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指切り。嘘ついたら針千本  作者: ☆夢愛
6/9

第六幕 鎖の向こう側

 ──未知の3階に到着し、 私達は辺りを見渡したが特に下の階と変わる所は無かった。

 拍子抜けではあるが、 何か安心したような……とにかく何もなくてよかったかも。

 部屋のドアを全て開けた桂木は、 1人部屋の中を捜索し始める。

 よくそんな勇気が出るな。


「ダメだ、 何もねぇ」


 桂木の言葉に残念そうにもほっとした私達は、 階段を降りようとしてある違和感にようやく気付いた。


「外した筈の鎖が……」


 御堂の言うように、 私達がここに来る為に外した鎖が元に戻っていたのだ。

 ──それに何やら気分が悪くなって来た。


 ……邪気が戻ってる……!!


「箕輪流枷が帰って来た! 走れお前ら!! 」


 桂木の声に押される様に走り出した私達は、 周りなんて確認せずただただ出口に向かって行った。

 ──そう、 周りを確認せず(・・・・・・・)に。


 1階の大広間に降り、 扉のノブに手をかけた鷺宮だが、 すぐに開けないでもたもたしている。


「何してんだ! 開けろ! 」


 少し遅れて2階から降りて来た桂木は珍しく大声をあげている、 それほど危険な状況なんだと思う。

 それは私にも分かる。

 ノブから勢い良く手を放した鷺宮は床を思いきり蹴りながら私達を睨みつけた。


「開かないんだよ! 」


「嘘だろ……!? 」


 私達はここで死ぬ──!?

 そう考えた私と御堂の身体は地震かと思う程震え始めた……恐怖が復活してしまった。


「冗談じゃない……!! 」


 御堂は扉の右側にある窓を開けようとしたが、 急にそれをやめた。

 そしてかなり落ち着いた様子になって歩いてくる。


「今はまだ、 開けない方がいい」


「え? 」


 御堂、 お前何言ってるんだ? ──その瞬間だった。

 扉が何かによって城に打撃音を響かせる、 何かが扉を殴っている?


 私達はその音に対し恐怖をもち、 それでいて耳を塞ぐ事しか出来なかった。


「外に居るのは少女だ! 私達は城に守られているんだ! 」


 城に守られている──御堂は確かにそう言った。

 一体どう言う意味だ……!? 城は箕輪流枷の物じゃないのか!? 何で私達を守る!?

 ──もしかして……!!

 私は自分の掌を見、 強く握った。

 ───────────────────────

「飛依……!! 」


 そう、 この扉をロックし城で私達を守っているのは飛依だったのだ。

 何故分かったのかはただ単純に、 私の中に飛依が居ないからなんだ。

 いつもは勝手に喋ったりするし、 『中に居る』って感じがするのに、 今は抜け殻の様にその存在を感じないんだ。


「でもこれ! もう保たないよ!? 」


 ドアの1番近くに居る鷺宮は扉にヒビが入っていくのを目撃し、 叫んだ。

 箕輪流枷という悪霊相手には飛依は勝てないんだろう、 それにしてもこんな力を持つ飛依も一体何者なんだろう……でも今は助けてくれた事に感謝しよう。


「お前ら! よく聞け! 」


 桂木の声に全員が振り返る。


「これから言う事を絶対にこなせ! 」


 私達は真剣な桂木に頷き、 話を聞いた──。

 ──金属が壊れるバットで地面を叩いた様な音と共に扉が倒れる……周りを覗く箕輪流枷の眼には私達の姿は無かった。


「……!! 」


 突如彼女の身体は宙を舞い、 階段の壁に激突し床に倒れた。


「走れ!! 」


 私達は扉から少し離れた壁際にくっつかっていて、 少女を桂木が蹴り飛ばしその隙に出ると言う作戦を立てていた──これが先程の桂木の『言う事』である。

 城から門まで約110m、 私の速度だと18秒は絶対にかかってしまう距離……もっとも身体能力の高い御堂は先に行き、 門を開けに行く。


「うわぁっ!! 」


 御堂は急ブレーキをかけ、 その場に座り込んでしまった……目の前には全身から針が飛び出た女子生徒2人が倒れていた。

 門の外には居なかったらしく、 攻撃を食らってしまっていた……何て事だ……。


「御堂ーー! 」


 桂木は一旦止まり、 大声を出す。

 そして後ろには箕輪流枷の姿は見当たらなかった……。


「えっ……」


 直後、 目にも留まらぬ速度で私達を過ぎて行った箕輪流枷の手によって御堂の首は真後ろを向き、 大声も出す事無くその場に倒れた。


「くそ……!! 」


 御堂は死んだ、 そして箕輪流枷は眼前に居る……終わった、 私はそう思った。

 だが桂木は諦めようとせず、 城前に立てかけてあった御堂の薙刀を構え、 少女に突っ込んで行く。


「行けお前ら! 俺もすぐ行く!! 」


 嘘だろ!? ソイツとやって生き延びれる訳……!

