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セイラの看病


「ウィルベルト様! しっかりしてください! ウィルベルトさまっ」



 白い顔をしたウィルベルト様が屋敷に運ばれてきたのは深夜遅くだった。屋敷中が慌ただしく深夜とは思えない程……





「セイラ落ち着け、応急手当てはしてある、目を覚ますのを待つだけだ」



「落ち着いてなんていられません、ウィルベルト様が……」



 お兄様も顔色が悪いようでした。服装は少し乱れていて、いつものスマートなお兄様ではありませんでした。



 ベッドに横たわるウィルベルト様は静かに息をしていた。耳をすまさないと呼吸が聞こえない程に……



「ウィルベルトさま……」



 そう言って手を握りました。反応はありません。



「セイラさん、ここは良いからお部屋に戻りなさい、あなたまで倒れたらどうするの?」



 お義母さまに言われましたが、首を振りました。



「ウィルベルトさまが目覚めた時に側にいたいのです。私に看病をさせてください、お願いします」



 泣くのを堪えてウィルベルト様の手を強く握りました。




「困りましたね……」



「夫人、迷惑でなければ妹の好きにさせてやってくださいませんか?」



「あら……ユベール様よろしいのですか?」



「ウィルベルト殿は頑張っていましたから、それくらいは……私からもよろしくお願いします」




******



「応急手当てはしてある。腹の傷は深くないとのことだし、傷口が塞がれば問題はないそうだよ。ただ、かけられた液体(媚薬)が原液だったと言うことなんだ。直接肌に触れなかったのは不幸中の幸いだと言うことだ」



お兄様が聞いた話によると、ウィルベルト様がかけられた液体(媚薬)は上着にかかったようでした。咄嗟に腕で避けたようです。


 原液が肌に直接かかると身体に浸透してしまい、危険なクスリと同様に廃人になったかもしれないそうです……それを聞いてゾッとしました。



「そんな危険な仕事をしていたんですか……」



「カジノより取り締まりを厳しくするべきなんだよ。ウィルベルト殿が調べた件によると、議会のお偉いさんの息子がカジノで多額の借金をした。弱みをルシア・モンテスに握られた。だからこの件は後回しにされていたんだよ。自分の身を守るために……」



「……私は何も知りませんでした」



 ルシア・モンテス? ルシア様と言う方はよくレオと一緒にいた色気のある美しいあの方でしょうか?



「お兄様、」


 ウィルベルト様の手を握ったままお兄様に顔を向けました。



「私はまだやる事があるから一度戻るよ。セイラはしばらくウィルベルト殿に付いていなさい。無理はしないように」



 お兄様は私の頭にぽんぽんと触れ部屋から出ていかれました。



 ルシア様の名前が出てきた時に嫌な予感がしました。レオは何処にいるんだろう……



「………ぅっ」



「ウィルベルト様!」



 呼んでも返事はありませんが、苦しんでいるようでした。



「ウィルベルト様……」



 看病をと願い出ましたが、私が出来ることなど限られていました。汗を拭いたり熱がないか、呼吸が確認できるか……そのくらいでした。ただ側に居たいと言う気持ちだけでした。



 お義母様もお義父様も、何度も様子を見に来られました。



 ウィルベルト様の意識が戻らないので屋敷も暗い雰囲気になってきています。




 そして意識が戻らないまま三日が経った。





 お兄様がお見舞いにいらして、今回の騒動について言える範囲で教えてくださいました。



 殿下達(ウィルベルト様も含む)は不正に行われている貴族達の賭け事に関して捜査をしていた。破産する人が多く出ていたらしいのです。


 貴族の屋敷でパーティーをする傍ら裏で行われていた不正を正すために今回のようなことが起きた。




 更に最近出回っていた危険なクスリによって体の調子を崩す人たちが増えている事と繋がることから、早期解決をしたかったのだ。と聞かされました。

 お兄様と王宮に行った日に殿下から話を聞いて、お兄様も手伝いをしていたそうです。




 悪の根源モンテス男爵は捕縛され爵位返上となったそうです。


 モンテス男爵の妻ルシア様はミランダ伯爵当主と国外に逃亡したようでした。



 いつでも逃げられるように準備をしていたらしく、追っ手が追いつく頃には早船に乗り、追いつけなかったそうです。



 ミランダ伯爵も爵位返上となり、表向きはこの件は解決となったそうです。お兄様は事後処理に追われていたとの事でした。




「ウィルベルト殿の意識はまだ回復しないのか?」



「はい、たまにうなされていますので、お医者様が言うにはそろそろ目覚めることではないかとの事です」


 ウィルベルト様の頬を撫でました。すーすーと寝息を立てています。



「そうか、あまり気を張り詰めるなよ、セイラに倒れたら困る」



「はい、お気遣いありがとうございます。お兄様も大変なのに」



******




「そろそろ目を覚ましてもいい頃だと思うのですが……」



 お医者様は王宮から派遣された方でした。ウィルベルト様が目覚めるまでいてくださるようです。



「私は何をして差し上げればよろしいでしょうか?」


 お医者様に伺います。



「目を覚ました時に安心させてあげてください。その為にはあなたが元気でいる事ですよ、ちゃんと寝ていますか? 疲れているようですね」



「私は……大丈夫です」



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