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Ep.134 衝突

「レヴァナント、タナトス! 良かった、二人とも無事にたどり着いて……」


「――うるせぇよ、黙って質問に答えろ」


 ティナの言葉を遮るようにレヴァナントは冷たく言い放つ。彼の異様な様子にティナは口を開けたままタナトスを見た。浮かない表情のタナトスは黙ったまま首を横に振っている。


「ティナ、それにアーレウス。お前らなぜ殺した?」


「殺した……? レヴァナント、いったい何の話しを……」


「しらばっくれんなッ、お前らがレイスに何をしたか俺は見ていた」


 尋常ならざる剣幕でレヴァナントは二人を睨む。怒気に満ちた彼の姿に目を細めたアーレウスは口を開く。


「レイスというのはお前の妹の名だろう。俺達は会った事すらない、すまないが解るように説明してくれないか?」


 アーレウスはそう言ってレヴァナントとタナトス、そして面妖な兜で顔を隠した騎士を見た。視線の見えない鳥を模した兜が軽く傾く。


「私達、さっき二人が戦ってるところ見てたんだよ。それでその相手が……」


 タナトスが割って入るように説明する。言葉の足りない彼女の話に、ティナは気がついたように目を見開く。


「まさか……あのイーターが、レヴァナントの妹だった……?」


 ティナの表情が固く変わる。アーレウスは奇妙な騎士から目を離さないままやり取りを聞いていた。


「そんな……イーターは……だって、奴は二人の仇で……」


 ティナの表情は血の気が引くように青ざめてゆく。肉を貫いた不快な感覚が蘇るのか、彼女の両手は小刻みに震えていた。


(レイス)さんの事は既に僕の部下を救援に向かわせた。テュホニウス、君は()()()()()すればいい」


 険しい表情で硬直するレヴァナントに鳥兜の騎士は一歩近付いて声を掛ける。騎士の動きに警戒するオルクスは大剣を握り直して睨む。


「あの雑魚野郎(レヴァナント)、すっかりガルゥーダの奴に懐柔されてやがる」


「オルクス、奴は何者だ?」


 アーレウスの問い掛けに応えたのは鳥兜で顔を隠したガルゥーダだった。


「戦王アーレウス、お初にお目にかかる……ではないね。僕の名はガルゥーダ。この天眼の支配者であり、世界に革命をもたらす者」


「革命をもたらす者……? 残念だが天眼が機能するのも今日限りだ、南国(デュランドール)の負の遺産は全て破壊させてもらう」


 特大剣の切っ先をガルゥーダへと向けると、アーレウスは言い放つ。さも可笑しそうに肩をすくめたガルゥーダは自身の兜に手をやって告げる。


「残念ながらそれは叶わない。既に天眼(ここ)は僕の思い通りだ、そしてこの南国(くに)もね」


「……よもやと思ってはいたが、まさか息子のお前まで馬鹿げた事を計画していたとはな」


 兜の下から現れたガルゥーダの素顔。天命騎士ブレイズは異様な微笑みを向けていたのであった。


「こんなペテン師野郎に中枢を掌握されるなんてな。北も南も、国を動かしてる連中ってのは間抜けばかりだ」


 皮肉めいた顔でオルクスは呟く。南国最高位の騎士はシニカルな笑みを浮かべて口を開く。


「それは少し違うな、中央指令なんてモノはもう存在しないよ。今この国を動かしているのはこの僕さ。そして騎士の中でも革命の意思に賛同する者達によって維持されている、間抜けで愚かなのは何も知らずにただ機械的に仕えるだけの騎士達の事さ。ちょうどそこにいる剛剣騎士のようなね」


 恍惚な顔のガルゥーダにアーレウスは再び目を細めた。


「お前の父アーサーも同じような夢見事を目論んでいたが、クーデターによって最後には目を覚ましていた。何故父と同じ失敗を辿る必要がある?」


「父が目を覚ました? 冗談を……あれは後世に革命の希望を繋ぐための芝居さ。戦王アーレウス、所詮は貴方も都合よく動かされていただけなんだよ」


 睨みあう二人は暫し沈黙する。膠着を動かしたのは眉を吊り上げたオルクスであった。


「そんな話、俺にはどうでもいい事なんだよ。さっさと死ね、ガルゥーダ」


 黒色の大剣を振りかぶり、オルクスは飛び出したのであった。




 オルクスの突進を皮切りにアーレウスも剣を構える。ガルゥーダは二人の攻撃を避けるように瞬時に動いた。


 空気を振動させる重々しい大剣の残響が鳴り響く中、ティナは一人その場で立ち竦んでいたのであった。


「そんな……私が……レヴァナントの妹を……殺した……」


「だ、大丈夫だよティナちゃん! ポンちゃん……じゃなくて、レイスちゃんも不死のはずだからまだ助か――」


「――タナトス、黙ってろ。今は俺が話をしている」


 タナトスの声を遮るように怒声が響く。一層険しく変わるレヴァナントの顔つきに、二人は言葉を詰まらせた。


「お前が探していた仇がレイスだったのは知っている、恨みを晴らしたい気持ちも解る。復讐心を抱くのは当然の事だ」


 レヴァナントは突然頭を垂れると、両手をダラリと降ろした。


「……それなら、俺がお前に復讐するのも道理だよな?」


 顔を上げた彼は左手で銃を抜くと、戸惑い無く放った。弾道に遅れて、ティナの左頬を赤い雫が伝うのであった。


 






 

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