表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われ不死者の七つの死因【セブンデスコード】  作者: 夏野ツバメ
北の大国【魔法国家ネストリス】編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/199

Ep.23 転生変換

Ep.24は12月16日更新です!

港街アマルフから南西に進んだ先、長く続く森は大陸の端まで続いている。深い緑を敷き詰めた場所には、永く人の手が入ることはなかった。生い茂った木々は大地の栄養を吸い、空を覆うほどの深い森を作り出していた。


 時刻は昼過ぎ。まだ太陽は燦々と輝く時間のはずなのに、森の中は日暮れのように暗い。


「ミナーヴァッ! 無事か?」


 森の中襲撃されたレヴァナントとミナーヴァの2人は、次々と襲いかかる黒装束の邪教徒達と交戦していた。


「はい! いくら倒してもキリがありません」


 薄暗い木々の奥から彼女の声が聞こえる。レヴァナントは右側を走る黒い影に向けて銃弾を放つ、叫び声もあげず倒れる黒装束達はいくら倒しても次々に現れていた。

 巨木を背にして次の弾を込める、左の木々の間から閃光が見えた。ミナーヴァの圧倒的な魔法を持ってしても、形勢は2人にとって厳しくなる一方であった。


「これでは私達が絶対的に不利ですね」


 巨木の反対側で彼女の声が聞こえる。いつの間にか合流した彼女は息を切らしながら話す、レヴァナントも荒い呼吸を整えて応えた。


「ジリ貧どころじゃねぇな、奴等どんどん沸いて来やがる。それにあの顔見たか? どうやら人間でもないらしい」


「えぇ。身体は人間で首から上だけ異形。攻撃の仕方は単調ですが、如何せん数が多すぎる」


 レヴァナントは弾を詰め終わるとすぐに前方に向けて放った。木々の間を走る黒い影、直撃を喰らった頭部が弾け飛んだ。


「タナトスの居場所は?」


「恐らくここを真っ直ぐに行った場所、彼女の生体電流を感じるという事はまだ無事なはずです」


「よしッ! 俺が先陣をゆく、ミナーヴァはサポートしてくれ」


「今は不死身ではないのでしょう? 私が行きます」


 突然2人の頭上、高い木の上から黒い影が降りかかった。


 咄嗟に左手の直剣で胴を貫く、それでも黒装束は異形の口を開いてレヴァナントを襲った。身を捩る異形は剣を持つ左腕に食らい付く。


「ーークソッッ!」


 振りほどこうとする彼の後ろから閃光が走る。ミナーヴァの魔法が異形の頭部を焼き切った。


「痛ッ……左手まで焼き切れるとこだった」


「夜になれば治るんでしょう?」


 口元を緩めて彼女はいい放つ。彼女の皮肉を鼻で嗤うと、レヴァナントの合図で2人は一斉に走り出すのであった。



 ◆


 

 前方に光の指しているのが見える、木々の切れ目を目指し走る2人は開けた岩場に出たのであった。


「彼女が近くにいます」


 ミナーヴァの言葉を聞くと、大きく叫んだ。


「タナトスッ! どこだッ!?」


 声は岩場に反響する、2人は辺りを見回すのだった。しかしどこを見てもタナトスの姿は見つからない、それどころか追い付いてきた黒装束達が岩場から現れるのが見えた。


「クソッ! まだ出てくるのかよ」


 2人は再び武器を構えた。



 ーーレバさん! ミーネちゃん!


