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ヴァンパイア皇子の最愛  作者: 花宵
第五章 紅と蒼の力を合わせて頑張ろう!

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51、若様は聖獣と仲良くなりたい

「おお、何と愛くるしい姿をしておるのだ!」


 トリー様が頬を緩めて手を伸ばすと、聖獣様はその指をガブリと噛んだ。


「ギャー!!」

「だ、大丈夫ですか、トリー様!」


 慌ててトリー様に回復魔法をかける。


「ガブリって噛んではいけませんよ、聖獣様」

「クゥーン」


 聖獣様は悲しげな声で鳴いた後、すりすりと私の手にすり寄ってくる。


「いや、良いのじゃシア。我が悪かったのだ。誓約を交わしていない聖獣は、自分の認めた者にしか懐かない。そうやってシアに懐いておるということは、其方が認められておる証なのじゃ」

「聖獣様が、私を認めている……」


 抱っこをせがんでくる聖獣様を抱き上げると、ペロペロと顔をなめられた。


「く、くすぐったいです、聖獣様っ」


 か、可愛すぎる!


「ところでフォルネウス、何で我の守護聖獣像が動いておるのか、説明してもらおうか?」

「ははは、何ででしょうね~」


 フォルネウス様は誤魔化すように、トリー様から視線を逸らした。


「やはり、何かおかしいと思ったのじゃ! 我のコレクションに全く興味のなかった其方が急に見たいなどと!」

「アリシアの魔法で、どこまで時を遡れるのか実験したかったんですよ。父上はちょうど最適な物をたくさん集めておいででしょう? 有効活用させてもらっただけですよ。それとも、母上のコレクションで試した方がよかったですか?」

「それはならぬ! ソフィーの物は絶対に触ってはならぬ! 其方、命が惜しくないのか?!」

「惜しいに決まってるじゃないですか。だからこちらに来たのですよ」

「ぐぬぬ、それなら仕方ない……」


 そこで、納得されてしまうんですね、トリー様。ソフィー様、お優しいのに。

 でもトリー様の大切なコレクションを勝手に実験に使わせてもらったのは、やはり申し訳ない。フォルネウス様をお止めして、きちんと最初から協力を仰げばよかった。


「トリー様、勝手にこのような事をして申し訳ありませんでした。今ならこの空間を巻き戻せば、元に戻せます」


 私の言葉に、「クゥーン」と聖獣様が哀しそうに鳴いた。聖獣様を元に……この可愛い聖獣様を元の像に……すごく心が痛む。


「良いのじゃシア、聖獣は其方が育ててやってくれ。こうして遠い昔に滅びてしまった聖獣が再び現代に甦るなど、まさに奇跡だ。その縁を大切にして欲しい」

「よろしいのですか……? トリー様の大切なコレクションが……」

「聖獣王フェンリルはかつて、魔の森を一人で守っていたと言われておるとても強い守護聖獣なのだ。シアに懐いているという事は将来、この国を守ってくれる立派な守護聖獣になってくれるやもしれぬ。だから、大事に育ててやってほしい」

「はい、勿論です! トリー様、ありがとうございます!」

「折角だから名前をつけてやるといい。その方が聖獣との絆も深まり喜ぶだろう」


 聖獣様にお名前を……とても可愛らしい白いもふもふの聖獣様。でも成長したら、とても格好いい勇敢なお姿になられるのだろう。それならば……


「ブレイヴ。聖獣様のお名前はブレイヴでいかがでしょうか?」

「ワオーン!」


 嬉しそうに、ブレイヴは私の回りをぐるぐるしている。


「どうやら気に入ったみたいだな。アリシア、庭を改装してブレイヴ用の小屋を建てよう」

「よろしいのですか?」

「勿論だ。好みの餌も用意してやろう。だからブレイヴ、こちらにもおいで」


 フォルネウス様が破顔されながらブレイヴに手を伸ばす。


――ガブリ


「フォルネウス様、大丈夫ですか?!」

「ただの甘噛みだから大丈夫だ」

「残念じゃったのう、フォルネウスよ。聖獣は清らかな心の持ち主にしか懐かぬのじゃ」

「父上、それブーメランですからね。貴方も噛まれていたでしょう」

「そ、そういう事言うの、良くないと思うのじゃ!」


 こうして聖獣王フェンリルの赤ちゃん、ブレイヴを育てることになった。ブレイヴ専用の小屋が出来るまでは私の部屋で一緒に過ごし、少しずつ躾を施している。


 でもそんな必要ないくらいブレイヴはとても賢い子で、一度教えた事はきちんとやってくれる。ただ私以外には触れられるのが嫌なようで、手を伸ばすと噛みついてしまうところだけは治らないけれど。


「ブレイヴ、美味しい餌を持ってきたぞ! 寝心地の良いフカフカのクッションだぞ!」


 フォルネウス様があの手この手を使って何とか仲良くなろうと画策されているけれど、ブレイヴは一瞥するだけで近寄らない。 


「それならこれはどうだ? 光るボールだ! 転がすと光るぞ!」


 フォルネウス様は、ころころとブレイヴの前で転がして見せる。


「ほーら、色も変わるんだぞー!」


 目の前でコロコロと色を変えて転がるボールに、ブレイヴの耳がピクリと反応を示す。


「こうやって押すと音も鳴るんだぞー!」


 プギャーと変な音を立てるボールにブレイヴの目は釘づけになる。しかし視線で追いかけるだけで、近づこうとはしない。


「くっ、これでもダメなのか……だが俺はあきらめんぞ、ブレイヴ! いつか思いっきり抱きしめてやるからな!」

「フォルネウス様、良いパパになりそうですね」

「……え? きゅ、急に何を……」


 私の言葉で顔を真っ赤に染めたフォルネウス様の手から、ボールが滑り落ちる。


「心を開いてもらおうと頑張られている姿を見ていたら、そう思ったんです。もし子供が生まれても、そうやってとても可愛がってくださるんだろうなって」

「それは勿論、アリシアとの子供が可愛くないわけがないからな! ブレイヴだって俺の大切なアリシアを認めたすごい聖獣だ。出来る事なら仲良くしたい……」

「大丈夫です、きっとブレイヴも認めてくれるはずです。だってほら……」


 フォルネウス様の手から滑り落ちたボールは、ブレイヴの近くに転がっていた。気になったのか、ブレイヴはポンと前足でボールを叩いた。


「プギャー」


 音が鳴るボールが面白いのか、ポンポンと何度も前足で叩いている。次第に鼻先で転がし始め、それを楽しそうに追いかけるようになった。


「ブレイヴが遊んでいるぞ!」


 ブレイヴが飛ばしたボールがたまたまこちらに転がってきて、それをフォルネウス様が転がし返す。するとブレイヴもまたフォルネウス様の方にボールを転がすようになって、楽しそうに遊び始める二人。


 そんな微笑ましい光景を眺めていたら、ポータブルコールが鳴った。


『アリシア、人間に戻りたいって希望してる青の吸血鬼を明日、そちらに連れて行きたいのだけど準備は出来てるかしら?』


 いよいよ、蒼の吸血鬼救出作戦実行の時が来たようだ。

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