-未来にありうるかもしれない、戦争の話-
はじめてです。
おてやわらかに。
「__っ」
とにかく前へ。逃げなければ。
妙に無機質な通路を駆け抜ける。絶え間なく鳴り響く銃声。俺は今、敵国のアンドロイドに追われている。何でか?さあな、外で遊びたかっただけだ。壁に当たって跳ねた銃弾をギリギリかわし、角を右へと曲がる。適当な部屋でもあれば入って隠れたいところだが、何もない。このままでは殺されてしまう。どうする__
終わりか、と思ったその時、俺の前に巨大な扉があった。
出口だろうか、迷わず飛び込んだ。
「おらァっ_」
あったのは、まるで別世界。青と金の光に包まれた、歯車の組み交う部屋。奥には大きなカプセルのようなものがある。
あっけにとられていると、扉が爆発音とともにふきとんだ。
「ニンゲン、ハッケン、オイツメマシタ」
奴らがはいってきた。急いで奥まで退く。
「__、_」
「イエス、マスター。シャサツ、シマス」
何か指示を受け取ったのか、目の色を変え、四方に銃撃を放ってきた。
今度こそ本当に終わりなのか_
俺は諦め、腰が抜けて座り込んでしまった。すると、上からかちり、と音がした。
なんだ?と上を見上げると、カプセルが開いていた。そして、中に裸の少女。
「うぇっ?!?!?!」
「異物ヲ感知。排除します」
青かった目を赤く見開き、右手を前にかざした少女がそう呟くと、大量にいたアンドロイドが爆発した。
あまりの一瞬の出来事に口が塞がらないままでいると
「貴方ガ私ノマスターですか?」
「ひょぉっ?!?!」
裸のままの少女が上から話しかけてきた。恐る恐る立ち上がってみる。
真っ白で無垢なその体躯には無数の管が繋がっていた。
「ますたー?かどうかは分からないけど…」
少女はおや?という顔をする。
「とりあえず、助けてくれてありがとう」
お礼はしなきゃな、と頭を下げる。
すると、彼女はピンときたような顔になり
「私ハ貴方ヲ助けた!それなら貴方ハ私ノマスターです!!」
と嬉しそうに飛びついてきた。
「は?!」
「マスター、私ハ、ロド、ト言います!よろしくお願いしますね!」
満面の笑みでロドと名乗った少女に何だか絆されてしまった俺は、彼女の頭を撫でながら言った。
「俺は煤渡理人、リヒトでいいよ」
こうして、俺とロドは出会ったのだ。
*
ある時、進みに進んでしまった世界は間違いを冒した。各国自慢の機械人形を作成し彼らに戦争をさせ始めたのだ。その『大戦』はいつの間にか終わったとされているが、人間の死者は出ない戦争という点に目をつけ、首脳達はさらに研究を進めた。そうして行われた戦争ではアンドロイドの暴走により世界人口の9割が死んだ。残ったのはアンドロイドの研究者たちと運の良かった俺たち。
たくさんの人間が死んだというのに、それで終わらなかった。そうして、今に至る。
*
国立中央学園都市。日本に唯一存在する都市であり、生き残った者は全員ここで暮らしている。
外から見れば四角い巨大な箱である。ここから見える空というのはプロジェクションマッピングであり、雨なども人工のものである。
戦争が始まってから首脳達の目的はどれだけ敵国の人間を消せるかという、正気な沙汰じゃない方へ向いてしまった。なので、国の残機である俺らは大事に大事に箱の中に入れられているのである。
そうして代わりに戦うのは、アンドロイド。戦争の1つの原因とされるこいつらが戦う。
人間1人に対して1体アンドロイドを護衛として持つのが当たり前になった世界、俺は持たずにいた。_のだが
「マスターリヒト!ここハどこですか?!」
冒頭で話した通り、ロドというアンドロイドを手に入れた。_いや、ただ付いてきているだけだから手に入れたとは言わないんだろうか。
「ここは学校。俺のことはリヒトでいいの、ちょっと静かに…」
「マスターリヒト!凄いです!電車ガ空を!」
構わず騒ぐロド。電車が空路になったのは最近のことじゃないが、あんなところにいたんじゃ知る由もないか、とため息をつく。
カツカツと足音が近づいてくる。どんっ、と1リットルの牛乳を俺の机に叩きつけると、怒ったような口調で話しかけてくる。
「ちょっとあんた!壁から出たんだって?!何考えてんの死にたいの?!」
高等部生徒会会長の尾神真尋である。俺の昨日の行動について叱りに来たようだ。
「マヒロ様、あまりそう大きな声をお出しになると品格を疑われてしまいます」
隣で囁くのは尾神真尋のアンドロイドだろう。
「死にに行ったんじゃない、久々に外で遊びたかっただけですよ」
俺がすみませんでした、と素直に謝ると納得いかないとでもいうような顔をした。
「それに、あんたアンドロイド持ってたっけ?あんなに嫌いだったくせに」
牛乳をごくごく飲みながら怪訝そうに聞いてくる。
「ああ、そうだったな」
適当に流すと、怪しみながらも
「ふーん、ま、どうでもいいけど」
と去っていった。すれ違う生徒には「ごきげんよう」などと愛想を振りまいて手を振っている。
尾神真尋が俺には何故あんな態度なのか、それは真尋と俺は幼なじみだからだ。学校では内緒!と口封じされているので誰にも言えていないがただの猫かぶり女である。
「マスターロド、先程ノ方ハ何方ですか?」
「気にしなくていいよ。授業始まるからあっちの教室いってろ」
「かしこまりました!」
走っていく彼女を横目にまたひとつため息をついた。
*
放課後、ロドとともに帰宅する。
「マスターリヒト、たくさんアンドロイドノ子ガいました!」
きゃっきゃと今日の出来事を話すロドに微笑みながら、ふと真尋の言葉が蘇る。
_「あんたアンドロイド持ってたっけ?あんなに嫌いだったくせに」
そう、俺はアンドロイドが嫌いだ。だから国からの配給で貰えるアンドロイドも拒否した。周りがアンドロイドを貰って喜ぶ姿に怒りを覚えたんだ。そいつらは、アンドロイドは、俺の家族を殺したんだ、って。今でもアンドロイドは嫌いだ。なのに、何故だろうか。ロドだけは違う。
「アンドロイドお友達作りたいのに、みんな私ヲ怖がります…どうして…」
いつの間にか泣きそうになっているロドの頭を撫でてやる。こいつも、アンドロイドなんだよな…。
「明日話しかけて見ろよ、案外出来るかもよ友達」
「マスターリヒトが言うなら!頑張ります!」
ぱぁっと明るくなった笑顔でおー!と腕を突き上げる。その姿を見て、やはりなぜか和んでしまうのだ。
アンドロイドなのに。そんな風に考えるのはしばらくやめにしておこう。
そうして、ロドと過ごす初めての日は終わったのだ。
*
ガラクタと化した最新鋭アンドロイドをかき分けながら進む人影が2つ。
煌びやかな部屋にふう、とため息を漏らしながら、2つの影は空となったカプセルへと近づく。
「まさか、こんなところに隠されていたとはね」
片方が呟く。その声には怒りと興奮が孕まれている。
「なんでもないただの地下水路。厳重に保管するのではなく生活に紛れ込ませるとは。淵道のしそうなことだ」
小馬鹿にするようにもう片方が言う。
影は、愛おしそうにカプセルを撫で
「『大戦を終結させた』とされる、最強のオートマタ…。必ず私のもとに…」
と妖しく笑ったのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございましたm(*_ _)m




