。

肺から空気だけが送り出され、喉は言うことを聞かない。

二人の距離は、あの頃と同じテーブル一つ分まで近づいた。


膨らんだ希望を壊さないように歩くあなた

慈しみ聖母のような愛をたたえたあなたがそこにいた。


声はかけられなかった。


私の時間は止まったままだ

あの頃とちっとも変わらない生活を送っている間に

あなたは愛を知り

つなげようとしている

ああ、なんと時間は残酷なのだろう。

ただただ若さを浪費していたことに気が付いた。

ひどく稚拙で情けない私は過去の栄光に取りつかれ

何物でもないくせに何物であるかのようにふるまっていた。

その間にあなたは着実に人生を進めている。

欲に溺れ、今に溺れ、なにかと他人と比較して

常に自分が上に立っていると驕っているだけの自分が小さく、馬鹿げて見えた。


疲れたようで、体形も少し崩れている。

かつてのような羨望のまなざしはないかもしれない。

それでもあなたは美しい


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