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ヴァンパイア皇子の最愛  作者: 花宵
第四章 貴方の隣に相応しくなりたい!

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38、操られたギルテッド公爵

「お目通りの機会を与えて頂き、誠に感謝致します。ギルテッド公爵家のクロードと申します。フォルネウス殿下、アリシア様、どうか我が父をお助け頂けないでしょうか」


 クロード様はそう言って、片膝をついて頭を垂れた。


「面を上げよ、クロード卿。ギルテッド公爵に何があったのだ?」

「実は一ヶ月前、父が命の恩人だと女性の旅芸人を屋敷へ招き入れたのです。最初は父の命を救ってくれた事に感謝していたのですが、次第に父はおかしな言動や行動をするようになったのです」

「具体的には?」

「その方に感化されたのか、ハイグランド帝国を敵対するような発言をし始め、まるで戦争でも始めるかのように部隊の準備を整え始めたのです」

「あのギルテッド公爵がそんな事を……確かに、それはおかしいな。彼は誰よりも平和を愛されているお方だ。民に犠牲を強いて、そのような事を望まれる方ではなかったはずだ」

「まるで突然人が変わってしまったかのように、おかしくなったのです。父にやめて下さいと何度も抗議したのですが、聞き入れてもらえず監禁されてしまい、何とか使用人の力を借りて脱出しここまで来たのです。どうかアリシア様の力で、父を正気に戻して頂けないでしょうか。このままでは、最悪戦争が始まってしまいます」

「フォルネウス様、助けに行きましょう。このまま放ってはおけません」

「そうだな。だがアリシア、君をリグレット王国へ連れていく事は出来ない。ギルテッド公爵を捕らえてこちらへ……」

「フォルネウス様、それでは誘拐です。いくら非常事態とは言え、公爵様を本人の許可なくお連れするのは……」

「ぐっ……だが……」

「私を連れて行って下さい。日が昇る前に帰ってくれば良いのです。フォルネウス様の力があれば、それも可能ですよね?」

「それはそうだが……」

「お願いします。リグレット王国と、後で禍根が残るようなやり方はしたくないのです。どうか……」

「分かった。アリシア、決して俺の元から離れてはいけないぞ?」

「はい、勿論です!」

「クロード卿、力を貸そう。我々をギルテッド公爵の所まで案内してもらえるだろうか?」

「ええ、勿論です! 本当にありがとうございます!」


 フォルネウス様は、ガブリエル様とシオン様を呼び、少数精鋭でギルテッド公爵領へ向かう事になった。


「アリシア様の護衛を出来るなんて感動です!」

「違うぞ、シオン。お前は俺と一緒に、若と嬢ちゃんの安全確保だ」

「そ、それはそうですが……遠回しにはアリシア様の護衛、ですよね?」

「シオン、アリシアは俺が守る。君は邪魔が入らないよう見張り役だ」

「はい、心得てます……トホホ」

「シオン様、あれから足の調子はいかがですか?」

「アリシア様のおかげで健康そのものです! 本当にありがとうございます!」

「それならよかったです」

「アリシア様、俺に敬称なんて結構ですので是非、シオンって呼び捨てにしてください!」

「そうだぜ、嬢ちゃん。敬称が勿体ねぇや」


 よ、呼び捨て?!

 騎士様を呼び捨てに……?!


「えっと、じゃあ……シオン……さん……な、慣れたら敬称外しますから、今はこれで!」

「はぁ……天使だ……」

「シオン、命が惜しいならそれ以上嬢ちゃんに見惚れてない方がいいぞ」

「ひぃぃぃいい、若様! 怖いです、そんな睨まないで下さいよぉお!」


 シオン様はいつも賑やかね。元気になられて本当によかった!

 道案内としてクロード様を乗せたガブリエル様が先行し、その後ろをフォルネウス様が私を抱えて移動する。その回りをシオンさんが護衛してくれていた。


「あの屋敷がギルテッド公爵邸です。父の寝室は最上階の真ん中の部屋になります」

「まだ起きているようだな」


 閉められたカーテンの端から明かりが漏れていた。


「使用人たちはもう宿舎に戻っている時間なので、屋敷内にほぼ人は残っていないと思います。屋上から侵入して向かいましょう」


 クロード様の案内に従い、屋上に一旦降りる。鍵のしまったドアはガブリエル様の強硬手段で破壊され、中へ侵入した。ギルテッド公爵の寝室の前には護衛が二人待機していた。


「ここは俺にお任せ下さい」


 シオンさんが素早い動きで護衛二人の背後に回ると手刀で気絶させた。音を立てないよう二人の身体を床に預け、オッケーサインが出た所で寝室へ突入する。


「父上!」


 先陣を切ったのはクロード様。その後に私達も続いた。


「戦争など、馬鹿な真似はどうかお止めください!」

「クロード!? 地下牢に入れておいたお前が、どうしてここに居る!」

「夜分遅くに失礼する、ギルテッド公爵。話はクロード卿からお聞きした。平和主義の貴方が何故、そのような事をお考えで?」

「吸血鬼が憎い、吸血鬼が憎い、吸血鬼が憎い!」


 ギルテッド公爵の目が血走り、途端に呪文のようにそう唱え始めた。


「若、これは完全に眷属化されてるぞ。気を付けろ、近くに操っている者が潜んでいるはずだ」

「ガブリエルとシオンは周囲の安全確保を頼む」

「了解です!」

「おう、任せろ!」

「アリシア、俺が公爵を取り押さえておくから、その間に回帰魔法を頼む」

「分かりました」


 フォルネウス様がギルテッド公爵の背後に回り羽交い締めにされた所で、私は回帰魔法を唱えた。


『リバース』


 どうか、平和主義だった頃の優しい公爵様に戻って下さい!


「私は、一体……」


 ギルテッド公爵が正気を取り戻してほっとしたその時――


「動くな! 一歩でも動いたら、この女が怪我するぞ!」


 クロード様に後ろから身体を拘束され、首元にナイフを突きつけられた。


「アリシア!」

「クロード! 何をやっておるのだ!」


 フォルネウス様とギルテッド公爵の声が重なった。


「ちっ、あいつも操られてたのかよ!」

「アリシア様! くっ、そんな!」


 クロード様は私を人質にしたまま、バルコニーへと移動する。


「よくやってくれたわね、クロード。誉めてあげるわ」


 その時、背後からとても聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた。

 クロード様は私をその女性に献上するかのように差し出した。真正面からその女性を見て、私は驚きを隠せない。嘘だ、どうしてここに居るの。レイラお姉ちゃん。

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