第27話、合成魔法とか教わってみた
武器とか防具の合成というのはゲーム脳であるが、こういうのができたら、俺のオリジナル武具とか作れるようになるかもしれない。となれば、やるしかなかった。
難しい、と思ったら負け。俺は、リリから合成魔法を教わった。物を曲げるのはできたが、別のもの同士を結合させるのが、なかなかうまくいかなかった。
だが――
「君、中々やるね。人間にしては」
その口ぶりからすると、最低限、彼女のお眼鏡にかなっているようだった。こっちが失敗しても怒ることもなく、一緒に原因究明をしたりと、中々の研究者だった。
こっちもベルさんから、できないと思うのが魔法にとって大敵と教わっていたから、リリの指摘や教えを素直に聞き入れて、形にしていった。
「これね。中々、思ったように形にするのって難しいんだよ」
リリが、魔法具につける羽根飾りを合成魔法で作ろうとして難儀していた。
「イメージが足りないのか。ふむ、さてさて」
「画でも書きましょうか」
教えを受けている都合上、敬語になる俺。それはともかく、イメージを形にしてみるのって造形や創造には案外馬鹿にできないものである。学生時代に小説を書いていた時もそうだし、ガキの頃にブロック遊びしていた時もそうだけど、頭の中のイメージだけでやるより、何らかの形にしておいたほうが完成させられる率が高かった。
書くものあります? と聞いたら、妖精さんが持ってきてくれた。試しに紙に、サラサラと羽根飾りを描いてやる。
「君、描くのうまいね」
「昔、色々描いていたので」
褒められてしまい恐縮。過去、イラストは嗜んだ口である。
早速、俺が描いた羽根飾りイラストを見ながら、リリは手元のミスリルに魔法を施していく。形がみるみる、羽根飾りの形になっていく。イラストを見比べて、ディテールを加えていく。……目を閉じて集中している俺と違い、リリは双方見比べながら作業をしていた。さすが職人。
作業を終えて、リリができた羽根飾りを披露した。
「どうだろうか?」
おぉー、と妖精たちから拍手があがった。……ここ、そういうところなの? 俺もつられるように拍手しておく。
「いやいや。まさか画にしたら、こうもうまくいくとはね。……アタシのイメージ力も案外大したことなかったな」
リリは満足げに頷いていた。失敗作の例を見るに、形にするのが苦手なのだろう。
「どうだ、職人衆。これならアタシの造形でも売り物になるだろうか?」
妖精たちは肩をすくめ、首を横に振った。え、結構、よくできていると思うんだけど。
「うーん、まあ、君たちには負けるよ。もう少し修練が必要ということだな」
さっぱりとリリは頷いた。俺にウインクしながら、リリは言った。
「魔法具もそうだけど、ここの品の形を整えたり、作ったりは妖精たちがやっているんだ」
「なるほど」
ペガサス飾りをつけようとしてコケシ兜にしちゃう人だもんな。そのリリは相変わらず表情に乏しいようにみえて、しかし機嫌がよさそうだった。
「君のおかげで創作意欲が沸いてきたよ。何を作ろうか――」
「だったら――」
ガラクタを玩んでいたベルさんが口を挟んだ。
「前々からジンが魔法武具を欲しがっていたからな。作ってやったらどうだ?」
「ほう……」
「ベルさん、リリ師匠は魔法具職人で、武具を作る職人じゃないんだぞ」
「いや、そうでもない。この工房には、見てのとおり職人たちがいる」
妖精たちが一斉に胸を張った。ベルさんは鼻で笑う。
「そうかい? その割には、町での評判はよくないみたいだが? 何でも頼んだら素材ごと駄目にしたとか」
「あれは頼みにくる奴の態度が悪かったからだ」
わざとかよ! 気持ちはわからなくはないが、それはそれでどうなんだろう?
ノームじみた老妖精が、リリの足を肘でつついた。何か言いたげな態度だが、さっきから見てても「おおー」とかしか言わないよなこの人ら。
「確かに、気がのらなかったのもある。あれこれ注文が多いとイマイチやる気が出ないんだよ」
言い訳するようにリリは、老妖精に言った。なるほどね、こりゃ仕事頼みにくいわ。腕がよかったとしても、気分で失敗もありますじゃなぁ……。
「なに、うちの職人たちは優秀だ。心配はいらない」
リリは断言した。
「今日は気分がいいからね。どれ、面白い君に免じて話を聞こうじゃないか。せっかく、この工房に足を運んでくれたわけだからね」
・ ・ ・
ベルさんが口を挟んだおかげで、俺はここへ足を運んだ目的、双頭竜の素材を使った防具を作れないか相談した。
異空間収納から、双頭竜の鱗を出したら、妖精たちから「おおっー」と声が上がった。
リリも眼鏡をかけた目でじっくりと検分。
「ほう、凄いね。これがあの噂に名高い双頭竜の素材かー」
いいね、とリリが言えば、妖精たちもそれぞれ鱗やら牙を手にとって頷いている。
「で、どんなものをご所望かな? 防具と言っていたね」
「やっぱり胴体を守る鎧が欲しいですね」
ただ基本、後方で魔法を使う魔術師だから、あまり重いのも困る。
「後は、とっさに腕でガードしちゃうと思うので、腕を守るのも欲しいです」
「なるほどなるほど……」
リリが何やらニヤニヤしている。ニコニコではなくニヤニヤになってしまうのは、普段の乏しい表情のせいか。そうこうしているうちに、妖精たちが俺の体中のサイズの採寸をした。
ちょろちょろと燐光をまき散らしてフェアリーが視界をよぎったり、小人が肩や背中を移動したりと……お前らなぁ! サイズをみてるのはわかるけどさ!
「こちらで作っておこう。なに明日の朝に来れば、君の防具を渡せると思う」
「明日ですか! 仕事早いですが、防具ってそんな簡単にできるものなんですか?」
いまさらだが、数日でできるような代物ではないと思うんだが……。それをたった一日で?
「君、妖精さんたちの力を侮ってはいけないよ。彼らにかかれば、一日で仕上げてくれるよ。ああ、もちろん、素材があればね」
……そんなおとぎ話を聞いたことがあるような。まあ、できるというならお任せしよう。
「お代はいくらくらいになりますか?」
もちろん、タダということはあるまい。そう思って聞いてみたら、リリは少し考えす仕草をとった。
「そうだな。双頭竜の素材があれば、もっとくれ」
「わかりました」
希少素材は売ればお金になるし、そのまま制作にも使える。普通にお金で払うよりは、そちらのほうが彼女らには都合がいいのだろう。
素材自体、高額で売れるが、武具を制作、購入にも結構なお値段がするという。適正かどうかはわからないが、俺は納得したからそれでいいや。
「ああ、それと、君は面白いから、今後もちょくちょくこっちに顔を出してくれ。合成魔法の続きも教えてやるから」
「お願いします」
合成魔法については、いつか作るかもしれないオリジナル武具とかに役立つだろう。それにリリは、魔法具職人というし、できればそちらのほうでもお知恵をお借りしたいし、技術を習得したいと思う。
……実は、あったらいいな魔法具のアイデアが、いくつかあるのだ。
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