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正体は学園の有名人でした


 ハンカチを借りたウィルベルト様は一つ上の学年の有名人で、頭脳明晰・容姿端麗・伯爵家の嫡男ウィルベルト・オリバス様でした。


 艶やかな黒髪に、まるで水晶のように美しい黄金の瞳……なんで気がつかなかったのだろう。

 お茶会でも話題に上がっていたのに!


 そんな方にハンカチをお借りしていたとは……お礼にクッキーを焼いて来たけれど失礼なのかもしれない。


 フローラ様とのランチをお断りして、先日のガゼボを目指した。


「確か、ここが最短ルートのはず……」


 ガサガサと植木の間を抜けると目的地へと到着した。葉っぱが擦れる音に気が付いたのか、ウィルベルト様は私に気がつきました。



「なんだ、道を覚えていたのか?」


 長い足を組みこちらに気がつくと、読んでいた本をパタンと閉じました。


「はい、先日はありがとうございました」

 頭を下げました。


「別に良かったのに」


「いえ、そう言うわけには……」


「いつまで立っているつもり? 座れば?」


「良いんですか?」


 頷かれたので、ベンチに腰をかけました。


「お借りしたハンカチです」


 そっと手渡した。


「律儀だね、セイラ嬢は」

 ハンカチをラッピングをした包みをまじまじと見ていました。


「あの、お礼と言ってはなんですが、これも」


 おずおずとクッキーを差し出した。フローラ様も気に入ってくださったローズマリーとバジルのクッキー。甘くないから男の人でも良いかなと思い、作ったが断られたら捨てようと思う。


「良い香りがする、何?」


「クッキーです。ハーブを使った……私が作ったものなので、嫌なら捨ててください」


「へー。変わってるね」

 包みを開けてウィルベルト様は一枚口に入れた。



「うまい……甘くないから丁度いい」


「あの、こんな事を言うのはおかしいですけど、見ず知らずの女が作ったものを躊躇いもなく食べるのはどうかと……」


「知らない子ではないし、セイラ嬢は変なもの入れないだろ? なんとなく勘だけど」


「あと、私とても失礼なことを…ウィ、いえ、あなたがオリバス様だとは知らなくて、先日は」


「良いよ畏まらなくても、学園内は身分は関係ない、セイラ嬢も同じ貴族仲間だろ?」


「いえ、でもですね」


「私はセイラ嬢に、ウィルベルトとしか名乗ってないよ、だからそう呼んでくれ」


「……はい」



 ふとウィルベルト様の持っている本が目に入った。



「あ、この本……」



「ん? これか? 隣国出版の本だ。何度も読んでいるんだけど、面白くてさ。興味があるのか?」



「はい! この作者の方の本は好きで、でもこの題名は初めて見ました」



「おっ! 目が高いな……初版本は実は題名が違うんだ、読んでみるか?」



「良いんですか? お借りしても」


 嬉しくて顔が綻ぶのが自分でも分かった。



「もちろん、この作品の良さを分かち合いたいからね」


 ほら。と言って本を差し出されたので、両手で受け取った。


「大事に読ませて貰います! ありがとうございますウィルベルト様」



 ******



 教室に戻るとフローラ様に声をかけられた。


「セイラ様、何かいいことでもありましたの? あら、髪の毛に葉っぱが付いてますわよ」



 あの道は最短ルートだけど葉っぱが付くのが悩みの種だった。これから行く時は鏡を持って行こうと決めた。



 ウィルベルト様の噂を聞く限り、あまり人と馴れ合わない孤高な存在だと聞いた。


 実際はとても話しやすくて、優しい方。そしてクッキーを口にしてくれたことが嬉しかった。



「ありがとうございますフローラ様」


 髪に付いた葉っぱを取って貰いました。



「セイラ様、よろしければ街へお買い物へ行きませんか? 外国の限定ショップがオープンしているそうなの」



「はい! 興味があります。行きたいです」



「良かった! 明日一緒に行きましょう。うちの馬車で帰りはお送りするから、おうちの方に言っておいて下さいね」



 街からはうちの屋敷はほど近い、フローラ様のお屋敷はもう少し先の一等地にあるので、回り道になることはないと言うことですが……


「申し訳ございません。気を遣っていただいて」



「目的地は一緒で、セイラ様の屋敷は帰り道ですもの。それにわたくしがセイラ様とお出かけをしたかっただけなんですもの」




 お兄様にお出かけの許可を取らなくてはいけませんね。お小遣いも貰えたら良いな。


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