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ヴァンパイア皇子の最愛  作者: 花宵
第五章 紅と蒼の力を合わせて頑張ろう!

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50、実験したら、予想を遥かに超える結果になりました

「よく来てくれた! シア、フォルネウスよ。ここが我のコレクションルームじゃ!」


 案内されてやって来たのは、ずらりと並べられた年季を感じる銅像や石像などの美術品の飾られた部屋だった。


「はぁ、たまらんのぅ。この歴史を感じる貴重な美術品達は我の宝物じゃ!」


『足を踏み入れた瞬間、呪われそうな部屋だろう?』


 フォルネウス様がポータブルコールでそう話しかけて来られて、思わず笑いがでそうになった。


『そ、そんな事ないですよ……っ』

『まったく、父上も母上もなぜこんな変なものばかり集めて来られるのか……』


 きっとトリー様とソフィー様は、こういう古文化に触れるのが好きという共通の趣味があって仲良くなられたのね。


「それにしてもフォルネウス。我のコレクションが見たいとは、成長したな!」

「あーはい、そうですね」


 フォルネウス様、返事が適当すぎます。


「それで、一番古いコレクションはどれですか?」

「まぁ、そうせかすでないぞ。我が順を追って説明してやろう」


 フォルネウス様、顔に出てます。あからさまに嫌そうなのが顔に出てますよ!


「一番奥にある守護聖獣像は我が持っている中でも最古の美術品で、始祖ネクロード様の私物の一つだと言われていた噂もあるくらい貴重なものなんじゃ。聖獣王フェンリルの死後、その骨を加工して作ったと言われておるのだ。すごいじゃろう! その隣にある……」


 トリー様はそうやって、ご丁寧に一つ一つ説明してくださった。どうやら奥にいくにかけて古いものが置かれているようだ。


「父上。日頃の感謝を込めて、俺達でこのコレクション達を掃除しておきますよ」

「おお、そうか! この前やったワインが美味かったのだな! また上物を手に入れたらわけてやろう」

「……しばらくは、結構です」

「何故じゃ?! 建国祭の日に、シアと一緒に楽しんだじゃろう?」

「な、な、何を楽しんだと仰るのですか!」

「何でそんなに顔を真っ赤にさせて怒るんじゃ? ははーん、さてはフォルネウス……シアを酔わせて不埒な事をしたのだな」

「人聞きの悪い事を言わないで下さい」

「シア、ワインどうじゃった? 美味かったか?」


 どうしよう、正直味すら覚えていない。


「え、ええ。とても美味しかったですよ」

「そうか、そうか、楽しめたのなら何よりじゃ!」


 お願いだから、あの晩の話をするのはやめて下さい、トリー様!


「さぁ後は俺達に任せて、父上は公務に戻られて下さい。説明は嫌というほど聞きましたので覚えましたから」

「嫌じゃー、我もコレクションをもっと愛でたいぞ!」

「我が儘言ってないで公務に戻られて下さい。大臣達が総出で押し掛けてきますよ」

「そ、それは困るのじゃ! シア、フォルネウス、ゆっくり見ていくとよいぞ」


 トリー様を送り出したフォルネウス様は、「父上の相手は疲れるな」と軽くため息をつかれた。


「ふふふ、トリー様とフォルネウス様は兄弟のようですね」

「あー……なるほど、そう言われて初めて理解できた。父上は確かに、手のかかる弟のようだ……威厳をどこに落としてこられたのやら……」

「フォルネウス様がいつも拾ってお届けさせれているので、きっと大丈夫ですよ」

「ははっ、確かにそうだな。では邪魔者も居なくなった事だし、そろそろ本題に入ろう」

「はい!」


 一番奥にある古い美術品『守護聖獣像』の前で、フォルネウス様は足を止められた。


「これからいこう」

「本当に、よろしいのですか?」

「もし壊れても、空間を戻せば元通りに出来るはずだ。遠慮することはないアリシア、今出来る最大限の力で時を戻してみてくれ」

「分かりました」


 深呼吸して気持ちを落ち着ける。今出来る最大の力で『リバース』と回帰魔法をかけた。


 すると、ボロボロだった『守護聖獣像』が新品のように綺麗になった後、眩い光を放って形を変えた。現れたのは、両手で持てるくらいの大きな卵だった。


「た、卵になったぞ!?」

「ど、どうしましょう!?」


 私達が慌てている間に、ピキピキと卵が割れて「クゥ?」と可愛い鳴き声が聞こえてくる。神々しい光に包まれて現れたのは、小さな白い狼だった。獣耳をピクピクとさせ、くりくりとした丸い蒼眼が私達を見つめている。


「なぁ、アリシア。父上は言っていたな、あの像は聖獣王フェンリルの骨を加工して作ったとか何とか……」

「それじゃあまさかこの子は、聖獣様なのですか?!」

「どうやら君の魔法は、俺達の想像を遥かに超える時を遡ったようだ。ここまでの力があれば、希望者を人間に戻すこともきっと可能なはずだ」

「いよいよ、作戦実行に移せそうですね。でもこの子、どうしましょう!?」


 もふもふとした尻尾を左右に振り、四本の足でトコトコとこちらに歩いてきた聖獣様は「クゥーン」と甘えるように私の足元にすり寄ってきた。


「か、可愛い……!」 


 おいでと手を伸ばすと、今度はそちらにすりすりと頬を寄せてくる。頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細めた。


「フォルネウス様、可愛すぎます!」

「確かに可愛いな、どれどれ……」


 フォルネウス様が頭を撫でようと手を伸ばすと、その子はガブリと指先に噛みついた。


「……っ!」

「だ、大丈夫ですか?! ヒール!」


 回復魔法でフォルネウス様の傷はすぐに癒えたけれど、心の傷までは治せなかった。


「何故だ……驚かせてしまったのだろうか……」


 私にはすり寄ってくるのに、フォルネウス様の方には見向きもしない。


「そうじゃ、言い忘れておったのだが……」


 その時、運悪くトリー様が帰ってきてしまった。トリー様の視線が自然と聖獣様に向く。そして消えた守護聖獣像のあった場所へ戻る。


「わ、我の守護聖獣像が、生き返っただと!?」


 ヤバイ、バレてしまった……

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