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レオ


「悪いがここのテーブルにいた彼は体調が悪くなり帰ったよ」



 ディーラーに伝えたら怪訝そうな顔をしていた。参加者達も同様だった。そりゃそうだろうな。格好のカモを逃してしまったんだから。チッと舌打ちをする男たちを尻目にワインを飲む。




 どうでもいいが上等なワイン。海を越えた国との輸入が大成功していると聞いた。ミランダ伯爵の領地は海に面している。莫大な金をかけ整備した港があるんだっけ? 



 噂では密輸をしているとか……胡散臭い家だ。



 しばらくすると端のテーブルから発狂する声が聞こえた。




「詐欺だ! 詐欺だ! 詐欺だぁぁぁ!」




 ガシャーーーーンと何かがぶつけられる音がした。



 あぁ。きっとカモられたんだろう。騒ぎを聞きつけた体格の良い外国人風の男に取り押さえられどこかに連れて行かれた。



 物々しい雰囲気に胃が痛くなってきた。周りにいた者は始めは驚いていたが、男が連れ出された後はもう普通通りだ。次は我が身と思わないのだろうか?



 キリキリとする胃のせいでワインが喉を通らなくなった。



 しばらくすると人数が増えてきて、クラーラが連れてきた男たちの中にウィルベルト・オリバスがいた。



 は? あの男がなぜ? あいつは今第二王子の秘書見習いをしているとルシアが言っていた。そんな男がこんな裏のパーティーに来るなんて! セイラは知っているのか? 知ったら悲しむに違いないのだが……




 ワインを持つ傍ら、ポーカーをする男たちのプレイしている姿を見ていた。まさかルールでも覚えているのか?



 するとまた男が連れて行かれた。身なりのいい男が項垂れている。二人目か……



 ウィルベルト・オリバスも気付いているはずなのにリアクションはない。



 普通は驚いたり、その方向を見たりするものだろう? 見慣れているのか? 

 

 いや、まさか……



 クラーラ嬢とルシアがウィルベルト・オリバスに近づいた。笑顔で向き合うウィルベルト・オリバスだが、あいつは女性に笑顔を見せるタイプではない。いくら社交の場であったとしてもおかしいだろう……




 ポーカーのテーブルにウィルベルト・オリバスが座った。





 嘘だろ? 





 勝負はあったようで、ウィルベルト・オリバスが勝ったようだ。


 何度目かのプレイが終わったが、勝ち続けている。笑顔のウィルベルト・オリバス。何を考えているんだろうか? 


 単独でこんなところに足を踏み入れやがって……いや単独とは限らないか?



 俺の視線に気づいたウィルベルト・オリバスはニヤリと笑った?




 そうか……これは……罠だ。





 ルシアがパーティーでウィルベルト・オリバスをよく見ると言っていた。証拠を掴んだのか。だから今日はここまで来たんではないだろうか?




 クラーラ嬢がウィルベルト・オリバスの腕を掴んでドリンクコーナーへと誘った。今からカモにされるのだろう。それをあいつは分かっているようだ。




 あの男が大人しく女性に腕を組まれる姿なんて想像がつかないからな。




 ウィルベルト・オリバス、この先はどうするんだ?




 ウィルベルト・オリバスが扉の近くの男に目線をやるとその男は動き出し、去って行った。


 


 なるほど……今からこの場は占領されるんだろう。この場にいる貴族たちも全員罪に問われる事だろう。ざっとニ十人はいるようだ。



 ディーラーも全てうちの手のもの、メイドは外からの雇われだろう。ルシアを見ると、まだミランダ伯爵の息子にくっ付かれていた。




 ウィルベルト・オリバスのあの笑顔は演技だろう。また席に着く頃には自分がカモになる事を分かっているだろうし、仲間が来る為の時間稼ぎに思えた。


 主催の娘を逃さないためか? クラーラはウィルベルト・オリバスを離さないようにまだ腕を組んでいるし、熱がこもった視線を送っている。




 それにしても、あの娘の甘い匂いによく耐えられるな……あいつの鼻はおかしいんじゃ無いのか? 近くに寄られただけでも鼻にこびりつくような甘い嫌な匂い。



 ……そうだあの時意識が無くなったんだ。あの時カジノで……気がついたらルシアとベッドの上にいた。


 ルシアがあの甘い匂いをつけるときは決まって、パーティー(裏)がある時。普段はしない香り。





 あの時から俺は騙されていたんだろう。そして伯爵の息子はもうダメだろう。目が正気を保っていない。




 窓の外を見ると人が集まりだしていた。体格の良い外国人風の男たちが次々と捕らえられている。きっと体格が良くて力はあるが、技術面では敵わないんだろう……と言うことは外にいるのは訓練されている衛兵だ。この部屋に来るのは時間の問題。




 ウィルベルト・オリバスと目が合ったので、俺は窓の外に視線をやった。







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