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学園祭があります

「十一位でした。せっかく教えていただいたのに」


 セイラは下を向いて顔を上げやしない


「惜しかったな、テストの答案を見せてみろ。次に繋げよう……」


 カバンから綺麗に揃えてあるテストの答案を出してきた。

 一番初めに教えた数学は九十九点だった。







「……オイ、名前が書いてないじゃないか! 名前って書かないとマイナスになるんだな……知らなかったよ」


「ぐすっ。言わないでください。ちゃんと名前を書いていたら十位内だったのに……悔しい」



 涙を浮かべながら悔しがるほどのことか?凡ミスが多いとは思っていたが、名前とは……





「問題を見たときに、ウィルベルト様に教えてもらったところが出て、嬉しくて解いていたら、名前を書くのを忘れてしまって……」


 テスト中に私のことを思い出してくれたのか……それはそれで嬉しい





「なんだ? ウィルベルト・オリバス女の子を泣かせているのか?」



「先生、違います。ウィルベルト様に泣かされたのではなくて、ぐすっ。テストの結果が悔しくて……」


「そういえばセイラ嬢、成績が上がったな。凄いぞ! よく頑張ったな」


「ありがとうございます」


「で、なんで泣かした?」






「誤解があるようですけど、彼女が数学のテストに名前を書くのを忘れて九十九点だったんですよ。それさえなければ十位以内に入れて、彼女のお兄さんからご褒美を買って貰えたそうですよ」




「それくらい買って貰えよ……ケチだなあの男は」


「お兄様は買ってくれると言ったんですけど、断りました。約束と違いますから。でもお小遣いはアップします」



「そうか。それなら次も頑張れよ、ウィルベルト・オリバス疑って悪かったな。じゃあな」





 教師は帰って行った。セイラのお兄さんの友人だと言っていたから、セイラを気にかけているようだった。



「ところで何を買ってもらう予定だったんだ? まだ内緒か?」


「……髪飾りです。フローラ様がいつも素敵な物を着けていて、私も欲しくなって」




 セイラはよくリボンを着けている。似合っていると思うんだけど……。今日髪を束ねている水色のリボンも可愛らしいが、セイラ的には髪飾りが欲しいのか……。


 そう言えば、アルヴィエラ侯爵令嬢はどんな髪飾りを着けていたか……? 全く記憶にない


******



 テストが終わったら次は学園祭だ。周りが何やら騒がしい





「君のクラスは何かするの?」



「はい。手作りの小物を作って販売します。売上を孤児院や教会に寄付するみたいです」



 貴族の子女の手作り物は人気があるし、売り上げも毎年良くそして好評だと言う



「何を作るんだ?」



「ハンカチに刺繍して出そうと思います。ハンカチは人気があると聞いたので、売れ残ることはないかと思って」



「君が作る物はきっと手間がかかっていて凄いんだろうね」



「人と比べた事がないので分かりません」



「いつも自分で刺繍するのか?」



「はい。侍女のリサが凄く上手で教えてもらったんです! リサは教えるのも上手なんです」




 握りしめていたハンカチを見せてきた



「こんな感じです。これは中々上手く出来たと思います」




 ラベンダーの刺繍が施してあった……やっぱり上手いと言うか、緻密


「……凄いな。なんでも出来るんだな、尊敬するよ」


「単なる手慰みです。なんせ田舎なもので作るしか無かったので……王都に住んでいればすぐに購入できるのでしょうけど」





「……その考えは間違いではないが、好きではない」



 レオ・ファーノンを思い出してしまった!



「勉強を教えてあげた貸しを返してもらおう」



「ハイ……お小遣いは上がりましたが……」


 おい何を考えた……?!



「君に金を強請るわけないだろ! 私にも何か作ってくれ。次のテストも教えてやるから」




「そんなものでいいんですか? 何がいいですか? 男の方だとハンカチかクッションカバーとか?」



「ハンカチにしてくれ」



「はい。分かりました。お安い御用です」





******



「レオ・ファーノン! おまえやれば出来るじゃないか! クラスで五位だぞ?」



「まぁ。謹慎中で反省した……」


 頭をガシガシと掻いた。この教師にはなんとなく世話になっている



「このまま問題がなければ、来年は三年だ。職員室でも話題に上がっていた。その調子で頑張れよ」


 ポンと肩を叩かれた


「ん。迷惑かけたから……成績でしか評価されないしな」


「はははっ。反省しろよ? じゃあな」


「悪かったよ」


「レオ・ファーノン、どこへ行くんだ?」



「図書館だよ。謹慎中に出された課題の本の続きが気になっている」



「えぇっーと、あっちから行ったらどうかな?」



「逆方向じゃねぇか!」



 何を言ってるんだ! あの教師は!







「ほら、やっぱり付き合っているんではなくて?」

「オリバス様の笑顔なんてそうそう見られませんもの」

「あの一年生の子が羨ましいですわね」




 ウィルベルト・オリバスの事か?視線の先を辿るとカフェテラスで、セイラと仲良さそうに話をしていた。




 久しぶりにセイラの笑顔を見た。

 ウィルベルト・オリバスと微笑み合う姿。無性に腹が立った

 


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