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呪われ不死者の七つの死因【セブンデスコード】  作者: 夏野ツバメ
東の大国 【神の国ギオジン】編

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Ep.75上 呪われ不死者の選択

Ep.75は上下に分けます。

「リーパーちゃん二人を頼んだよ」


 キルビートは魔法によってタナトスを送り出すと、踵を返してアイテルへと駆け寄った。肩で息を切る彼女は意識を耐えさせまいと何度も項垂れて頭を振っている。


「リーパーちゃんのお姉さん、さぁ僕の肩に……一先ず安全な処へ逃げましょう」


「私なら平気よ、それより私の仲間がもう一人この近くにいるはず……彼女の方を探さないと」


 覚束ない足取りで立ち上がったアイテルはステラの身を案じていた。辺りを見渡そうと顔を上げた彼女であったが、すぐに膝から崩れ落ちてしまう。キルビートは慌てて彼女を支えた。赤黒い血糊を吐く彼女は一段と苦しそうに息を切らす。


「その怪我では無理ですよ」


「……なんて事ないわ、呪術を破られた()()が来ているだけ」


 口を拭う彼女はキルビートの支えを振りほどくと、再び立ち上がった。視線を上げた彼女は何かに気がついたのであった。


「待って、あれは……?」


 遠くで光を放ち続ける稲妻に照され、何かの影が動いたのが見えた。やがてそれがこちらに向かって移動している事に気がついたアイテルが叫ぶ。


「今の(ブードゥー)の狙いは私みたいね、あなたは早く逃げなさい」


「駄目ですよ、一緒に逃げないとッ!」


 キルビートは魔法によってその容姿を獣の様に変えると、アイテルを肩に担ぎ上げた。


「駄目よッ……私の事はいいから、早くあの子の処へ向かいなさい。奴がタナトスの存在に気付けば、狙いは恐らく……」


「まったく、本当に似た者姉弟だ。あなたを置いて逃げられる訳がないじゃないですか?! 僕だってリーパーちゃんが悲しむ姿は見たくないですからね」


 宝庫での末弟ネメシス・リーパー同様、自らを囮に妹を守ろうとするアイテル。キルビートはわざとらしい溜め息をつくと、彼女を背負ったまま全力で駆け出した。


「ちょっとっ、待ちなさい――」


 暴れるアイテルの声にほんの一瞬キルビートの反応が遅れる。僅かなその隙にブードゥーは二人の間際へとその怪腕を伸ばした。


『さあ、リーパー(その)の血を私に捧げなさい』


 ブードゥーの腕は屍の肉を纒って膨らむと、二人に狙いを定めて振り下ろされた。


「……二人とも、そのまま静かに下がって」


 耳元で囁かれたキルビートはその言葉に従い後方へと飛ぶ。ブードゥーの腕は虚空を切り裂くと激しく爆発するのであった。


「狙いを見誤った?! 何にしても助かったぁ」


「バカね、祈祷で狙いをずらしたのよ」


振り返る二人を掴んだ彼女は、身を隠すように頭を押した。


「うわぁッ、な、なんだ?!」


「シッ! ……静かに。まだ向こうは気がついてない」


「……何だかんだ言っても、流石はアマナミの祈祷士ね。助かったわ、ステラ」


 草影に屈む三人を見失ったブードゥーは、辺りをその怪腕で爆ぜ続けている。


「あくまでも一時的に敵の認識をずらしているだけだから……今のうちに早く距離をとりましょう」


「この方がリーパーちゃんのお姉さんのお仲間さんかい? 改めまして僕は憤怒の道化師――」

 

「呑気に自己紹介なんていいから、早く離れるわよ」


 キルビートの言葉を遮るアイテルは退路を探した。ブードゥーの猛襲により焼け野原と化した周囲は、いまだ激しい炎に包まれている。


『愚かな……この程度で逃げられるとでも?』


ブードゥーは背後から数十を越える数の奇形な腕を生やすと、辺り一帯を多い尽くすように広げた。


「――まずいッ、これじゃあ逃げ場が……」


 ブードゥーの死肉の腕は轟音を巻き上げる。激しい業火と共に、三人を飲み込んで弾け飛ぶのであった。







 

 

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