表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/69

紫陽花の花


「君はその植物図鑑が気に入っているのか? よく読んでいるね」


 例のガゼボに居たらウィルベルト様に言われた


「はい。この本には花言葉とか書いてあって、楽しいですよ。あとどのように使えるかとか、参考になります」


「なるほど……それで紫陽花を見ていたのか?」


 紫陽花がガゼボの横で見事に咲き誇っている。



「紫陽花は好きですけど、花言葉を見るとちょっと……見方が変わってきて」



 紫陽花は土によって色が変わる。しかも根から吸う成分によって、咲いている時に色が変わってしまうものもあるらしい。



 【移り気】とか【浮気】とかそんな花言葉だった。土によって変わるだなんて、まるで人みたいだと思った。


 レオも領地にいる時と王都では違う人になったから……



「咲く場所によって変わるだなんて」



 ウィルベルト様は何かを察したのか



「ちょっと待ってて、すぐ戻る」




 そう言ってウィルベルト様は離れていった。そういえばウィルベルト様のハンカチの図案を考えなきゃ……。


 いつもお世話になっているのだから、心を込めて刺繍しようと思った。

 まずはイニシャルと……そういえばウィルベルト様は何が好きなんだろう? 何色が好みなのかな?


 私の作ったパンはとても気に入ってくれたようだけど……ふふっ。パンと言うわけにはいけませんね。

 美味しいと言ってくれた顔を思い出した。



 すると三十分程してウィルベルト様が戻ってこられた




「お待たせ。なんで笑っているんだ?」



「なんでもないです。思い出し笑いです」


「変なやつだな、はい」



 ウィルベルト様の手には白い紫陽花の花束



「え? どうしたんですか?」


「君にプレゼント」



「紫陽花……?」


 さっき見方が変わったって言ったばかりなのに……。なぜ?



()()白い紫陽花」



「綺麗ですけど……」



「そこには書いてないが、白い紫陽花は土の性質を受けずに色は変化しない。どこの土で育てても何にも染まらない、だから白いままだ」



「へー。そうなんですね。知りませんでした」


「まるで君みたいじゃないか?」



「へ?」




「地方から出てきても王都には染まらない、でも王都での生活を受け入れる寛容さがある。だからこの白い紫陽花は君のようだ」



「ウィルベルト様……」




 素敵な言葉を貰った(プレゼントされた)。すると急に紫陽花が愛おしく思えた。ある意味私は移り気なのかもしれない。



「早く受け取ってくれない? 流石に恥ずかしいと思っている」



「はい」



 受け取った白い紫陽花を愛おしく感じた



「お部屋に飾って、その後はドライフラワーにします。あっ、なんとかして育てる事が出来るかも。庭師と相談して」


「そこまでしなくても……」


「こんな素敵なお花(言葉)を貰ったのは初めてですもの」



 レオから貰った黄色いバラのことを思い出した。



「誰から貰ったのかは聞かないけれど、喜んでくれて良かった」



 白い紫陽花と言葉をプレゼントしてくれたウィルベルト様はとても素敵で、私の心臓はばくばくと煩かった



******



 女の子に花を渡したのは初めてだった。

 あんなに嬉しそうに愛おしそうに花を見る彼女は純粋なんだと思った。



 白い紫陽花、花言葉は【ひたむきな愛】と言う意味もある。最近人気の花だ



 浮気と聞いてレオ・ファーノンを連想させるが……いや連想したんだろう。



 セイラはどこにいてもそのままでいて欲しい。土に関係なく咲く白い紫陽花、セイラのようだと思った。

 タイミングよく渡せた事はラッキーだったのかもしれない。




******



 家に帰るとお兄様が珍しく帰っていた。


「お兄様、お早いお帰りですね」


「セイラおかえり、どうしたその花?」


「貰いました。珍しいですよね白い紫陽花」


 自分でも分かる。顔が緩んでいる



「誰から?」


「秘密です」



「まぁ、良い。話があるちょっとおいで」



 侍女のリサにお部屋に飾って欲しいと頼んで花束を渡し、お兄様についていった



「一応、耳に入れておくが、レオ・ファーノンは廃嫡となるようだ」


「え! レオが?」


「学園での問題行動に、男爵が我慢できなくなったそうだ。家の恥だな。婚約破棄をしてよかったと思っている」


「そうですか、レオが……」



「セイラは関係ないからな。学園の噂は社交界にいずれ広まる。レオの子ではなかったが醜聞だ。相手が分からないのだからな」


「はい」



「レオとはその後話はしたか?」


 頭を左右に振った



「約束は守られているんだな」


「はい」

  





「セイラは、好きな男はいるのか?」


「なんですか! 急に、そんなの、そんな人、いません、よ」



 パッと思い浮かんだのはウィルベルト様だったけれど、相手は伯爵家……好きと言うか、憧れというか、かっこいいとか……どうしよう。分からない。




「リオネルが言っていたんだけど、特定の男子生徒といるところをよく見かけると聞いた」


「ウィルベルト様……ですね。勉強を教えて貰いました」


 先生にウィルベルト様といるところを見られているし、声を掛けられた。やましい事ないもん




「今度の学園祭は父上と母上も王都に来るそうだ」



「えっ! お父様とお母様が!」


「セイラに会うのを楽しみにしていた」


 お母様からの手紙を渡され、嬉しくってお兄様に抱きついた



「まだまだ子供だなぁ、セイラは」


 背中をぽんぽんと子供をあやすように叩かれた






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