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第97話、エピローグ2、新たなる旅立ち


 カスティーゴから後方の城塞都市ヴォタ。第二の防衛線として、カスティーゴからの避難民や、王国からの増援が集まっていた。


 廃墟のカスティーゴを離れた俺たちは、ヴォタへ到着。その守備隊本部に赴いて、邪神塔ダンジョンの攻略とその消滅を報告した。


 冒険者ギルドのギルドマスター代理となっていたヴィックも証言したが、守備隊司令は邪神塔崩壊が信じられず、しばし呆然としていた。


 調査隊を送って調べるといい、というヴィックの提言に従い、守備隊司令はヴォタから斥候(せっこう)を出すと答えた。


 事実確認が取れ次第、王都へ報告。邪神塔攻略がわかれば、追ってその活躍を讃え、褒賞が出るだろうと言われた。


 褒賞ねぇ。何がもらえるんだろう? 例によって、その扱いについて揉める恐れのある莫大な財宝については伏せてある。


 さて、司令に報告を終えて、外に出れば、どこかで聞き耳を立てていたのか、カスティーゴの守備隊生き残りや冒険者、そして住人たちに取り囲まれた。


「邪神塔を陥落させたのか!」

「すげえ!」


 ヴォタの兵や住民らを巻き込んで大騒ぎとなった。そのままなし崩し的に戦勝会になり、昼間にも関わらず、飲めや歌えの大騒動。


 この辺りで邪神塔ダンジョンのことを知らない人間などいない。長年悩まされてきた問題が取り除かれたことで一般人を中心に喜びを爆発させたのだ。


 その戦いの中心となったクーカペンテ戦士団の面々は熱烈な歓迎を受け、俺はこっそり傍観者に――なれなかった。


「邪神塔攻略の立役者! かの大竜を二体も仕留めた英雄とは彼だ!」


 例によってクーカペンテ戦士団のユーゴが、周囲を見回して叫んだ。


 俺はお祭り騒ぎの中心に担ぎ上げられてしまった。若い冒険者や町娘たちが押し寄せ、次々に俺へ質問の嵐。ダンジョン攻略の様子や大竜との戦いなど、好奇心のまま話しかけられ、さすがに押され気味。


「彼女いますかー?」


 時々、関係ない質問が混じっていたり。若い娘たちの有名人を見るような目。戦士や若手冒険者たちの羨望の眼差し。いやもう、お腹いっぱい。


 そのまま夜まで続いたと思うが、幸いなのか残念なのか、俺の記憶は最後までない。というのも、ふだん以上に飲んだ影響で、覚えてないんだよね……。最後のほうは、かなりフワフワしていた。


