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謹慎があけるそうです


「セイラ何かあったか?」


 ユベールお兄様と晩餐を摂っていた時の話でした。


「えっ? どうして?」


 ウィルベルト様とお話が出来てスッキリした事、嬉しかった事。顔に出ていたのかもしれません。


「私の気のせいならそれで良い」


「変なの。お兄様」




 内心はドキドキしていた。学園の事を聞かれたらどうしようと思って。婚約破棄でお兄様にはたくさんご迷惑をおかけしたから、ウィルベルト様の事を知られたら余計に心配をかけてしまうもの。


 友達と言うわけでもなく、知り合いと言われると寂しい関係。




 お兄様は言わないけれど、きっとレオとの婚約破棄以降も私に隠していることがありそうだもの。



「もうすぐレオの謹慎が解ける。知っているよな」


「はい」



「他人だと思え。お前は優しいからレオと関わると同情するかもしれない」


「大丈夫だと思いますよ。でも心配してくださってありがとうございます。お兄様感謝しています、大好きですよ」


 にこりとお兄様に微笑んだ。


「思っていたより元気そうで安心したよ」




******



 お兄様の言葉通りにレオの謹慎は明けた。貴族の学園で謹慎一ヶ月、後ろ指をさされ厳しい目が向けられている。


 着崩していた制服はきちんと整え、寮の友人たちと一緒にいる姿を見た。





「セイラ嬢、何を見ているの?」


「あっ。おはようございます、オリバス様」



「私はウィルベルトと名乗った筈だが……誰に気を遣っている?」


「おはようございます、ウィルベルト様」


「おはよう。彼が気になるのか?」


 私が見ていた先に気がついたようでした。



「たまたま視界に入っただけです。でも元気そうで良かったとは思います」


 ウィルベルト様に隠してもしょうがないから素直に答えたら、ひょいと鞄を持たれた。



「自分で持ちますよ!」


「君に貸しを作っておかないと、また会えなくなってしまうからね」


 ウィルベルト様は笑いながらすたすたと歩き出した。


「もう! 何がお望みなんですか? 私はお小遣い制なんですからね」



「材料費は支払うよ。またランチを用意してくれる?」


「材料費はそんなにかかっていませんよ。野菜もうちで作っているものだし」


「美味しかったから、またご馳走してくれる?」



「あんなものでよければいつでもお作りします! 貸しなんて作らなくても良いのに」



 ウィルベルト様はそう言いながら教室まで送ってくれた。



 ウィルベルト様とお話をしていたら視界からレオが消えた。



******



 セイラがレオ・ファーノンを心配する気持ちは分からんでもない。ただ()()()()()()だけ。


 セイラを送って教室へ入り、席に着くとレオ・ファーノンが席に座り自習をしていた。



 謹慎中の課題の事を教師に聞いた。時間が経過するとともに点数は上がっている。課題の読書感想文は、的を射たものだったと。


 真面目で勉強が好きだった。と言っていたセイラによるレオ・ファーノン像を思い出した。才能があったのなら勿体ないな。



 そんな事を考えていたら、レオ・ファーノンと、目が合った。目を逸らすのも癪なので目を合わせたまま。


 やつれたな……と思った。前はもっと自信があったように見えたが、今はまだ落ち込んでいるように見えた。明るく見せていないと、心が折れそうになるのかもしれない。と思った。


 本当はセイラの事をどう思っているんだろうか? 婚約は白紙になって覆る事はない。


 チャイムが鳴ったので、時計を見る為にどちらともなく視線を逸らした。




 授業が終わり廊下を歩いていると、女子生徒に声を掛けられた。手紙を持っていた。


「読んでください」


 手紙が差し出された。受け取る気はなかった。今までもそうしてきたけど、セイラの事を考えるとこの場でちゃんと断るのが良い。人目はない。



「気持ちは嬉しいのだけれど、その手紙を受け取る事は出来ない」


 すまないと言う気持ちを全面に出して言った。



「受け取ってくださるだけでも……私と言う存在がいたと言う事を知ってもらいたいのです」


 結構強引だな……と思ったがその気持ちを傷つけてはいけない。


「気になっている子がいる。その子のためにも私は誤解をされたくない。申し訳ない」


 頭を下げて手紙を受け取れない事を謝罪した。



「そうですか。お時間を取らせてしまいました。失礼します」



 久しぶりの感覚だった。気持ちは有り難いのだが、断るのは結構辛い……




「さすがモテる男は断り方も素晴らしいんだな」


 レオ・ファーノンか……



「覗き見とは趣味が悪いね」


 人のことは言えないけれど……





「好きな子って言うのは、今朝一緒に居た一年の子か?」


「君には関係ないだろう? 私が誰を好きかなんて興味あるか?」


「……なんでセイラなんだ?」


 辛そうな顔をしていたが原因はお前だろうに……愛されている自信でもあるのか? ムカつく奴だ。



「真っ直ぐで、一生懸命で、家族思いで、芯がしっかりとしている所かな? あと、あの子が作るものに()()感動するんだ。話をしていても全く飽きない」


 にこりとレオ・ファーノンに微笑んだ。




「セイラは俺の婚約者だ」


「おっと! ()がついていない。間違いは正さないとね」



「お前がセイラとくっついたとしても、俺のお古だぞ?」


「はっはっは! 面白いなレオ・ファーノン。セイラは物ではない! 心がある人間だ」


 指をレオ・ファーノンの心臓に突き立てた、まるで挑発するように!


()()()は黙っていろ」




 レオ・ファーノンを睨みつけてこの場を去った。あいつセイラの事が好きだったのか……もう遅い。







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