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大騒動です


「レオとの婚約は白紙に戻す。こちらから婚約破棄を申し出た」




 帰るなりお兄様がそう仰いました。何も言えずに黙ってしまいました。




「学生の身分でカジノに出入りをするなんて呆れてものが言えない。成績も良くないと言うじゃないか。課題は出さない、遅刻はする、セイラがいるのに他の令嬢と仲良くしているのも気に入らなかった。セイラにレオは相応しくない」



 お兄様は落ち着いた様子でお話をされました。



「はい」


 


「セイラの気持ちを聞かせてもらおうか。レオとこのまま婚約をして将来は変わらず結婚したいと思うか?」




「……レオは王都に来てから変わりました。今のままのレオとは結婚したくありません。レオは……将来が決まっているから私と結婚するしかないと言ったの。それがショックでした」



 溢れる涙は止まりません。私がいるからレオの将来が決まっている。自由がないと言われた事がショックでした。レオと将来は仲良く男爵領を守っていけると思っていたから。




「……レオは田舎をバカにするけれど、それでも認めてくれる大事な人たちが私にはいます。大事な領地を……故郷をバカにするようなレオを今は軽蔑しています」



 婚約は家と家の決め事。レオのことは嫌いになれないと思うし、お父様にファーノン家へ嫁げと言われたらそうする。でもお兄様は私が嫌だと言ったらきっと叶えてくださる。



「分かった。このことは私から話をする。セイラはもうレオと関わるな! もしレオから連絡があってもこちらで処理をする。私たちが学園に通っているのは何のためだ? 自分の為だけではなく、将来領地を継ぎ領地や領民を守る為だ。領民が収めてくれた税金があるから、私たちは過ごせるんだ。レオが大人になり自分の稼ぎで遊んでいるのなら何も言わない。しかし今は学生だ、学生の本分を忘れてカジノに通うなんて言語道断!」



「はい、私もそう思います」



「そう言う事で、私はレオを庇うつもりは全くない。屋敷に来ても入れないように厳しく言っておく。セイラとレオの婚約は一部の人間しか知らない。レオは隠しているんだろ? 今になってみればそれで良かったと思っている」


「レオとちゃんと話し合わなかった私も悪かったと思います」


 話をしようと思って、喧嘩して……そのまま。



「その件だが、手紙を何度も送っていたが返事はなかったそうだな。おばさんも心配していたくらいだ。セイラからは連絡を取ろうと思っていたのだからそこは気にするな」



「お兄様……私がレオの生活態度を正せなかったのも原因です。レオが違う人に思えて、それを認めたくなかったの。学園でも話しかける勇気がなくて目を逸らしました」



「レオは精神的に子供なんだ。今が楽しければ良いと言うものではない。貴族しかいないこの学園は、後の社交にも大いに関わってくる。噂は巡るのが早い。学園では縦や横のつながりを通じて将来に備える所なんだ」




「はい」


「セイラの友達はうちが田舎の子爵家だからと言ってバカにしたか?」



「いいえ。はじめは自分自身が卑屈になっていたところもありましたが、フローラ様は……私の事を尊敬すると仰って、お互い認め合って仲良くなりたいと言ってくださりました」


 フローラ様のおかげで自信を持つ事が出来た。身分が高いのにそんな事を感じさせないほど仲良くしてくれる。


「良い友達が出来たな」


「はい」




「甘いことだけを信じ辛い事には目を背ける。後回しにして良いことなんて一つもない。子供でもわかる事だ。レオは分かっていると思っていたよ。残念だ」




 何も言えませんでした。お兄様の仰る事は昔から両親に言われていた事です。



「それに! セイラがいるのに他の女と遊びに行くなんて……許せん! リオネルに学園のことを聞こうとしても、私はレオの保護者ではないから言えないと言った! 友人の頼みでもそれは聞けないと言いやがった! あいつ……職務を全うしやがって……頭のかたいやつだ!」



 先生……お兄様が無理を言ってすみませんでした。でも先生が言っていないのなら、どこでレオの話を聞いてきたんだろう……



「もし、レオがセイラに何かしてきた場合はすぐにリオネルに言え! 学園内のことはあいつが相談にのってくれる」


「はい」







 その後レオのお父様が王都へ来て、レオと私の婚約を白紙にした事を伝えたそうです。レオがどう返事をしたかは分かりません。


 おじさまは私に謝ってくれました。お兄様は、レオに学園でも今まで通り私に近寄らないよう念を押すようにと言っていました。





 お父様はとても怒っていらっしゃったけれど、ファーノン男爵領とは領地が隣同士で、これからも付き合いをしていかなければならない為に、あまり騒動を大きくしたくないと仰いました。


 もちろん私の気持ちを慮ってくださりますが、ファーノン男爵に無理な要求をする事はしませんでした。無理な要求をすると、ファーノン男爵家だけではなく領民を苦しめる事になるからだと言いました。



 それでも婚約破棄の慰謝料だけは受け取ったとの事です。


 



 私たちの婚約は一部の人にしか知られていませんでしたので、穏便に済ませることが出来たようです。





 婚約破棄は思っていたよりも早く受理されていました。お兄様と話をしてからたった数日の事でした。





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