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ユベールの思い2


 私が働いているのは王都にある会社だ。最近は隣国との輸入も盛んに行なっている。


「ユベール、おまえに頼みがある」


「断るっ!」


 はっきりと断る。どうせ隣国に行って交渉してこいとかだろう。無理だ。


「まだ何も言っていないぞ」


「隣国へ行ってこいとかだろう? 妹がもうすぐ入学するからこっちへ来る。一人にさせる事は出来ない。やっと一緒に暮らせるんだ」


「……本当に妹思いだな」


「あぁ。可愛いんだよ。それだけではなく優しくて、穏やかで、」


「そこまで言うなら会わせてくれよ。 婚約者はいるのか?」



「……いるんだが、変なことになっている。どうも王都に変に染まってしまって、勉強を疎かにし女の子たちと遊び回っている。妹がこちらに来て変わらないようなら、この婚約はなかったことにしようかと思っている」


「ふーん。それなら手伝ってやる。その男の情報をくれ」



 友人は伝手を使い調べるのが得意だ。自分の足で調べないのが高位貴族だと思う。




******



 結果はうちからの婚約破棄となった。


 カジノか……破産してきた男達をたくさん見てきた。身を滅ぼすとは、あぁ言うことを言うんだろう。


 遊ぶ友達が悪かった。それをレオに忠告をした。友達を選べ。将来の為に勉強をしろ。と。



 セイラと結婚するまでは自由な時間だと言った。こいつにセイラを任せる事は出来ない。いつでも婚約破棄できるよう準備はしてあったし、決まれば早い。



 婚約破棄したくない。とはまた笑わせてもらった。レオはおそらく次の学年に上がる事は出来ない。留年するか退学するか……



 ファーノン家はセイラの婚約者にレオの弟ルカを指名してきた。バカなのか?



 その後レオは再びカジノに足を踏み入れ、無断外泊、無断欠席で退学となった。



 その後は知る事ではなかったが、()()()友人によって知らされた。



 違法カジノか……しかもきな臭い事で有名な男爵家の後継とは……そしてレオには子供がいたと言う。こんな男と可愛いセイラが一時でも婚約をしていたと思うと、死にたくなる。




 セイラの相手を考えなくてはいけない。と母上が言った。



 もう間違える事は出来ない。セイラに相応しい男……ウィルベルト・オリバスか?


 家柄もいいし、成績優秀。オリバス伯爵も清廉潔白な尊敬できる当主である。



 オリバス家の領地は王都から少し離れた東の地区で、ルフォール家の領地から王都に向かう際に立ち寄る地区。


 伝統あるオリバス伯爵家は海があり、領地の一部では塩も作り出す事により裕福な土地だ。翡翠の産地でも有名。王家にも重用されていると言う。




 格上の伯爵家ではあるが、セイラが良いと言うのであれば婚約の話を進めても……良い。




 ウィルベルト殿は物おじもせず、堂々と挨拶をし、まるで私たちが面接を受けているようだった。

  


 私も父も今まで仕事で色んな交渉をしてきた事は多々あるが、ウィルベルト殿の歳でここまで話をできるのは大したものだ。将来が楽しみだと思った。




******




「ただいま、帰りました……」


 セイラがオリバス邸から帰ってきた。ウィルベルト殿に送ってきてもらったのか。



「おかえり。ところでどうした? そのワンピースは?」





「ベアトリス様からいただいてしまいました。お断りできなくて……返してこなくてはいけませんか……?」


 おずおずとセイラは私を見てきた。



「すいません。姉がどうしてもセイラさんに着て欲しいと言ったものですから。セイラさんはユベール殿に怒られると断っていたんですけど、あまりにも似合うもので、是非貰って欲しいのです」



「ベアトリス嬢から? それはお断り出来ないね。たしかにセイラに似合っているから、受け取ったらどうだ? 後で私からもお礼を言っておくよ」



「良いのですか? お兄様! ただより高いものはないって」



「それは例えだよ。ベアトリス嬢は好意でくださると言っているのだから、受け取るのが筋だよ。そこに裏があるような方ではないだろう、ウィルベルト殿?」




「はい。まるで()()()()()()()()と喜んでいましたので、裏など()()()()ありませんよ」



 にこりと笑うウィルベルト殿、強調された言葉。



「セイラは分かっていると思うけれど、物に釣られてはいけないよ。お菓子をあげると言われても、ついて行ってはいけないからね? よく覚えておくように」



「? うん」






「それでは私は失礼します。セイラまた学園で、ユベール殿それでは()()




 またセイラの事を呼びつけて、ドレスや宝石を押し付けてきそうだ……


 ベアトリス嬢からのプレゼントと言うと、もうセイラはオリバス家に嫁ぐといっているようなものだ。



 その後お礼の手紙を出すと、ワンピースが十着ほど送られてきた。ちゃんとセイラの体型に合わせて直されていた。伯爵家のお針子の仕事の早さに驚いた。










 







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