レオへの疑惑
アイリが突然学園を辞めた。そういえば、謹慎になってからアイリの顔を見ていない。
アイリも反省して、俺に構う余裕がなくなったんだと勝手に思っていた。
「レオ・ファーノン、話がある」
またいつもの教師だ。
「なんだよ。課題は提出したはずだけど」
「いいから、来い」
連れてこられた相談室という名の個室
「アイリ嬢が学園を辞めた。理由に心当たりはないか？」
心当たり？……
「知らないな。謹慎になってから会ってもいないし、連絡もない」
「アイリ嬢の親から連絡があって、相当なお怒りでな……彼女妊娠しているみたいだぞ」
「はっ？ アイリが？」
「おまえ、心当たりは、」
「ねぇよ！！」
「お前の子ではない？」
「当たり前だろっ！」
「じゃあ、誰の子だ？ 謹慎中にアイリ嬢がお前に会いたいと言っていたのを聞いたらしいんだよ」
「だから、俺じゃない！！」
「信じて良いんだな？」
「良い！ 俺とアイリはそんな関係ではない」
「分かった。信じるからな！」
アイリが妊娠？ 誰の子だ……
アイリの退学の話はあっという間に広がった。いろんな噂が出回った。
俺と別れたことによる自殺未遂。
新たに男が出来ての逃避行。
それに、妊娠疑惑。父親は俺
寮に戻ろうとしたところ、でっぷりとした紳士に話しかけられた。
「君がレオ・ファーノンか？」
「はい、そうですけど」
「アイリの父だ。 お前の子をアイリが産みたがっている」
「ちょ、ちょっと待ってください。俺とアイリはそんな関係ではないです」
「しらを切り通すつもりか？」
「遊んでいた事は確かですが、遊ぶと言ってもカフェや買い物に付き合っただけですよ？ その……男女の関係ではありません！」
「君の家は東の男爵家だったな？ もし、子が産まれてお前の子だったら、どうなるか分かっているな？」
「なにを……俺の子ではありません」
「生まれて来るのが楽しみだ」
そう言ってアイリの父親は怒りながら去って行った……。
俺の子ではない、一体誰の……？
アイリの父親が、俺に会いにきたと言う噂が広まり、俺の子をアイリが妊娠していると言う噂は事実として広まった……。
両親に手紙を書き、説明をした。今更だけど信じて欲しい。と。
教師にも、俺ではない。と何度も言った
「おまえに生活態度を改めろ。と何回も忠告したろ？ おまえは謹慎中に反省をし、テストでも結果を出した。やれば出来るのにそれをしなかった。
ユベールに聞いた昔のお前の人物像は、真面目で優しく素直で、妹を大事にしていた。と言うことだ。どこの誰の話かと思った。謹慎中に結果を出した時、これがお前の本来の性格なんだろうと思った。
なんでそうなった？」
「反省しかない。今考えるとバカだった。田舎から出てきて、田舎者である事をバカにされたくなかったんだ。街で出会った女性に褒められて調子に乗ったんだ、田舎者であることにコンプレックスを抱いた」
「セイラ嬢はどうだ？ 違うだろう」
頷いた
「セイラは領地を誇りに思っているんだ。田舎ものでも恥ずかしがらずにいい友達に恵まれたみたいだ。俺とは違う、昔と何も変わらないセイラと向き合うのが怖かった。
でも将来はセイラと結婚すると思っていたから、それで良かったんだ」
「婚約破棄されただろ？ あの子はお前と話し合いたかったんだぞ。ずっとおまえを目で追っていた、悲しい顔をしていたんだ」
「まさか婚約破棄をされるなんて思っていなかった。セイラが俺を見捨てるなんて、今でも信じられない」
「おまえの言い分もあるだろうが、取り敢えずは、産まれてくる子がおまえに似ていない事を祈るよ。行っていいぞ」
「信じてくれて、ありがとうございます」
＊＊＊＊＊＊
しばらくしてアイリが子を産んだ。
黒髪の茶色い瞳の女の子だったそうだ。
俺のプラチナブロンド、青い瞳の面影は全くなし。肌の色も違った……
ほっとしたというか、俺の子ではない自信はあったんだけど。俺の学園での立場は肩身の狭いものだ。友人にも呆れられてしまった
ある日両親が、王都へと来た。
「学園を卒業したら、取り敢えず帰ってこい。おまえは長男だが、跡取は次男のルカとする」
衝撃だった。田舎貴族でも貴族であるだけマシだったのに……これが俺への罰か
