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初めまして


「はじめまして、ウィルベルト・オリバスと申します。セイラ嬢とは同じ学園で親しくさせていただいています」




 その後ウィルベルト様に送ってもらったら、なぜか家族との挨拶が始まってしまいました……なんでこうなったの?



「セイラは部屋に行って着替えておいで、私と父上はオリバス殿と少し話がしたい」


 お兄様がウィルベルト様と話? 動揺しておろおろとしてしまいました……



「え? なんで? どうして?」




「セイラ、着替えておいで」


 にこりと笑うお父様の顔が……少し怖い。



 そして微笑むウィルベルト様……




******



「どうか私のことは気軽にウィルベルトとお呼びください」


「お気遣い感謝する。それでは私はユベールと」



「ところでウィルベルト殿、セイラに一体何があったんでしょうか、あなたが何かをしたわけではなさそうですし……」



「はい。そのことでお耳に入れておきたい事がありまして、突然ですがお邪魔しました」



 セイラの身に何があったのか、レオ・ファーノンの事を話した。



「……なるほど、分かりました。この件はうちで処理をさせていただきます」


「はい、よろしくお願いします」





「……ウィルベルト殿はうちの妹とどう言った関係でしょうか? 親しくしているとは聞いていますが、友人として……ではなさそうですね」


 気になるところだろう。普段は離れて暮らしてある愛娘が学園の行事を早々に切り上げて男を連れて帰ってきた。言い方の問題だが、ちゃんと説明をしよう。



「私はセイラ嬢のことを女性として好ましく思っています。私の気持ちは本日彼女に伝えました」



「セイラは、なんと……」


 ルフォール子爵が少し戸惑ったようだった。




「彼女からもいい返事を貰えました。ただし、彼女は家族になんて言えばいいのかと戸惑っていました。私は家族にセイラ嬢の事を既に報告済みですし、昨日の学園祭で母と姉は彼女を見て気に入ったと言っていました」



 にこりと笑う。母に挨拶と言われたらもう断る事は出来ないだろうが、仕方がない。偶然だったから。



「しかしセイラは婚約破棄したばかりで、オリバス伯爵家にとは……親の私が言うのもなんですが、」


「お話し中、失礼します。そこは気になさらないでください。彼女もそこが気になるようでしたので、説明しました。元婚約者殿との事はあまり知られていないようですし、学園で知っている者には決して言わないようにと口止めしますので」



「なんの取り柄もない地方の田舎娘が王都に近い伯爵家になど、」



「はい、その点ですが、彼女に説明済みです。取り柄がないだなんて、誰の話か分かりませんね。私は彼女が良いんですから。田舎娘と仰いますが、彼女が領地を愛している気持ちに惹かれたのですから()()問題ありません。あと何かございましたら、お答えいたします」




「父上、セイラが良いなら良いんじゃないですか? ウィルベルト殿、心変わりだけはやめてくださいね。これ以上セイラを傷つける男がいるのなら、私は黙っていられませんよ」



「はい、ご安心ください。彼女が私の側にいてくれるのならそう言った心配はご無用です。彼女もそこが引っ掛かっていたようですが、男が皆元婚約者殿と同じだと思われるのは癪ですからね」



「……そうですか、わかりました」



「すぐに婚約したいと思う気持ちはあるのですが、そこはセイラ嬢の気持ちに任せることにします。私はこそこそと婚約者を隠すつもりなど()()ありませんからね」




******



「ウィルベルト殿はなかなか手強いですね。面接を受けているようでしたよ」

 

 くっくっくと笑う。面白い男だと思った。急に家に来て堂々と振る舞うのだから。父も私も交渉には慣れているのにセイラの事となると焦ってしまった。


「うむ。ウィルベルト殿くらい強引な方がセイラには良いのかもしれないな伯爵家に嫁ぐのか……大変だぞ」





「それは追々にして、レオのことですが──」



******


 セイラが着替えて来たようだ。プレゼントした髪飾りを着けていた


「ウィルベルト様、お茶を用意しますね」


 リサと言う侍女と共に用意を始めた。彼女がセイラと仲がいいと言う侍女だな。


「お待たせしました。どうぞ」


 出されたのはハーブティーだった。香りが良い。やはり緊張していたのかお茶が喉を通るとすっと楽になったような気がした。


「それ、着けてくれているんだね」



 髪飾りに目をやった。明るいところで着けているところを見ると嬉しくなる。




「はい、ありがとうございました……白い紫陽花ですね」


 頬をピンクに染めて微笑むセイラが可愛かった。まだ似合いそうなものはあったがセイラを思い出させたのはそれだった。




「何かお返ししなくてはいけませんね」


「いいよ、それは私が君にプレゼントしたかっただけだ」


「毎日着けますね」


「……いつものリボンもかわいいけどね」


 リボンをつけている姿も清楚で可愛いし似合っている。自分がプレゼントしたものを着けてくれると言うことがこんなに胸を熱くさせるのか……セイラは喜んでいるが私も嬉しい。



「困りましたね……何を着けたらウィルベルト様はお気に召すのか」



「私の好みに合わせてくれるんだ。そうだな、またプレゼントするよ」


「あの、そう言う意味じゃなくて、」


「わかってる。ただ私のプレゼントしたものをセイラが着けてくれるのが嬉しいだけだから」





「……なんとなくそれは、分かります」


「ん?」




「私もまたウィルベルト様の持ち物に刺繍を入れても良いですか?」


 顔をピンクに染めて恥ずかしそうにセイラは言う。強請って作って貰う物よりセイラが自ら刺繍を入れてくれる。と言う行為が嬉しい。


「もちろん、頼むよ」



微笑み合う二人に穏やかな空気が流れる。




******





「いい感じですわね」

「うむ……」

「婚約の準備をした方が良さそうですね、相手の家にも挨拶へ行かなくては行けませんね」



「セイラが……遠くへ嫁に……」





 がっくりと項垂れる父と嬉しそうな母、諦めたようで楽しそうなユベールの三人だった。












お読みくださりありがとうございます。


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