季節が変わった…レオも変わった。
レオからの手紙は来なくなった。
忙しいと手紙に書いてあったから、しつこく手紙を出すのは悪い様な気がして、書いたは良いけど出せず仕舞いで、引出しの中に溜まっていく一方でした。
おばさまも手紙を書いている様ですが、言いにくそうに、お金の催促以外は連絡が取れないと言っていました。
心配は不要と言われてしまったので、私はおばさまに
「レオは大丈夫です。私もあと数ヶ月で王都へ行きますし、忙しいレオの代わりにおばさまに手紙を出しますね」
と明るい口調で言った
「セイラちゃん……ありがとう。本当はセイラちゃんが不安なのは分かっているのに」
そう言われて、おばさまの手を握った。
「大丈夫です。レオを信じていますから」と笑顔で答えた。私の知っているレオは優しくて明るくてまっすぐな人だもの。
それからおばさまを安心させる為に、レオへの手紙をまた出す様になった。
返事は返って来なかったけど、それでも良かった。中身は近況報告だった。
そして季節が変わり、私は学園に入学する為、王都の邸へと行くことになりました。
「何かあったらユベールを頼るんだぞ」
「体に気をつけてね。長期休みには帰ってくるのよ」
「セイラちゃん、レオのことを頼むよ」
「セイラちゃん、勝手だけど手紙を待っているわ」
両親と、レオの両親に見送られ王都へ向かうべく馬車に乗りました。
レオには手紙で伝えてあるけれど、会いにきてくれるかな……忙しくても久しぶりに会いたいなぁ……そう思い車窓を眺めていました。
馬車に揺られること数日、王都に近づく度に賑やかな雰囲気が感じられる様になりました。
「わぁ……人がいっぱいだわ。お祭りみたい」
と言うと、私についてきてくれた侍女に笑われてしまいました。
「セイラお嬢様ったら、お祭りだなんて」
侍女も楽しそうでした。
ついて来てくれた侍女はリサと言い十七歳で私より二つ上のお姉さん的存在で、商家の娘さんです。
小さい頃は王都の近くに住んでいたらしく、見慣れているのでしょうね。
「だって、私は初めて王都に行くんだもの、知らない事ばかりだし、リサが頼りなのよ?」
口を尖らせてリサを見ました。
「はい。私も久しぶりですが、王都の事はバッチリ頭に入れて来ました」
そう言うリサの顔は楽しそうでした。
「まず製菓の材料を揃えたいわね」
「落ち着いたら、ユベール様の了解を得てお買い物に行きましょう」
遅くなったので今日は王都へは行かずに、王都の近くの街の宿で一泊して、早朝に出発予定との事です。
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「ユベールお兄様! お久しぶりです」
「セイラ! 会いたかったよ、よく来たね」
お兄様とは一年半ぶりにお会いしました。領地へ帰るまでは王都でお仕事をしています。
私とお揃いのさらさらのミルクティーブラウンの髪色と琥珀色の瞳の色で、すずしげな目付きの優しくも厳しいお兄様です。
「セイラ、レオとは連絡が取れているか?」
「手紙は出しているけど、返事が来ないの、レオ忙しいって言っていたから、仕方がないのだけれど」
「そうか……やっぱり」
そういうと考える様に目を細めていました。
「セイラ疲れただろう。今日は荷物の整理をして、明日必要なものを揃えに行こう。リサ頼んだよ」
「はい、畏まりました」
リサはお兄様にお辞儀をして、テキパキと荷物の整理をしてくれました。
お兄様がレオの事を聞いて来た時の不安はなんだろう、嫌な予感がしました。