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Ep.130 四人の革命家

 鳥を模した様な形の飾り兜を脱ぐと、銀髪を揺らしてその男は微笑む。言葉を失くすレヴァナントに向かいあい、片手を伸ばす彼は改めてその名を口にしたのであった。


「僕がこの国の最高指導者ガルゥーダ。いや、この姿ではアスピーテ・サスキャルド・ブレイズと名乗った方が理解してくれるかな?」


 南国騎士第一席、天命騎士ブレイズは館で会った時よりも深い暗闇を宿した瞳で二人を見ていた。


「やっぱり、私、なんとなくわかったんだ。あの館で会った人、ブラ……ブリ……えぇっと……」


「ブレイズ……お前全て企んだ上で、俺達を天眼(ここ)へ誘い込んだのか?」


 レヴァナントは思いがけない人物に目を疑いながらも、これまでの経緯を頭に過らせて呟いたのであった。


「そうだね、館での振る舞いについては改めて詫びるとしよう。だが此方としても譲歩できない理由(ワケ)があるんだ」


「理由だと? アーレウスやティナ、それに他の騎士達まで欺いて、お前は何を企んでいる」


 種持ちの裏切り者であり、自国の仲間すらも欺いた彼をレヴァナントは睨み付ける。ブレイズは顔色一つ変えないまま、再び語りだした。


「その話をするには君に一つ確認しておかなければいけない事がある。君は、自らの父母を覚えているか?」


「俺の両親だと? そんな事が何の関係があるんだよッ!?」


 意図のわからない質問に声を荒げるレヴァナント。


「何も知らないか……テュホニウス、君はあまりにも不憫な境遇だ。ならば僕の口から真実を伝えてあげよう」


「お前、さっきからいったい何をッ――」


 噛み合わない会話に怒りを見せるレヴァナントとは反対に、涼しい顔で彼は語りだしたのであった。



「何から話そうか……そうだな、まずはこの天眼を造り上げた偉大な革命家達について語ろうか」


 勿体つける様子もなくブレイズは語る。途中、横槍を入れそうになるレヴァナント。それを止める様にタナトスが彼をなだめていた。


「中心足る革命家は四人、まずは北国の元五賢人オーディン・エイ・トラスト。そして初代の天命騎士、アーサー・サスキャルド・ブレイズ。僕の父親だ」


「アーレウスが言っていた先代のブレイズか。お前ら親子して欺いていやがったのかよ」


 堪らず洩らすレヴァナントの相槌をブレイズは軽く頭を振って否定する。


「欺くなんてとんでもない。父は偉大な騎士であった。国の為、世界の平和の為にその人力を尽くしていた。だからこそ僕もそんな父の意思を継いで天命騎士を名乗っているのさ」


 淀みのない口調でブレイズは語る。その表情にはどこか誇らしげな印象すら覚えてしまう。怪訝そうな顔でレヴァナントは聞いていた。


「三人目は君にも縁のある人物だ。西国の活動家、レインフェルノ」


「――ッな?!」


 レヴァナントの表情は一瞬のうちに硬直した。ブレイズは彼の反応に納得するように頷く。一人だけ理解の追い付かないタナトスは交互に見て尋ねたのであった。


「レバさん、知ってる人なの?」


 青ざめた顔でレヴァナントは力なく頷く。不可解な彼の反応にタナトスは首を傾げた。


「……レインフェルノ……バンシー……俺と(レイス)の、父親だ……」


「――えっ!?」


 タナトスは驚いた。話の内容よりも、初めて見せるレヴァナントの思い詰めたような表情に瞠目したのであった。


「彼は正義感に溢れた偉大な人物だと、父から聞かされていたよ。テュホニウス、君は御父上の事を覚えているのかい?」


 頭を垂れるレヴァナントは左右に力なく動かす。


「……父親は、俺が物心ついた頃からずっと家を離れていた。たまに帰ってきてもすぐまた何処かへ出て行ったきりで、あんな野郎の事は親だなんて少しも思えなかった」


「レバさん……」


 彼の肩に手をやるタナトスは心配そうに見つめる。ブレイズも憐れみのような目で彼を見ていた。


「妹が生まれて少しした頃、あの世界大戦が始まった……しばらくして母親から父は死んだと聞かされた。母は俺達兄妹を育てる為、稼ぎの良い戦地で給仕役として働いた。当然ながら危険な戦場で、後を追うように母親まで亡くした。俺は糞親父(レインフェルノ)を恨んだ。俺達家族を散々ほったらかした挙げ句、母まで見殺しにして……勝手に死んで、幼い妹と俺を孤児にしやがった。最低の野郎だ」


 レヴァナントは食い縛るように呟いていた。


「……そこには少し誤解があるようだ。父から聞いていたレインフェルノ・バンシーの話、僕の口から語らせて貰って構わないか?」


 ブレイズは項垂れる彼に歩み寄ると、片膝をついて見せる。同情する様にレヴァナントに手を差しのべるブレイズに、タナトスが前に出て拒んだ。


「私も聞きます。過去に何があったのか、私も知りたい」


 タナトスの赤色の瞳が揺れる。ブレイズは一瞬その表情を固まらせると、我に返ったように取り繕った笑みを浮かべて頷いて見せた。


「もちろんだ。なぜなら君にも関係のない話ではないからね」


「どうゆう意味ですか?」


 彼の言葉にレヴァナントも顔を上げる。


「四人目の革命家は東国の術士。名をグリム・リーパーと言う人物だからさ」


「グリム……リーパー……?」


 ブレイズから飛び出した予想もしない名前を、タナトスは思わず呟くのであった。






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