二年生になりました
長期休暇中に、無事? 婚約式が行われました。緊張してしまいましたが、家族の為、オリバス家の皆さんのためにもこれから頑張って行きたいと思います。と言うのも……
婚約式を機にウィルベルト様と婚約をしたのだなぁ……と実感したから。
ウィルベルト様は三年生になり、今年は最終学年です。領地経営の為の勉強を更に増やすと言う事で、毎日忙しいようです。
しかし、卒業後は王宮へのお勤めが決まっているので、週に何度かは学園が終わってから登城しています。
私はウィルベルト様のお母様に伯爵家について習っています。ベアトリスお姉様も相変わらず良くしてくださって、今では一緒にお茶会にも行くようになりました。
変わったことといえば、学園にレオの弟ルカが入学してきたことです。レオに良く似た容姿ですので、目立っています。昔はルカとも良く遊んでいたので、不憫でなりません。
ルカは寮に入っていますが、誰とも親しくはしていないようです。たまに学園で見かけてもいつも一人でいます。静かに本を読んでいると言う印象でした。
成績は優秀なようですし、課題についても表彰されていました。表立って声をかけることは出来ませんが、頑張っているようでホッとしました。
ある日図書館に本を返しに行こうとした時でした。
「付き合ってください」
女子生徒が告白をしている現場を見かけてしまいました。相手はルカでした。
「ごめんなさい、そう言う気持ちはありません、手紙も受け取れません」
ルカは淡々と返事をしていました。明るい子だったのに、ルカは誰も人を寄せ付けません。
「遊びでもいいんです」
「そういうのはもっと困ります。あなたの価値を下げるような事はしない方が良いです。それに遊びなら他をあたってください」
「……なによ! 田舎から出てきたんだから少しくらい遊べば良いのに! だから田舎者は嫌なのよ。真面目で! バカみたいっ」
令嬢は怒りながら去って行きました。
「そこにいるのはだれ? 趣味が悪いですね。覗き見ですか?」
隠れていた事がどうやらばれていたようです。
「ごめんなさい。覗き見をするつもりはなかったの」
罰が悪そうにルカの前に出ました。
「……セイラ? どうしてここに?」
ルカはレオとよく似た声で言いました。
「本を返しにきたの。そうしたら、ごめんね。見られたくなかったよね」
「いや、気にしないで。それより久しぶりだね、その、元気だった?」
ルカは急に大人びた口調で聞いてきた。雰囲気変わった……
「うん。色々あったけど、今は元気……ルカは? おじさまやおばさまは?」
「父は仕事に夢中になっているし、母は少し……兄上のことでまだショックから立ち直れていないけど、大丈夫だよ。セイラが気に病む事はない」
「………そう。ルカは身長が伸びたね」
領地を出る時は同じくらいだった身長が今では見上げるほど身長が伸びていた。
「セイラは綺麗になったね。今、幸せ?」
「うん。ごめんね……」
「オリバス様の事が好き?」
「……うん」
返事をすると涙が出てきました。
「良かった。なんで謝るの? 謝るのはこっちなのに。兄や母が迷惑をかけてごめん」
ルカは頭を下げてきたけど……
「ルカはっ、悪くないもん、っく……」
「これはファーノン家の罪なんだ。これからもルフォール子爵家とは良い関係を続けて行きたい……子爵には迷惑ばかりかけたのに、僕は関係ないからと言葉をかけてくれた。僕はその言葉に報いる為にも、全部受け入れる覚悟はある。だからセイラは気にしないで欲しい。オリバス様と、仲の良さそうな姿をたまに見かけるよ。セイラが幸せになってくれると僕は少し楽になるんだ。だからセイラ、幸せになって欲しい。僕も頑張るからさ」
ルカは私の肩をポンと叩いて行ってしまった。しばらく会わないうちに苦労して、そして早く大人になろうと必死なんだ……
******
~ウィルベルト~
何度も言うけれど覗き見の趣味はない……
セイラと帰ろうと思って教室に迎えに行ったら本を返しに行った。と言われて、図書館にきただけなのに……
こんな場面に出会すとは……
ペコリと頭を下げてレオ・ファーノンの弟ルカは私の前を去ろうとした。
こう言う時って……どうすりゃ良いのか。
「あー、あれだ! 頑張れよ」
レオ・ファーノンの弟に声をかけた。
「なんですか? それ」
くすくすと笑い出すルカ・ファーノン。
「なんとなく?」
見た目は兄と似ているのに、雰囲気は全く違う。苦労人といったところか……
「セイラをよろしくお願いします。僕はもう幼馴染としても、個人的にも彼女と話す事はないでしょうから」
「あー。それは任せておけ。君も大変だろうが、めげるなよ」
「なんですか、それは……初対面の相手にいう事ではないですね。それでは失礼します」
「あぁ、じゃあな」
真っ当に生活をしていたらレオ・ファーノンもあんな感じだったんだろうか。自業自得とは言え、あの弟を見ていたら同情の気持ちが湧いてきた……
育った環境は悪くなかったのにな。あいつは今頃何を……いや、いかん。
「セイラ、どうした?」
探しにきたふりをしてセイラに声を掛けた。
「目にゴミが入ったの」
ハンカチで目を押さえていた。誤魔化しているつもりか?
「セイラの目は大きいから大変だね。帰ろうか? 迎えに来たんだ」
「はい」
ここはゴミが入ったと言うセイラの言葉に騙されておこう。そしてセイラの手を繋いで歩き出した。
ルカ・ファーノン、なんとなく嫌いになれないやつだと思った。