 邪教徒達の横から現れた彼女は楽しそうに手を振っていた。愕然とする2人はあり得ない場所から現れたタナトスに叫んだ。


「お前ッ! なにしてんだ、危な……」


「おやおや、ウェンディゴ達の群れの中を良く生き残りましたね。さすがは国選魔導士、それに……不死身の戦士といった所でしょうか?」


 タナトスのすぐ横に現れた人物を見てレヴァナントはまたも言葉を失う。ミナーヴァはあからさまな怒りを浮かべてその人物を睨んだ。


「イスカリオ牧師! やはりあなたが黒幕でしたか……街の人々を誑かす邪教徒め!」


「誑かす? 勘違いしないで下さい、私は導きをあげていただけですよ。それに我々は邪教なんてチンケな名前でもありません」


 イスカリオ牧師は得意気に嗤いながら話す、ミナーヴァは抑えられない怒気を放ちながら今にも飛びかからんと魔法武器を構えていた。


「我々はこの混沌とした四つの国を統べる新たな王に使える者。王は我らに力を与え、共に革命を起こす仲間を増やすように命ぜられた。私はその力で街の眠れる革命家を導いていただけですよ」


 ほら!と牧師は黒装束の一人を指差した。深々と被ったフードを捲る男の顔を見たミナーヴァは、驚きの声をあげた。


「その顔、警備隊から見せられた資料に載っていた……」


「そうです、メイソンは実に才能溢れた青年だった。だからこそこうして我らの仲間に加わり、私の術もすぐに扱えるようになったのです」


 メイソンと呼ばれた黒装束の男は首の無い死体を軽々と持ち上げると、言葉を失う2人の前に投げた。着ている衣服から警備隊の亡骸だとすぐに解る。


「さぁ、見せてやりなさい。我等の偉大なる王が授けし力、転生変換術(コンバートネイション)をーー」


 メイソンが何か呟くと2人の前に投げ放たれた亡骸は不気味な光を放つ、動き出す手足が次第に首の無い身体を起き上がらせる。


「こ、これは……」


 レヴァナントは言葉を詰まらせて息をのんだ。目の前に転がっていた首なし死体に、先程まで戦っていた黒装束と同じ頭が生えていたのであった。


「素晴らしいッ! 今はまだウェンディゴ程度しか転生させられませんが、修練を積めば偉大な神すら甦らせる事も可能でしょう」


 手を叩き喜ぶイスカリオ牧師は高らかに笑い声をあげる。


「貴様ッッ! 死者を弄ぶなどとふざけた真似をーー」


「待て、ミナーヴァ!」


 今にも斬りかからんと動く彼女をなだめ、レヴァナントはタナトスを見る。なぜか牧師の隣で楽しそうに拍手をする彼女に向けて、レヴァナントは叫んだのであった。


「いいから、早くそいつらから離れろ!」


 タナトスは不思議そうに首を傾げた。


「無駄です。彼女はもう我々の仲間に加わりました。これ程までの力を秘めた者は見たことがない、タナトスさんはかなりの素質を持っています」


 イスカリオ牧師はさも嬉しそうに話す、誉められた事に照れたように笑うタナトスだった。


「な、何バカな事言ってんだっ! 早くこっちにーー」


「牧師さんが言ってましたよッ! 仲間になったらレバさんの不死身について教えてくれるそうです!」


 レヴァナントの声を遮るようにタナトスが叫んだ。耳に届いた彼女の口から溢れた言葉に、愕然として力が抜ける。


「な、なんだって……」


「嘘ではありません、私はレヴァナントさんの力の正体を存じあげております。貴方もこちら側に加われば、その力の解除方法も教えて差し上げましょう」


 ワナワナと震える足を抑えるように、膝に手をおいた。これまでにない程の強い感情が自分の中で溢れてくるのが解る。


「しかし国選魔導士は必要ありません。残念ですがミネルウァ術士には消えていただきましょう」


「貴様ッッ! 黙って聞いていれば……」


「ーー待てって言ってんだろッ! 」


 叫び声が岩場に響いた。腹の底から沸き上がる感情に、これまで見せたこともない顔でレヴァナントはイスカリオ牧師を睨んだ。


「タナトス……バカな事言うのも大概にしとけよ。こんなクズみたいな野郎、すぐにでも殺さなきゃ気がすまない」


 レヴァナントは剣を抜いた。太陽は少しずつ傾いてきている、夕陽が剣に反射して赤く延びるのであった。

 



 

ブックマーク&評価の星ありがとうございます!

励みに書いておりますので、読んで頂けると幸いです(^^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