 ────────────────────────

 桂木は薙刀を少女に突き刺し、 跡地の柵へ叩きつけた。

 そして後ろ向きに出口へ走って来る、 絶対に箕輪流枷からは目を離していない。


「出たぞ桂木!! 」


 ……ふと思ったんだけど、 『鬼ごっこ』を始めた時、 箕輪流枷は普通にこの門を出ていた……もしかして、 この門もう意味ないんじゃ……。


「ああああああああああああああああ!!! 」


 急に叫び出した少女の顔は笑っているが、 声は赤ん坊の泣き声にも似たものだった。


 何があった……!? 桂木の攻撃に怒りが爆発したとか……!?


「ふふふ……針千本……楽しいねぇ……」


 何だアイツ……! 邪気が異様なものになっている。

 門から数十mは離れてるのに、 すぐそこに居るように感じる程ヤバい気を感じる!

 桂木も無事門の外へ出たが、 まだまだ遠くに居る少女は歩みを止める事無く私達へと向かって来る。

 ……これは、 嫌な予想が的中してしまったかもしれない。


「走れ!! 」


 桂木の掛け声の直後私達は全力で走って行った。

 背後の確認なんて必要無い、 ただ遠くまで逃げなきゃ! ここで死んだら飛依の頼みも、 今まで死んだ人達の事も無駄にする事に──。


『……アレ? 私何で空を見てるんだ? さっきまで真っ直ぐ前向いていた筈なのに……』


 私の視界が完全に空になると、 目の前には見下ろした箕輪流枷が立っていた。

 身体の感覚はもう無い、 恐らく殺されてしまったんだろう……ごめん飛依、 そして今度こそさようなら幕雷……。





 翌日には、 テレビにて跡地を含めた計4つ(・・)の遺体が報道された──。

 あれ? 誰か1人生きてるのか……??

 ────────────────────────

 ────あれ? 誰か居る……大きな木下に、 5人……子供が遊んでる。


「かーくれんぼしーましょ、 見つかったらまーけよ」


 何か懐かしい気がする、 そうか、 あれは私だ……にらめっこの言い方で思い出した。

 あの頃はバカだったな……。

 じゃあ他の4人は……。


「俺が鬼やるー! 」


「ふっ、 それなら私がやるよ」


「えー私鬼やだー! 」


「じゃあ隠れりゃいいだろ」


 幕雷、 氷室、 美緒、 斎藤……やっぱお前らか、 喋り方あんまり変わらないんだな、 私以外。


 ──ん? 2人誰かが……。

「入れてくれないか? 飛依が入りたがってる」


「わざわざ言わなくても……」


 桂木、 飛依……!? 何でお前らも居るんだ? もしかして昔会ってたのか? ……いや、 これが記憶とも限らないけど……。


「いいよ! じゃあ開始! 」


「いや誰が鬼だよ」


 ですよね、 ごめんなさい。

 これ記憶に有るわ……アホやったのを覚えてる、 じゃああの2人とは出会ってたんだ……。


「私もいーれーて! 」


 ──!!! 箕輪流枷!? ……そうか、 ここで彼女が来て、 『約束』しちゃうんだったな。


「ヒロちゃん、 絶対、 見つけてよ? 」


「勿論! 何年経っても見つけるよ! 」


「いや今日中に見つけろよ」


 斎藤さっきからツッコミありがとうね、 今見てもの凄く恥ずかしいよ私。


 ……あれ? 1、 2、 3……9人居る……?


「ゆーびきーりげーんまん、 嘘ついたら針千本のーます、 指切った──」


 全員で指切り……そうだ、 私達はあの時からもうすでに5年以上経ってるんだ。

 単純な運命なんかじゃない、 ここで繋がる宿命があったんだ……生まれた時からこうなる運命だったんだ……。


「──おい、 もう帰ろうぜ。 さすがに諦めたと思うぞ、 アイツも」


 そう、 この時最後まで箕輪流枷は見つからなかった。


「ダメ! 絶対見つけるんだ! 」


 私は諦めなかった、 けど、 親に迎えに来られて見捨てる形になっちゃったんだ……。

 箕輪流枷、 君はそこ(・・)に居たんだね、 次はきっと──見つけてあげるから……。


 ──もう1人も。


「さてと……最後だよ、 箕輪流枷……」

 ───────────────────────

 私は木に寄りかかっていた身体を起こした。

 その身体はかつての自分の身体、 とても馴染み、 動きやすい……。


 私は大きな大きな木に一礼をし、 山を降りていく。




 そして箕輪流枷との最後のゲームに参加するため、 メンバーを探しに町へ向かった──。

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