セイラを見た。人気があるようだ
「レオ~明日の休みは街で買い物に付き合ってくれない?」
アイリに誘われた。
「いや……流石にテストが近いから勉強するよ。悪いな」
「えぇぇー。面白くないのぉ。レオと居たいのにぃ!」
そう言って胸を押し付けて来るアイリ。
「あっ! レオ~今サーカスが来てるでしょ? 一緒に行かない?」
「いまは私とレオの時間なんだけど!」
声をかけられたのは違う女生徒だった。
「良いじゃない、ね! 遊ぼ」
もう一方の腕に胸を押し付けられた。田舎にいる時は同世代の女の子はそんなにいなかったし、セイラがいたからちょっかいをかけられる事も無かったから、初めは驚いた。
「レオといたら自慢できるんだもん。イケメンだし、目立つ髪の毛の色だし、優しいし!」
面と向かって褒められて悪い気はしなかった。
「あれ? あの子」
「ん?」
アイリが指差す方に視線を向けるとセイラがいた。隣は友達か? 見るからに上位貴族の令嬢と言う感じだ。
「あのミルクティーブラウンのストレートヘアーの子!」
「あ、あぁ、あの子がどうした?」
「クラスの男子が言っていたけど、人気があるんだってー」
「へぇ……そうなのか?」
「清楚で可憐で可愛いって言ってた。あの子に告白した子もいるんだって」
「……なるほど」
「名前はセイラとか言ってたけど、なんか聞いたことあるような、」
目線を上に考える仕草を見せるアイリ。
「んー。思い出せない……ねぇレオもセイラちゃんみたいなタイプが好き?」
「ちょっと! アイリ! レオは私が好きなんでしょ?」
体をさらに押し付けられた……弱った。
「おい! ファーノン! 課題はどうなっている、期限は明日までだぞ! 提出しない場合は親御さんに連絡を入れるからな!」
後ろの窓から声が聞こえて振り向くとそこには教師がいた。窓枠に両手をついて顔だけを出している。
この教師はユベール兄さんの友人だから、面倒くさい。
「明日までには提出するよ」
「それなら今日は解散だな。おまえたちもベタベタとファーノンに付き纏ってないで、テスト勉強をしろ!」
「はーい。リオネル先生は厳しいわね」
「早く行け! こいつに用事がある」
「おまえの婚約者がそんな姿を見たら悲しむだろう。良い加減にしろよ! どこに不満があるんだよ、良い子じゃないか」
「言われなくても知ってるよ」
「じゃあ、話し合うなりなんなりしろ。後悔するぞ! あの子はモテる」
「はぁ?」
「ああいうタイプは男が放っておく訳がない」
「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女の方が目につくだろう?」
「おまえ、まだ分かってないな……清潔感があって良いんだろ? 香水より石鹸の香りの方が落ち着く、それと一緒だ」
「モテるって言っても、婚約者がいるだろ?」
「婚約者の有無を濁していたぞ?」
「なんで知ってるんだよ!」
「あの子が友達と話している時にその場に居た。おまえも彼女たちに言ってないだろう?」
「セイラの事を知られたらセイラが嫌がらせを受けるかもしれないだろ……」
「それを守ってやるのがおまえだと思うけど? それに逆にお前が男子生徒から嫌がらせされんじゃないか?」
******
寮に帰り、まずは課題に取り掛かる。はぁしばらく勉強を疎かにしていたから、復習からしなくてはならない。
今日は徹夜になりそうだ。
やっとの思いで、なんとか課題を終わらせた。やり続けると思っていた以上に面白かった……
いつもよりだいぶ早い時間に食堂へ行くと、友人が既に朝食を取っていた。
「よぉ、おはよう」
「レオ珍しいな、こんなに早い時間に」
素っ気ない態度が丸わかりだ。まだ根に持っているのか……
「課題を出してなかったから、徹夜で仕上げた」
「遊んでばかりいないで真面目に勉強しろよ、一緒に進学したいからな」
「あぁ、悪いな心配かけた」
なんだかんだで心配をしてくれているようだ。
「その調子でセイラちゃんにも向き合えよ」
またセイラの話か……。周りがうるさいんだけど、言われてみるとその通りだった。朝のせいか頭が冴えていた。
「テストが終わったら、セイラに会いに行くよ」
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