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指切り。嘘ついたら針千本  作者: ☆夢愛
9/9

終幕 ゲームセット

 ────朝日が昇る……リビングのスー○ードライを照らし影は伸びる──。



 活気が戻ったこの町は、 今までが嘘の様に話題として消えて無くなっていた。

 ロンドーア城跡地は広大な墓地へと変わり、 死んだ人を弔う事になり人々はもうそこへ入ろうなどと考えてはいない。


 たった1つだけ完全に変わった事と言えば、 やはり城に関する事。

 もう、 誰も呪いや悪霊と言ったものに殺される事は無くなった──。


『ああああああああああああああああ!!! 』


『きっと……この遊びは終わりだよ……行こう、 流枷……』


 私と箕輪流枷は互いに心臓を貫きそこから命が消えていった。

 皆の涙に包まれた私の眼に映ってたのは、 流枷ただ1人だった……独りでは逝かせない、 もう2度と彼女に寂しい思いなんてさせたくなかった──。

 そして私は3度目の死を迎えた。


「おっす美緒、 元気か? 」


「尚吾、 あんたバカでしょ? 」


 尚吾と美緒はいつも通り道で会い共に登校する……ただそこには福瀬干露の姿は見当たらなかった。

 美緒は『バカ』と言ったのはその事で、 姉の死を目の当たりにしたのに元気なわけが無い。


 2人が校門へとやって来ると、 門側に待ち構えてた様に長身の男が寄りかかっていた。


「秀……」


「やはり、 干露は居ない……か」


 斎藤秀もまた干露が居なくなったのを確かめた様だ、 勿論呪いと共に死んだ干露が生き返れるとも限らない。

 それによく3度目の正直と言う言葉がある、 そう考えると彼女は本当に消えたのかも知れない。


 氷室恵夢、 福瀬干露。

 校内でもそこそこ有名な彼女達が死んだとなり、 暫くは学校中が騒がしかったが今はもう忘れ去られた様に鎮まっている、 話題にもならない。

 人が死んで悲しまれるのは一時の間、 大体はいつか忘れられてしまう。

 悲しい現実である。


「秀、 今日干露ん家行かねぇ? 」


 尚吾はやはりバカなのか、 干露の妹である美緒が居る前で秀に聞いた。

 美緒には再びバカだと言われる。


「……いや、 俺は先に氷室の家に行く。 礼を言わないとな」


「まあ、 そりゃそうか」


 秀と氷室恵夢はやはり恋人になってたようで、 氷室の偽物の最期を干露から伝えられた秀は感謝しているのだ。

 ───────────────────────

 ──彼女が居なければとっくに『ゲーム』は終わってたかも知れない、 それも負けた形で。


「美緒、 干露の仏壇とかってあんのか? 」


「無いよ、 お姉ちゃん死んだ事になってないし」


 そう、 干露は未だに行方不明として捜索されている。

 何故なら遺体が消えて無くなったからだ。

 その場に居た幼馴染み達は箕輪流枷と共に消えたと納得出来るが、 世間はそんな事で納得は出来ないのだ。

 だからそれはメンバーだけの秘密となる。

 福瀬干露が消えた、 つまりはゲームの原因が消えて無くなったとなり喜ぶ人間も居る。

 だが彼女の成長、 行いを見て来た人間からしたらただただ御礼を思うだけ。

 でもそんな事を伝えられる人間が、 居るかどうかは分からない──。


「冬ってこんな寒いっけ」


 尚吾と美緒が帰り道でその声に振り向くと、 そこには誰も居ないどころか何も居ない。

 12月となり雪が降り積もる中、 その声は聞こえた。


「……空耳か? 」


「でも2人同じ言葉が聞こえるなんて……」


 どちらもが聞いた声は間違いなく聞き間違えない慣れた声……干露の声だった。

 そして2人は積もった雪の上のものに気付いた。


「足跡……? 」


「ここだけに……? 」


 雪の上には24㎝サイズの靴の跡、 しかも両足合わせて2つだけ……実際ありえない事だった。

 2人はそんなありえない事と分かってて辺りを見渡す。

 ……そんな美緒の瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた──。


「お姉ちゃん、 居るなら出て来てよ……」


 そんな声も虚しく、 福瀬干露の姿は一向に現れなかった。


 ──ロンドーア跡地が墓地に変わった土地に着いた秀は1人氷室恵夢の墓石を探した。


「……有った、 やっと会えたな氷室」


 彼は握り締め拳をゆっくりと開き、 彼女の頭を撫でているかの様に墓に右手をそっと触れた。

 こちらもこちらで、 愛する人間が亡くなったのだ。

 心中辛いのは言うまでもない。


「そっちに干露は居るか……? 俺は見かけないんだが、 また5人で揃ってたいものだな……まあ、 そんな事もう叶わないが」


 秀は崩れ落ちる様にして墓の前に座り込んだ。


「そんな事無いけど」


「!? 」


