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呪われ不死者の七つの死因【セブンデスコード】  作者: 夏野ツバメ
西の大国【軍事総領ヴァルハラ】編
16/198

Ep.16 海の大喰らい

Ep.17は11月29日更新予定です

地鳴りのようなけたたましい轟音と共に、突き上げる衝撃が海底から吹き出す。五隻の海賊船を巻き込んだ渦潮は噴水のように高々と舞い上がった。


「冗談だろッ!?」


 レヴァナントとタナトスが乗り込む小型戦闘艇も、突き上げる衝撃により天高くはね上がっていた。咄嗟に船首にしがみついたレヴァナントはタナトスを掴もうと手を伸ばす。

 

「タナトス、掴まれッ!」


 激しい揺れにすんでのところで手を掴み損ねると、彼女は船体から投げ出され更に高く飛ばされたのであった。


「クソッ!」


 体勢を変えてレヴァナントは船首を蹴って飛び出した。視界は既に夜空に囲まれるほど高く、遥か下には黒く渦巻く荒波が見える。投げ出されたタナトスに追い付いたレヴァナントは今度こそ腕を掴んだ。


「レバさん! 見てください」


 驚く事に、絶体絶命の状況でタナトスは楽しそうに目を輝かせていた。彼女は下を指差して興奮した様に騒いでいる、促されるまま視線を下げたレヴァナントは驚愕したのであった。


「なんだーーあの化け物は……」


 渦潮は海底から出現した巨大な口に飲み込まれていた。突き出した鋭い歯によって海賊船が粉砕されてゆく。巨大な口は海底から更に突き上げ、禍々しい姿を現していった。


「海の大喰らい【カリュブデス】は海底から全ての命を喰いつくします!」


 タナトスは嬉しそうに叫んだ。レヴァナントはおぞましい海の怪物に言葉も出ない。


 【カリュブデス】は海月のようなブヨブヨとした体を海面に浮かべて、巨大な口を動かしたいた。残響する悲鳴が2人の耳に届く頃には、すでに五隻の海賊船は姿を消していたのであった。





「レバさん見てください。あれ……」


 再び彼女の指差す方を向くと、遠くの山々から一筋の暁光が伸びていたのであった。いつの間にか白けた夜空を、朝焼けが暖かい色をつけてゆく。同時に海上のカリュブデスは透き通って消えていった、朝と共に七死霊門(セブンホーンテッド)は閉じられたのである。


「そこ! 死柱取ってください!」


 気が付くとレヴァナントのすぐ目先に二本の死柱が飛び上がっていた、思わず言われたままにソレを掴む。突き上げられた拍子に海底から飛び出していたようだ。


「なんだか、楽しいですね」


 ニコニコと笑うタナトスは朝日を浴びて輝いている。反対にレヴァナントは青ざめた顔で見下ろしていた。高々と上がる波と共に空中に投げ出された2人、今度は反対に海面に向かって勢いよく落ちていたのである。


「いくらなんでも、この高さからじゃヤバいだろッ!」


 彼女はまだ楽しいにはしゃいでいる、レヴァナントは叫び声をあげながら停止しかける思考を巡らせていた。


「ーー掴まってろ! 」


 掴んだ彼女の腕を引っ張ると、咄嗟に抱き寄せて背中を下に向けた。レヴァナントの頭には、船上で見た彼女の悲壮な笑顔が浮かんでいたのであった。


「絶対、死なせるかよ! 簡単に死んでいい命なんてあるワケないだろッ! 」


 レヴァナントは必死に叫んだ。自らの身体をクッションにすれば、僅かでも彼女に及ぶ衝撃が減らせるはず。不死身の力は訪れた朝によってすでに消えている、それでもレヴァナントは身を呈して守ろうとしていたのであった。



 ーーウォォォォォッ! 


 恐怖を振り払うようにレヴァナントは叫んだ。海面はすぐそこまで迫っている、目を閉じて衝撃が来るのを待つ……












 ……


 ……


 ……あれ?


 背中に柔らかな何かが当たっていた。確かに海に落ちていたはず、レヴァナントとタナトスはワケもわからずに起き上がった。


「これって、もしかして……」


 タナトスは目を輝かせて柔らかい地面を触っている。海上に浮かんだ灰色の地面をよくよく見ると、それは巨体を浮かべて泳ぐ海獣ケートスの背中だった。2人は浮上したケートスによって運良く助かったのである。


「ケートスの背中って意外にスベスベしてて気持ちいいですね」


 タナトスは寝そべって海獣の背中に頬擦りをしている、気の抜けたレヴァナントは呆れ笑いでヘタリこんだ。



 ーーオーイッ! 無事かァッ?!


 遠くの方で叫び声が聞こえる。波を裂いて進む巨大な装甲船が見えると、すぐに声の主がブックマン船長であると気が付いた。ケートスは近寄る船に警戒する様子もなく穏やかに浮かんでいるのであった。





「不死身のレバさんに言われても説得力ないですよ。でも……助けてくれてありがとうございます」


 はにかみながら礼を言うと彼女は頭を下げた、レヴァナントは「確かに」と小さく呟くと呆れた様に口元を緩ませたのであった。




「……だけど」


「ん?」


 首を傾げるレヴァナントに、タナトスは意地悪そうにニンマリと表情を変えていた。


「年頃の女の子を急に抱き締めるなんて、レバさんって意外に破廉恥ですねぇ……もしかして、少女好き(ロリコン)ですか?」


 ププッと吹き出す彼女は楽しそうに笑う。わなわなと吹き出す感情に、レヴァナントは血相を変えて叫ぶのであった。



 



  




 

 


 




 


次回から新しい章に入ります!読んで頂けると幸いです✨

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