表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/69

学園祭最終日


「セイラ様、先程のリスって何のことですの?」


 フローラ様に聞かれましたが……


「バザーに出す為に刺繍をしていたんです。お花ばかりではなくて動物もモチーフにしようとしていたんです。仲の良い侍女が私の刺繍の先生なんですけれど、どうも目つきが悪かったらしくてクマに見えたようで……その事をウィルベルト様にお話ししたら、欲しいとおっしゃって、失敗作だからお断りしたんですけれど……私のリスを見ていつも笑っているそうです。酷いですよね」 



 こんな事ウィルベルト様に話をするんじゃなかった。私の中ではリスなのに。



「まぁ! そんな事があったのですね。セイラ様は凄いですわよ……内緒ですけれど、私のハンカチはメイドが刺繍しました。私は刺繍が苦手なんですもの。ですからセイラ様が刺繍されるものは凄いと思いますわ。クマだなんてオリバス様は失礼なお方ですわね」



 フローラ様は本気で怒っている訳ではなさそうです。お顔は笑っていました。

 



「持ってこなければ良かったと後悔しています。もし上手にできるようになったら、フローラ様にプレゼントしてもよろしいですか?」


「ふふっ。おねだりしたみたいですわね。嬉しいですわ」




******



 学園祭は最終日になり、舞踏会があります。



「セイラ素敵ね、綺麗よ」



 ドレスに着替え両親にお披露目です。優しい色合いの黄色がメインで白いレースがふんわりと軽やかなデザインでした。



 少しおめかしをして、髪の毛に緩くウェーブをかけてもらいました。



「ドレスを仕立ててくださってありがとうございます」



 お父様に感謝の気持ちを伝えました。お父様もお母様も私のドレス姿を見て喜んでくれました。



「セイラは学園生活を楽しんでいるようだし、安心したよ」



 レオのことで心配をかけたから、学園祭に来てくださったのだろう。ちゃんと気持ちを伝えないといけません。



「これもお父様やお母様のおかげです。お兄様も一緒にいてくださるのでとても心強いです」



「セイラは舞踏会で()()()誰かと踊るのかい?」



「えっ! 誘われていませんよ。ちゃんとしたダンスはお兄様としか踊ったことありませんし、下手だし」

  


 しどろもどろと答えました。誰にも誘われていないのは本当ですもの。




「セイラ、ちょっとおいで」



 お兄様に手招きされたので、近くに行きました。



「何か?」



 すると着けていた首飾りと耳飾りを取られて、リサ(侍女)がすっとトレーを差し出してきました。


「私達からのプレゼントだ」



 新しい首飾りと耳飾りを、お兄様がつけてくださいました。リサがすっと鏡を出してきたので、鏡を見て確認しました。



「わぁ! 素敵。誕生日でもないのにこんな高価そうなものを……よろしいのですか?」



 ドレスやアクセサリーまで。大袈裟ですがお姫様になった気分でした。くるくる回りたい気分です!





「うちはな、好きでケチっているわけではない。娘の一人くらい飾れなくてどうするんだ……使うときは使うんだよ」



 お父様は苦笑いでした。



「そうよ。年頃の娘ですもの。今は使うときですよ。まだ足りないくらいですけれどね、あなた」



 お母様は楽しそうにお父様を見ました。



「楽しんでおいで、リサ頼むよ」


「はい、それではセイラ様行きましょう」


「うん」



******



「セイラ様とても素敵ですわね」


 フローラ様に言われましたが、フローラ様は堂々としていて、ザ・侯爵令嬢という貫禄がありました。




「フローラ様なんて美しいのでしょう」




 フローラ様に見惚れてしまいました。フローラ様が一番美しいです……! このように美しい人を間近で拝めるなんて……最高です!



「セイラ様のアクセサリーとても素敵ですわね」


「ありがとうございます。両親と兄からプレゼントとしていただきました」



「とてもお似合いですわ。ドレスにも合わせてあるのですね」


 お互いのドレスやアクセサリーの褒め合いをしていました。



 舞踏会は始まっていて、いろんな方に話しかけられるのですが疲れてきてしまいました。ダンスにも誘われるのですが……。




 フローラ様は婚約者様のご親戚の方に話しかけられ、申し訳なさそうに離れていかれました。


 会場を見渡してもウィルベルト様は見当たりませんでした。どこかに隠れているのかな……?



 少し冷たい風が浴びたくて、会場を抜けると風が心地よく吹いていました。





「セイラ?」


「……レオ」




 無言でした。話す事が出来ないと言うか、気まずいというか……




「そのドレス、似合っている」



「ありがとう、レオもタキシード似合っているね」



 再び無言になりました。お兄様にレオとは近寄るなと言われていますし、話すことが思い浮かびませんでした



「えっと、私行くね、」


「待ってくれ!」



 そう言われ腕を掴まれました。嫌な予感がします




「離して、」




「悪かった。全部俺が悪い、許してくれとは言わないが、俺は将来セイラと結婚するからと安心していたんだ……」


「もう、いいよ。だから離して」



 腕をぶんぶんと振り回しました



「俺はセイラが好きなんだ。ずっと子供の頃から。今年セイラが入学してきてこんな姿を見たら軽蔑されると思って、昔と変わらないセイラを真っ直ぐ見られなくなったんだ。自分が恥ずかしくて……」



「もう。いいから」


 後ろを振り向き会場へ戻ろうとしました



「好きなんだよ、セイラ」


 急に後ろから抱きつかれてしまいました。耳元にレオの吐息が聞こえてきて、恐ろしく感じました。




「………離して……」




 震える声でレオに言いました。こんなレオ知らないから




 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