 足音がした方へ目線を向ける。────────────────────────

 ──そこには尚吾達が見たのと全く一緒の靴の跡が有った。

「干露か!? おい干露……!? 」


 そして同様、 辺りを見渡す。

 足跡だけじゃ居るわけ無いのに──。

 ────。

 その日の夜7時の事だった。

 幼馴染み達にメールが届く、 それは居る筈の無い人間からだった。

『ヒロ』と言う名の人間の事は、 もう言わなくても分かるだろう。


「お姉ちゃん……!? 」


「公園に集合……!? 」


「生きてたのか……!! 」


 3人共根拠は無くとも干露が生きていると信じ、 大木の有る広大な平原へとやって来た。

 公園と言われたのにここに来たのにはわけがある。

 ここは昔……いや、 実は今も公園なのだ。


「幕雷、 干露見かけたか!? 」


「いや居ねえ」


 来てみたは良いが、 誰も居なかった。

 それに真っ暗であまり見えない状況だった、 不安が増していく。

 ここは箕輪流枷と会い『指切り』をしてしまった場所……あの体験をしたこのメンバーは、 また何か有るんじゃないかと緊張で身体が強張る。


「お前ら、 何でそんなアホヅラしてるんだ? 」


「仕方ないだろう、 何も見えなきゃアホヅラにもなるさ」


 聞き慣れた2つの声に反応する3人の目線には、 月のライトに照らされた人型のシルエットが2人分見えた。


「なんだよ、 ありがちなパターンかよ……! 」


 涙を堪えながら言った幕雷は心臓が別の意味で高鳴る。

 ──怖いんじゃない、 疲れてるのでも興奮してるのでもない……ただの喜びの感情だった。


「ごめん、 ちょっと迎えに行ってた」


「すまん、 ちょっと迎えに来られてた」


 瓜二つなその2人は勿論、 福瀬干露と氷室恵夢だった。

 干露はやはり3度目も完全に死ぬ事無く、 この世を彷徨っていたと言う。

 そして氷室を見つけ、 共にここへと帰って来たのだ……墓はどうする気なのか。


「ちょっとちょっと、 2人共泣くなんてみっとも無いぞ。 喜びなよ」


「喜んでるんだよ、 干露……お帰り」


「お姉ちゃん達! 」


 おい幕雷、 私だけに言うな、 氷室も真横に立ってるだろうが! ……まあ、 こっちはこっちで専門が居るけどな。


「氷室、 また会えてとても嬉しい……また一緒に居ような」

 ───────────────────────

「ふふ、 お前の崩れ落ちた姿……思わず笑ったぞ」


 流石氷室だ、 ムードも糞もありゃしない。

 それだからこそ斎藤は惚れたのかも知れないけどね、 私は最後まで失恋だよ。


 ……でもまあいっか、 こうして皆また揃ったんだし。

 前と違うのは、 もうゲームに参加しなくて良いって事と桂木達とはもしかしたら会えないって事だけ。

 ──暫く私達をサポートしてくれた飛依は、 箕輪流枷が消えると同時に能力を失い呪いを諸に食らう羽目となった。

 呪いを食らいそのまま倒れ、 意識不明の重体になったというのだ。

 桂木は飛依を連れどこかへ消えた……あの2人なりの道を共に歩んで行くんだろう、 羨ましい限りだ、 応援するよ一生ね。


 大木を月明かりが照らし町に巨大な影を映し出す……そんな中、 その地には5人で戯れる高校生達の姿が有った。

 私達の普通との違いは、 『一度死んだ』と言う事。

 これは一生、 他の人間達が体験する事の出来ない事実……私達の秘密。

 でも絶対いつかバレるけどね、 どうせ誰も信じないと思うよ。


 崖になっている町と平原のギリギリの境界線に立ち、 背伸びをした私は仲間達の方へ振り向く。


「危ないぞ干露」


「大丈夫」


 この時自分で何が大丈夫なんだよと思ったけど、 気にしない気にしない。

 私は小指を立て、 笑顔になる。


「指切りしない? もう一生バラバラにならないように……って」


 私がそう言うと4人はお互いの顔を見合い笑い始めた、 何かおかしい?


「お前が悪霊じゃねーよなまさか」


「お姉ちゃん怖いからやめてよね本当~」


「まあ良いだろう、 やるぞ」


「だな、 集まれ皆」


「誰が悪霊だバーカ」


 5人で大木の中心へと集まり、 小指同士をくっつける……決して外さない様に。


「ゆーびきーりげんまん、 嘘ついたら針千本のーます──」


 この間、 私は閉じた瞼の裏でこの数日間の事、 そして箕輪流枷を含めた全員の事を思い浮かべていた。

 そして……。


「指切った──」


 私達はこれからも全員、 欠ける事無く生きていたいと願った──。

 ……ところで問題、 誰か1人……1度も死んで無い人が居るんだ────。






終わり。


エブリスタではあとがきがもっとちゃんと書かれてます。こちらで私が言うのは一つ!


ありがとうございました!



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