 すっかり俺は有名人となった。邪神塔攻略の英雄だとか、至上最強の魔術師とか……まあ、見ていない人たちが、活躍を誇張解釈してくれたようだ。


 根っこの部分である、ダンジョン攻略に貢献したとか、大竜を仕留める一助になったとかは事実だから、大きく否定できなかったせいだけど。



  ・  ・  ・



「ジンの兄貴、お世話になりました!」


 ユーゴは背筋を伸ばして、礼をした。……体育会系のノリだよなぁ、と思う。


「兄貴がいなくちゃ、オレたちも生き残れませんでしたし、邪神塔の攻略もなかった」

「皆で頑張ったからな」


 俺が応えると、若き魔法戦士は手を差し出した。


「また、どこかで!」

「ああ、達者でな、戦友」


 別れの時。ヴィックたち、クーカペンテ戦士団は、邪神塔攻略の報告を兼ねて王都へ向かうという。

 俺たちは彼らを見送る。


「ご一緒できないのが残念です」


 騎士ガストンが、ユーゴに倣って握手を求めてくる。


「幸運をお祈りしています」

「なんじゃい、お前さんらも来ればいいのに」


 バンドレも、俺の手を力強く握ってきた。筋肉おじさん、加減しろ。


「お世話になりました。あなた方のことは生涯忘れません」


 ティシア副団長が、いつもの真面目な調子で言えば、俺は少しこそばゆかった。


 その後、次々に世話になったクーカペンテの戦士たちが、わざわざ俺やベルさん、エルティアナとそれぞれ握手したり、ハグしたりして別れを惜しんだ。


 魔法戦士のレーティア、ランベルト神父、僧侶のセラフィーナ、鬼亜人のリューゾウ、衛生兵のイルバ、弓使いのラーツェル、古参兵長のルバート……。


「ご武運を」

「あんたたちもな」


 一通り終わったと思ったら、最後は団長のヴィックが残っていた。


「……本当に、おれたちと来ないか?」

「考え中」


 俺とヴィックは握手を交わす。相当、未練があるようだな。


「団長として優秀な人材はスカウトする義務がある」

「それが組織ってものだもんな。……頑張って軍を編成してくれ」


 俺は小さく笑みを浮かべる。


「手が空いていたら、馳せ参じよう」

「今の言葉を忘れるなよ」


 兄弟、ありがとう――彼は小さくそう言って、別れの言葉とした。移動を始めるクーカペンテ戦士団。

 その背中に、俺は叫んだ。


「クーカペンテの友に幸運あれ!」

「さらばだ、友よ。いつかまた会おう!」


 ヴィックが手を振って応えた。



  ・  ・  ・



 ヴォタに滞在して、何をするにしても俺は注目の的だった。ランチをとれば居合わせた客から視線を浴びたり、声をかけられたり。


 俺は、ベルさん、そしてエルティアナと一緒にいた。


「……それで、ベルさんはこれからどうするんだい?」

「オレか?」

「言ったよな、俺が独り立ちできるまで面倒を見てやるってさ」


 契約して、互いに帝国の研究所から脱出。異世界で行くあてもない俺に、ベルさんが言ってくれた言葉。


「あんたから見てどうかな? 俺は、独り立ちできそうか?」

「そうさな……」


 すっと目を細め、遠くを見るベルさん。え、ちょっと、そこ考え込むところ? 大竜との戦いを生き延び、邪神塔の攻略でも十二分に活躍したと自負している。……死にかけはしたが、それは他の面々も同じことだ。


「正直、危なっかしい」


 ベルさんは腕を組んで考え込む。おぅ……意外と判定厳しいが、反論できないなぁ。この大魔王様の評価は信用している俺である。


「それとは別に、オレ様は今の生活が結構気に入っているんだ」


 はい? ちょっと予想外の発言。


「お前さんの行く末ってやつに興味もある。しばらく付き合ってやる」


 そいつは頼もしいお言葉。肩をすくめる俺に、ベルさんは「嬉しいだろ?」と威圧感たっぷりに言った。


「もちろんだとも……相棒」


 グータッチ。男同士の友情を確かめ、俺は視線をエルティアナに向けた。


「君は? どうする?」

「わたしは、あなたに救われてから、どこまでも一緒についていくと決めていますから」


 淡々と弓使いの少女は言った。


「もちろん、邪魔ならそれまでですが……」

「とんでもない。君にも何度も助けられた」


 邪神塔攻略の一助になったのは間違いない。決して目立つような手柄は浮かばない。だが、そのサポートに関して俺は大いに助けられたし、その活躍だって彼女や他の仲間たちがいたからこそだ。


「でも、いいのかい? 他にやりたいことがあるなら、恩を返すとか、そういうのに縛られなくてもいいけど――」

「あなたの役に立ちたいのです。わたしが、あなたと一緒にいたいのです」


 はっきりと、エルティアナは告げた。自分の意思をはっきりと表明したのだ。ベルさんが笑った。


「それがこの娘のやりたいことなんだとよ。一本取られたな、ジン」

「……確かに」


 やりたいことをやればいい。俺はそう思っている。意思は尊重する人間なんでね。


 面倒を見るといったんだ。君が俺のもとを離れる日が来るまで面倒見てやるさ。


 ゴブリンショックによって精神を壊され、人形のようだった彼女はもういない。ひとりの人間として、はっきりと道を見据えているのだ。


 偉いなぁ。……むしろ、これからどうするかについて悩んでいるのは、俺のほうじゃないか。


「じゃあ、これからもよろしく」

「はい」


 エルティアナは小さくほほ笑む。


 改めて、この三人で活動することを確認したが……さて。


「これからどうしようか?」


 お金は稼ぐ必要はない。ストレージにある俺たちの金を少しずつ、換金していけば多少の贅沢はできる。……ちなみに、一気に放出すると金の価値が下がってしまうので、ちまちまやっていくのがいい。


 当面の目標だった未制覇ダンジョンを攻略し、冒険者として名を馳せた。近いうちに王国中に俺たちの名が知れ渡るし、近隣諸国にも轟くかもしれない。おまけに大竜討伐者だし、これ以上することなんてあるのか、というレベルだ。


「ま、目標なんて、すぐに見つけなくてもいいだろう」


 ベルさんは酒を煽った。


「時間はたっぷりあるんだ。しばらくのんびり過ごしてもバチは当たらんと思うね」

「賛成です。邪神塔ではほとんど働き詰めでしたし」


 そうだよなぁ。最後なんてほとんど時間に追われて、ガンガン先に進んでいたし。


「ゆっくり見て回るってのも悪くないかもな」


 金もあるし、どこかで家を買うのもいいだろう。


 初めは異世界に召喚されて、先が見えなかった俺だけど、元の世界では得られなかった報酬を得て、かなり自由に過ごせる道を切り開くことができた。


 のんびり異世界ライフってやつ、今ならできるんじゃないかな。そう思ったら、楽しくなってきた。




 第一部 完

第一部、最終話です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました! まだまだジンとベルさんの旅は続くのですが、第二部以降の投稿は現在未定でございます。

ただ、いつもの如く、ランキング上位に上がるようなことがあれば、制作が早まるかもしれません(笑)


本編である『英雄魔術師はのんびり暮らしたい』のほうは更新を続けていきますので、そちらもお楽しみください。


それと、新作を投稿いたしました。

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パワー系勇者が、生き物もしまえるチートなアイテムボックスを活用して行商をやっていくお話です。

こちらもどうぞ、よろしくお願いいたします。



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新作始まりました
こちらもよろしくどうぞ。小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい』
TOブックス様から書籍、第一巻発売中! どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[一言] とりあえずエピソード1読了 本編へ行きます。
[一言] 面白かった! 早く続きが読みたいです
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