27、特別な力
ソフィー様の後を付いていく途中、フォルネウス様がポータブルコールで話しかけてこられた。どうやらソフィー様には聞かれたくない内容のようだ。
『アリシア、母上は本当に迷惑をかけてはいないのか? もし直接断りにくい事があるなら、俺から言っておくが……』
『ご安心下さい、フォルネウス様。私も興味があるのでお手伝いしているのです』
『それならいいのだが、何があったらすぐに言うんだぞ? 母上は少し強引な所があるからな……』
『お気遣い頂きありがとうございます』
隣を歩いているのに、お互い前を向いて話してるって何だか不思議な感じがする。
チラッとフォルネウス様の様子を窺うと、私の視線に気付かれたようで優しく微笑んでくださった。
何でだろう、胸がドキドキする。最近、フォルネウス様の笑顔を見ると、胸が少しだけ苦しくなる。
はっ! いけないわ、油断してるとまた通信を切り忘れてしまう。よかった、きちんと切れてた。そんな事をしている間に目的地に着いた。
「ここで何をするのですか?」
案内されて辿り着いたのは、ソフィー様のコレクションルームに併設された作業部屋。
「今からこれを、シアちゃんに修理してもらうのよ」
作業台の上でソフィー様がフォルネウス様から受け取ったキューブを起動すると、こんもりとした山が出来上がった。
手のひらで掴めるあんな小さなキューブに、こんなにたくさん収納できるなんて、魔道具って本当にすごいな。
「このガラクタの山をですか?!」
「ご安心下さい、フォルネウス様。家具に比べたら簡単ですから」
「本当に回復魔法って便利よね! 私は攻撃魔法と不気味な予知夢しか使えないからシアちゃんが羨ましいわ」
不気味な予知夢?!
「母上、そもそも回復魔法に物を修理する機能なんてありません」
「え?! そうなの?!」
「回復魔法は本来、生命エネルギーを活性化させて治癒能力を高める魔法。生命の宿っていない物にいくらヒールをかけても本来なら意味がないのです」
フォルネウス様は作業台の山から一つ骨董品を取り出して、ヒールを唱えられた。けれど壊れた骨董品は何の変化もしない。
「普通は、こうなんですよ。アリシア、同じようにヒールを唱えてもらえるか?」
「はい、かしこまりました」
先ほどフォルネウス様がヒールをかけた骨董品に、私も同じようにヒールをかける。すると、壊れていた骨董品が新品のように元通りになった。
「ほら、やっぱりシアちゃんのヒールだと治るじゃない」
「アリシアの回復魔法には、何か特別な力が宿っているのでしょう」
「特別な力、ですか?」
「確かにそうね。こんなに綺麗に元通りなるなんて、すごいわよね!」
「元通り……そうか、なるほど! そもそもの魔法原理が違ったのかもしれない」
「私は、間違って魔法を覚えてしまったのでしょうか?」
「いや、そうではないよ。もし俺の仮説が正しければアリシア、君は貴重な回帰魔法の使い手かもしれない」
「え、回帰魔法って、始祖ネクロード様にしか使えないあの伝説の魔法?!」
「母上、何か書くものを持っていませんか?」
「ええ、あるわよ。いでよ、探検バッグ!」
ソフィー様はブレスレットを外すと、それに魔力を通してトランクケースへと変化させた。
「特性インクの万年筆よ。服についたら取れないから気を付けなさいね」
「ええ、分かりました」
受け取った万年筆で、フォルネウス様は自身の左手の甲に星マークを書かれた。
「ちょっと、手についても中々とれないのよ!」
「だからいいんじゃないですか。アリシア、俺の手にヒールをかけてくれないか?」
「かしこまりました」
星マークの描かれたフォルネウス様の手にヒールをかける。すると、先程描いた星マークが綺麗に消えた。
「星を描く前の状態に回帰したでしょう?」
「確かにそうだけど、浄化魔法の可能性もあるわ」
「…………確かに」
「だったら、こうしてみましょう」
フォルネウス様は自身の手の甲に星マークを三つゆっくりと描かれた。星の真ん中には分かりやすいように、描いた順番に数字が書かれている。
「アリシア、今度はゆっくりと弱い力でヒールを唱えてもらえるか?」
「かしこまりました」
指示された通りに、力を抜いてゆっくりとヒールを唱える。すると、フォルネウス様が描いた順番から逆走するように数字と星が消えていった。
「浄化魔法なら均等に消えるはずです。でも先程は、俺が描いたものをまるで逆からなぞるように消えていきました」
「すごいわ、時を戻す魔法だなんて! シアちゃん、これを極めれば人間に戻れるかもしれないわよ!」
「人間にですか?」
「確かに、可能性はあるかもしれない。回帰魔法はその昔、ネクロード様が望まぬ進化を遂げた者をあるべき姿に戻すために使っていた魔法だと文献で読んだことがある」
人間に戻れる?
故郷に帰れる?










