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第68話、作ろう、大竜武具!


 ベルさんの指摘を受け、クーカペンテ戦士団では魔力眼の習得が行われた。


 団に所属する魔術師のケンドリック氏は、魔力眼を使える術者だった。


 が、その習得は高位の魔術師でなければ難しいという先入観をお持ちだったので、ベルさんの指導の場からは排除された。


 ベルさんにしても、教えてやるのはいいが、全部面倒は見切れないと、半ば俺に役割を振ってきたけどな。


 初めから魔法は使えないから、と言う者についても除外。こちとらあまり長い時間を使って教育する気もないのだ。先入観や常識を捨ててかかる、積極的な希望者のみに教えた。


 ヴィックやティシア、ユーゴらが指導を受けたが、クーカペンテ戦士団だけでなく、エルティアナも魔力眼の習得に参加した。


 ウェポンレイダーの潜伏する魔法を見破れる、という話をきいて、俺を積極的にガードしてくれるつもりらしい。


 健気だね、とはベルさんのコメント。


 さて、そのウェポンレイダーだが、相変わらず正体不明。ただし透明化で隠れていても魔力眼で見ることができるなら、監視を怠らなければどこかでひっかかる。


 襲撃してくるのは希少武器を持っている時だから、その際、互いにカバーできるようにして、出てきたところを捕まえるなり返り討ちにするという案/策が考えられた。


「大竜の素材で、早々に武器を作って見せつけてやれば奴をおびき出すことができる」


 ヴィックのその案、反対するまでもなく皆、賛成した。


 だが問題は、大竜素材から武器などを作るのに時間がかかることだ。武具製作が数時間で終わるようなものではなく――。


「いや、可能だよ。魔法合成で作る魔法鍛冶ならね」


 などと言ったのは、リリ教授だった。そうでした。魔法具職人でもある彼女は、その魔法具を材料さえ揃っていれば、一日もかけずに作る。


 物作り妖精たちは、大体の品を半日以内で作り上げてしまう職人勢なのだ。


「どれ、素材さえあればアタシらが早々にこさえてやるが、どうするね……?」

「後顧の憂いを絶つためにも、さっさとウェポンレイダーの件は片付けたい」


 そんなわけで、ヴィックたちは町の武器職人に製作を依頼する一方、俺は自分らの取り分で大竜の素材の武具を作り、ウェポンレイダーを釣るための準備にかかった。


 大地属性の大竜……武器――うーん。防具だと盾や鎧など、丈夫そうでしっくりくるんだがなぁ……。悩ましい。


「剣は駄目なのか? 爪や牙、角もあるが」


 教授の質問に、俺はイメージだと前置きした上で発言した。


「火属性のドラゴンとかだと、刃に炎をまとわせるとか想像ができるんですけど、大地属性っていうと、何か浮かびます?」


 せっかくの希少素材を使うからには、それなりに付加価値とか欲しいところだ。ただの硬い剣とかなら、大竜の素材でなくてもいい気がするし。


「……どうやら君は、大地属性の大竜の特性を知らないようだ」


 リリ教授は眼鏡のブリッジを持ち上げた。


「よろしい。君に大竜の素材の凄さを教えてやろう」

「お願いします」


 その手の知識は、残念ながら空想世界のものしかないから、実際にこの世界の住人による正しい知識のレクチャーはぜひ受けたい。


「大竜の爪と角には、岩を砂に変換する能力がある。つまり大地属性素材でできたゴーレムなどをいとも容易く裂いたり貫いたりできる……」


 え、それ、凄くない?


「ちなみに、この牙のような歯を、石でこすると……」


 試しにもった大竜の歯と岩の欠片。ゴリゴリとヤスリをかけてるみたい、と思ったその瞬間、岩の欠片がパキッと真っ二つに割れた。


「この通り、岩をカットできる」

「すげっ……!」


 たぶん、俺、目が点になってるだろうな。教授は続けた。


「ちなみに、大地属性の大竜の骨を加工して作ったハンマーは壊れないと、ドワーフどもが欲しがる逸品だったりする」


 ドワーフ……。この世界ではまだ接点はないが、遠巻きに見かけたことはある。背が低いががっちりした体躯を持つ亜人種族で、妖精族としてセンシュタール工房にいるノームに似た風貌を持っている。


 元の世界でのイメージとほぼ同じと思ってよい。パワーに優れる一方、手先が器用で、カスティーゴでもドワーフの鍛冶屋が何軒かあると耳にしている。


「たぶん、その職人たちに大竜の素材の武具製作をお願いしたら、金槌用の素材を求められる代わりに、かなり値引きして依頼を受けてくれるだろうね」


 リリ教授は楽しそうにそう言った。何故かノーム妖精たちも同意するようにコクコクと頷いていた。


「鱗を含めて、とても頑丈だからね。同じ大竜でなければ傷がつかない防具も作れるだろう」


 なるほどね、そりゃ冒険者ギルドが買い取りを申し出てくるわけだ。金に困っても、大竜素材を一個売るだけで結構な額が手に入るんじゃないかな。


「あと、大竜の血もあるだろう? あれも素材に染みこませば、魔法の触媒としてさらによくなる。魔法杖を作ろうか? そんじょそこらの杖より、格上の上級装備ができると思うよ」


 それは魔術師としては、ぜひともお願いしたい話だ。大竜の杖、とか、RPGだったら冒険後半の品になるのでは――。


「ただ、君のことだ。素材の効果を教えてやれば、奇想天外なものも思いつくんじゃないかね」


 教授は何かを期待するような目で、俺を見た。いや、そんなふうに思われてもね、そんなビックリなアイデアをポンポン出せるわけじゃないからね……。車は武具ではないので除外する。


 そんなわけで、いくつか案を出して、素材を使って何を作るか相談。


 まずは魔法杖。これまでは帝国魔術師から回収したやつか、あるいは何もなしで対応していた。魔器ファナ・キャハは、いざという時の切り札なので、普段から使える上級装備が欲しい。


 次、大竜の牙を使ったショートソードとダガー。


 ショートソードは、いわゆる元の世界でグラディウスと呼ばれた突き主体の片手用の軽量武器だ。ただし、岩をも両断する大竜の歯を加工しているから、そこそこ切断にも使えるし突きにも効果があるだろう。


 ダガーは武器はもちろん、道具としてその切断を活かして活用したい。


 一応、斧や戦斧も考えるが、たぶん俺はそうした大型武器は使わないだろうな。斧は片手用の小斧がいいかもしれない。


 次に防具。


 大竜の鱗と骨を使った盾――小型のバックラーと、大型の大型盾の二種類を用意。ま、小さいほうを普段使うんだろうけどね。大型盾は地面に突き刺して立てることができるようにする。障害物代わりだね。こっちはストレージに保管だ。


 鎧一式。俺とエルティアナ用。ただ俺たちは基本重装備はしないから、大竜の鱗の防御力を信じた軽量の鎧とする。レザーアーマーに竜の鱗を貼り付けた感じだね。


 なお、大竜の血液を鱗に染みこませたことで、燃えにくく魔法にも強い耐性がさらに強化されるという。


 この大竜の血液を利用して、マントも新調することにした。大竜の素材のマントは全体的に緑がかるものになるらしい。


 双頭竜の素材の武具も結構よかったけど、大竜の装備一式を身につけたら、名実ともに上級冒険者とか魔術師らしくなるだろうと思える。何より気分が違うだろうね。


 ということで、センシュタール工房の妖精たちに製作を依頼。……教授からは、普通だ、と何故か不満顔をされた。


 ともあれ、大竜装備ができるまでは、適当にダンジョン攻略を進めておこう。

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