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学園の下見に行きます

 王都に着いて四日目です。レオは会いに来てくれませんでした。


 今日は学園が休みで、新入生の下見の為に開放されている日でした。ユベールお兄様が学園内を案内してくださるようです。




「ここが王都の学園なんですね、とっても広くて迷いそう」


 大きな校舎が三棟に広大なガーデン、所々に瀟洒な建物が建っていた。


「ねぇ、お兄様、あの建物は何?」

 指を差した先はとんがり屋根が特徴の可愛い建物だった。



「あぁ、あれは図書館だよ、蔵書の数が自慢で、許可証があれば学生以外も入れるんだよ」


「へぇー。ワクワクしますね!」


 お兄様の腕を掴みキョロキョロと校舎内を見て回りました。

 新入生が家族と見学に来ていたり、たまに在校生に会う事もありました。



「おっ! ユベールじゃ無いか」

 お兄様の名前を呼ぶ男性へと振り返ります。


「リオネルか! 久しぶりだな。お前教師になったんだっけ?」

 握手して再会を喜んでいる様子でした。


「おぅ、去年から配属された。ユベールの妹君か?」


 こちらをチラリと見ました。挨拶をしなくてはいけませんね。


「妹のセイラ。今年学園に入学するんだ」


「はじめまして。セイラと申します、よろしくお願いします」


「こちらこそ、学生時代はよくユベールとつるんでいたんだ」

 と言いお兄様を見て笑っていた。


「お前が保護者か……」


「悪いか? それよりうちの妹を頼んだぞ」


 お兄様と友人の先生と三人でお話をしていたら先生がある生徒を見かけて声をかけました。


「あいつは……!」



「レオ・ファーノン課題はどうした!」




「え? レオ?」


 レオがいるんだ。そう思い先生が声をかけた先を見ると、レオは驚いていました。


「セイラ? ユベール兄さんも!」


 レオは友人らしき人と三人でいました。


 制服は着崩し、軽薄な印象を受けました。その姿が信じられなくて次の言葉が出ませんでした。



「セイラちゃんってレオの婚約者の?! めっちゃ可愛いじゃん!」


「……確かに可愛いな」


「セイラなんでここ(学園)にいるんだ?」



 レオが驚いた顔をしていましたけど、理由が分かりませんでした。だって手紙を出したのだから、知っていて当然だと思いました。



「手紙に……書いたでしょ? 読んでないの?」


「そうか。それは悪かったな、ユベール兄さんもお久しぶりです」


 気まずそうな顔をしてユベールお兄様に挨拶をしました。


「……あぁ」

 お兄様はレオの顔を見ずに返事を返し機嫌が悪そうでした。久しぶりに会ったレオは、私の知っているレオではなく知らない人のようでした。





「レオ~~! こんなところに居たの? 探したんだからぁ! 新しく出来たカフェがあるんだけど、付き合って!」


 女生徒に声をかけられ、親しそうに腕を組まれていました。髪をくるくると巻き、王都で流行っていると言うバラの香水の匂いを漂わせていました。お化粧もバッチリしていて、異次元の世界の様でした。



「あ! おい、やめろ」

 レオは焦って腕を振り払おうとしましたが女の人はお構いなしに腕を組みました。


「なんでよ! ()()()付き合ってくれるでしょ! ほら行こ、じゃあ皆さん失礼~」



「セイラ! 今度時間を取るから、」

「私といるのに他の女の名前を呼ばないで」


 レオはぐいぐいと腕を引っ張られ連れて行かれました。呆然とする私を尻目にユベールお兄様は先生と話し出しました。


「おい、ちょっと聞きたい事がある」

 先生を呼びヒソヒソと話をしていました。





「えっと、セイラちゃんだよね? レオの婚約者の」


 レオと一緒にいた友人に声をかけられました。



「はい、そうです」


「なんであいつと婚約しているの? 顔が好み……とか?どこがいいのかな?聞いてもいい?」


 レオといた男子学生でした。突然のことに驚きました。


「顔? いいえ、レオの明るくて真面目で優しいところが良いところですし、小さい頃から一緒に過ごして来て両親同士が仲が良くて婚約をしました。領地も隣合わせですから」



「そうか……セイラちゃんもし何かあったら僕たちに相談してね」



「?……親切にありがとうございます」


 とりあえず微笑んでおいた。レオの変わりように驚きを隠せなくて、レオの友達に大したお返事も返せませんでした。



 そしていつのまにかレオは知らない女の人に連れて行かれましたし、その後もレオの友達に話しかけられましたが、上の空でした。



「セイラ! おいセイラ!」


 ハッとして呼ばれている事に気がつきました。


「ごめんなさい、お兄様考え事をしていて」


「話は終わった、今日は帰ろう」

「うん」


 お兄様の腕をしっかりと掴んで馬車まで歩きました。先生は見送ってくださるようです。



「リオネル、悪いがまた……」

「あぁ。妹君はまた、学園で」


 お兄様と話をしていた時の難しい顔ではなく、先生らしい爽やかな笑みを浮かべていました。


「先生、本日はありがとうございました、これからよろしくお願いします」



「入学式で会おう」

 そう言って手を振られました。





「ユベールの妹君はレオ・ファーノンの婚約者だったのか……なんてこった。あんな可愛らしい子が……」


 ボソッとリオネルは呟いたのだった。



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