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呪われ不死者の七つの死因【セブンデスコード】  作者: 夏野ツバメ
世界の夜 編

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Ep.182 指揮官の思惑

 崩れた巨大な廃屋を前に、百を越える人集りがひしめき合っていた。リーパー邸宝庫は見るも無惨に破壊され、中央にぽっかりと開いた大穴の周囲を無数の瓦礫が囲っている。


「それではこれより作戦の最終確認を行います」


 短い紫色の髪を耳に掛けると、集まった軍勢に向けてアイテルは静かに告げた。格好も装備もバラバラな四国の戦士達が彼女の声に一斉に視線を向ける。


「先程の会談の通り、現時刻を持ってこの場の最高指揮件はこの私。不祥ながら、アイテル・リーパーが取りまとめます」


 まばらな歓声が巻き起こる中でアイテルは続けた。


「あと半刻ばかりでこの巨大な扉を開きます。改めて言うことではないでしょうが、ここからは他国の境を抜きにして協力してもらいたい」


 張りつめた空気が一瞬に広がった。


「この巨大な扉の向こうは九死霊門の世界に繋がっている。この先何が起こっても不思議じゃない、くれぐれも警戒を怠ることのないように願いたい」


 誰もが息を呑んだ様に静まり返る。


「標的は終焉王と名乗る不死者。中に状況がわからない以上、当然居場所も解らない。そこで先遣隊として二つの部隊を突入させる」


 アイテルは左手を群生の向こうに向けた。後方には西国の戦闘空挺が連なっていた。


「シグマ元帥の指揮のもと、西国の空挺による空からの索敵を行う」


 西国軍隊から歓声が上がった。野太い声が虚空に木霊する。


「そしてもう一つ、地上からの突入には南国と北国から複数人を選出してもらう」


 ざわめきと同時に怒声が聞こえだした。南国と北国から抗議の言葉が飛び交うのだった。


「……鎮まりなさい」


 アイテルが静かに告げると、雑言は搔き消された。


「地上からの捜索は察しの通り囮の役も兼ねている。最低限、突然の襲来にも対応できる腕前が欲しい。もちろん私もそっちに同行するつもりよ」


 群生にざわめきが起こった。道を譲る様に人波が割れる。


「最高指揮官が前線に向うとなると、戦況の判断はどうなさるおつもりですか?」


 北国魔導士達の人海を割って前に出る小柄な男が前に出る。派手な導士服の男に魔導士達は次々に頭を下げていた。


「ご心配なく。後方には参謀のステラ・アマナミを待機させます。彼女と私は呪術によっていつでも連絡をとることが出来るので、判断に後れをとる心配は不要でしょう」


 アイテルの指し示した先でステラが軽く頭を下げていた。


「なるほど。ではその先遣隊、私が志願しよう」


 何処からか声が聞こえると、今度は南国の騎士達が道を作る。白銀の鎧を纏う男がゆっくりと前に出た。


「ブレイズ様、貴方が前線に出るなど絶対に駄目です!」


 少し遅れて赤毛の騎士が慌てたように声をあげた。


「いや、しかし……」


「ここぞと言う場面での戦力として後方に待機していて下さい。代わりに私が――」


 ティナの言葉を塞ぐように巨大剣を背負った全身鎧が前に出る。


「そうか、ならば云う通り、後方でその時を待とう。向こうは頼んだ、アーレウス」


 南国伝説の騎士の名で呼ばれた異形の全身鎧の騎士は、何も言わずただ頷いた。


「それならば北国からは私が同行しよう」


 先程発言していた小柄な魔導士が薄ら笑いで手を上げた。前に出る鎧の騎士を彼は目を細めて見つめている。


「寛大なご理解有り難い。南国伝説の騎士と五賢人トール殿が共に来てくれるのは、とても心強い」


 アイテルは口元だけ笑みを作ると二人を見る。すぐに群生に視線を戻すと続けて口を開いた。


「それと……もう一人。レイス・バンシー、あなたも私達と共に来なさい」


 その声は冷たくレイスの耳元で響いた。






「……望むところです、私もそのつもりでした。アザートホルス、やっと思う存分暴れられるよ」


 頷くと隣に佇んだ顔を見た。瞳を閉じたアザートホルスは静かに頷いて返していた。


「いいえ、同行はあなた一人、レイス・バンシーのみを連れて行く。異論には応じない」


「は!? ちょっと待ってよ、私達が離れたら扉の力が使えないでしょ!」


 感情的に叫んでいた。思いがけないアイテルの要求は合理性を見いだせない。


「そう……、逃げるつもりなの。それならいっそ、この場からすぐにたち去ってほしいわ。目障りで仕方ない」


「な、何を……?!」


 取り乱すレイスに隣に佇むアザートホルスは口を開いた。


「良いでわないか、保護者(アイテル)の誘いにのってやるのも一興と妾は思うぞ?」


「あ、あなたまで何言ってるの?」


 レイスは困惑に顔を歪め、アザートホルスは何か楽しそうに口元を緩めた。二人のやり取りを取り囲んだ東の呪士達が呆けた顔で見ている。


「汝は先に行け、有事があれば必ず手を貸すことを約束する。欲っするものはあの扉の先にあるのだろう?」


 アザートホルスは顔を歪め呟いていた。その思惑は悪意とも善意とも取れるように曖昧で、レイスは言葉をつまらせた。


「レイス・バンシー、まさか、怖じけずいたのかしら?」


 アイテルの冷たい声がまた聞こえた。レイスは唇を噛み締めると顔を上げた。


「……行きます。私が終わらせてみせる」


 レイスの怒鳴るような返事は、荒野に木霊したのであった。

 



 




 




 


 

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