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呪われ不死者の七つの死因【セブンデスコード】  作者: 夏野ツバメ
【王都ネストリア】襲撃 編
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Ep.40 橋の上の呪術

城へと続く長い橋もよく見れば所々崩れかけている、この場所で激しい戦闘が行われた事が伺えた。城下街を抜けて橋にたどり着くまで人はおろか、鳥や小動物すら見かけていない。街は崩れた廃墟だけを残して、不気味な雰囲気を漂わせていたのであった。


「あれ? 急にどうしたんだよ……」


 橋の真ん中に差し掛かった時、突然車を引く馬がピタリと足を止めた。御者の男は手綱を何度も引っ張るのだが、馬は一向に動こうとしない。



「……動物は勘が鋭いので、目には見えない呪術を感知したんだと思います」


 いつの間にか客車から降りていたタナトスは馬の側まで行くと、優しく頭を撫でながら話し出した。


「じゅ、呪術? 」


 遅れて客車から降りた2人と、手綱を握りしめたまま困惑する御者の男は彼女の話に耳を傾ける。彼女は馬車から数メートル進んだ場所で立ち止まると、何もない空間を指差して再び口を開いた。


「ここから先、網の目みたいに呪術が張ってあります。このまま進んだら、みんな切り刻まれちゃいますよ」


 そう言い放つとタナトスは手近な石ころを拾い上げると、馬が立ち止まる先へと軽く投げる。軽く投げられた小石は見えない何かに阻まれると、粉々に飛散したのであった。


「ま、マジかよ……」


「知らずに進んでいたら、僕らもああなっていた……」


 レヴァナントとキルビートは息をのんで後退る、馬車もゆっくりと後退していた。


「結構強い術ですね。でも、外せば問題ないです」


 タナトスは何やらキルビートに耳打ちすると、グッと拳を握りしめて頼んでいる。すぐにキルビートは訳もわからない様子で頷いていた。


「そんな事して何の意味が……わ、わかりました。じゃあ、いきますよ? 漂流物体(ドリフト)ッ!」


 キルビートは右手を広げて魔法を唱えた。すぐに光の粒が集まり形を作ると、数枚の紙切れが握りしめられていた。


道化師(クラウン)さん完璧です! 呪術の媒介の護符です、別名で凶符(キョウフ)。やっぱり橋の隙間に上手く隠して張られていましたね」


 彼女の話に感心するレヴァナントは、キルビートが掴み取った紙切れを見た。異国の文字がかかれた札のような紙切れは、しばらくすると勝手に千切れて粉々に何処かへ飛んでいってしまった。


「さぁ、これで通れますよ。進みましょうっ」


 楽しそうに両手を掲げたタナトスの声に、馬は鳴き声をあげて足踏みをして見せた。3人を乗せた馬車は長い橋を再び進み始めるのであった。



 ◆



七死霊門(セブンホーンテッド)以外の呪術も詳しいのか?」


「いいえ。私、七死霊門(セブンホーンテッド)以外の術はまるで使えません。ただ、私の姉弟は他の呪術の才能に長けていたので知ってるだけですよ」


 タナトスは苦笑いのような笑顔を浮かべて答えた。そんな表情を見せる彼女を黙って見つめるレヴァナントは、少しだけ考えさせられていたのであった。


 ……タナトス(こいつ)の家族、リーパー家ってのは一体何が目的で次期当主を旅に出したのだろうか? 単純に家元を絶やさないためならもっと賢い修行のさせ方があるだろう。わざわざ大事な世継ぎに危険な旅をさせる理由は何処にあるのだろうーー


 黙って見つめてくるレヴァナントを、タナトスは不思議そうな笑みで返す。


 ……考えてもしかたない。機会があれば聞いてみるか。


 レヴァナントは頭を掻くと「なんでもない」と返すのであった。



 ◆



「城門を開けてくださいっ! ミネルウァ様の客人をお連れしました」


 立派な城門前で馬車を止めた御者は、城内の門兵に向けて叫ぶ。不思議なことに城を守る門はまったく攻撃を受けた形跡がなく、立派な鉄扉が聳えたっていた。


「ーーお前たち、その橋を渡ってきたのかッ?!」


「ーー開城だぁっ! 門を開けぇッ!」


 門の上で兵士達は叫ぶと城門はゆっくりと動き始めた。


「城の中にはけっこう人が居るみたいですね」


「ああ……だけど、豪華な持て成しは期待できそうにないな」


 皮肉を漏らしながら城門がゆっくりと開くのを眺めていると、門の向こう側から聞き覚えのある声が響いてきた。


「タナトス! レヴァナント! よく来てくれました。2人とも無事でなによりです」


 城の中から駆けてくる金髪の少女は、首から下げた大ぶりなロザリオを揺らして近づいてくる。


「ミーネちゃんっ!」


「悪いな、色々あって遅くなった」


 アマルフの街を出てから数日しか経っていないのに、ずいぶん久しぶりに感じる。


「いいえ、むしろ遅くなって良かったかもしれない。2日程前まで、ここは戦場だったのだから……」


 国選魔導士ミナーヴァ・ネル・ミネルウァは悔しそうな悲しそうな、複雑な表情で唇を噛み締めていた。


「戦場って……邪教の連中が関係してるのは間違いないだろうが、一体何があったんだよ? 」


「説明は中に入ってから……まずは謁見の間まで案内します」


 レヴァナントの問い掛けに答えることなく、ミナーヴァは辺りの様子を伺うように一瞥をくれると城門を兵士に閉じさせたのであった。


 


 


 

 


 


 


 

 


 

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