128話 呼び方
「不思議な再会があったもんだねぇ。レオも、リンドールの前だとトゲが抜けるんだね。」
ギルバートがニコニコしながら2人を見ていた。
「おい、ばあさん、何ほのぼの見てるんだ。」
「近代用語が多すぎて、僕はついて行けなくてね。後でわかりやすく説明してよ。この老婆に。
あと、今回はリンドールだからいいけど、僕の性別を匂わすような言い方はやめてくれよ。」
ギルバートの笑顔が、怖い方に変わった。
「ああ、そうだったな。理由がしょうもなさすぎて忘れてたよ。」
レオよ、煽るな。
ほら、横でリンドールがどこから突っ込んでいいかわからず、口があんぐりしているぞ。
これ以上、刺激を与えるとまた倒れちゃうぞ。
「なぁ、エマちゃん、このじいさんは、実はばあさんらしいぞ。っぐ!!!」
あ、ギルバートが重力魔術を使った。
まるで子泣き爺だ。
レオがだんだん沈んでいく。
「ちょっと、ギルさんやめなよ。大人気ない、、」
エマが言った。
「失礼。レオ、僕は君より年上で、君のお世話係だ。目上に対する口の利き方には気をつけるように。」
「へいへい。」
なんだか、先生と悪ガキ生徒のように見えてきた。
「ふふふっ。ギルバートさんと先生は、もう仲が良いんですね。」
リンドールよ。本当にそう見えるのか?
「先生がそんなにウキウキしているところ、久しぶりに見ました。」
そう見えるらしい。
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「ねえ、レオが今まで私の事を名前で呼ばなかったのって、“エマ”って名前を呼ぶことに抵抗があったから?」
エマが聞いた。
たしかに、レオは一度もエマの名前を呼んだことが無い。
「どうだかな。呼んでやるよ。エマ。これで満足か?」
「んー。なんか、そう言う事でも無いんだけど。。」
エマは釈然としない様子だ。
「あ、呼び方ですね。“エマ”はエマさんなので、私の事はリンドールと呼んでください。この体、どうも“エマ”感が無いので。」
「ああ。わかったよ。リンドールちゃん。」
「あの、、できればもう33なので、ちゃん付けも、、、」
「前よりも小さくなってんじゃないか。エルフちゃん。」
「、、、何でもいいです。」
「あと、俺もだ。俺はこっちではレオンもヴァルターもやめた。レオだ。」
「ふふっ。先生も、自分のお名前、気にされてましたもんね。」
「あともう、医者じゃない。“医師”と呼ぶな。こっちではお前の方がヒーラーだろう。」
「そうですね。立場逆転ですね!」
リンドールは嬉しそうに言った。
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「ああ、そうだ。ヒーラー。俺に上級治癒をかけてくれ。」
レオが言った。
「え?どこか悪いんですか??」
リンドールが慌ててレオに触れた。
「えっ、、、、」
リンドールが驚いた顔をした。
「、、これ、スラムでもらったんですか?」
「いや、前の世界だ。ずっと薬を飲んでたんだが、こっちの世界に来て、薬が無くなって焦ったよ。初級でも治癒魔法が使えて良かった。」
リンドールがレオに治癒魔法をかけた。
「完治しましたよ。そうですよね。レオさんはお医者さんでしたから、血液感染だってありえますよね?」
「いや、どこで拾ったかは知らねえ。心当たりがありすぎてな。」
「ん?つまり、レオがかかってた病気って、、」
みんなの注目がレオに集まる。
「言っただろ?ゴムの開発は俺の為だって。」
レオがニヤリと笑って言った。
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「一年半も我慢してきたんだ。やっとゴムも完成して、心置きなくって思ってたとこだってのに、治っちまったよ。へへっ」
レオは下衆な笑いをした。
「女剣士、後で俺に付き合え。こっちでまだ一回もやってないんだ。俺ぁ限界だ。ゴムは無いけどな。」
「嫌よ。馬鹿じゃない?」
「先生!先生のお相手でしたら私が!!」
リンドールがレオに向かって叫んだ。
全員、コントのようにずっこけた。
「おいおい、エマちゃん、俺は自分の患者とはやらないって前も言ったろ。」
「もう先生の患者じゃありません!私も、前にも言いましたが、私、先生のことが好きなんです!!それに、、胸だって、エルフになって、先生好みの控えめに、、」
リンドールは顔を真っ赤にしながら言った。
どうやらリンドールは前世でデカ乳だったらしい。
「ははっ。転生しても相変わらずだな。おい、みんな出てってくれ。」
「え、、、嘘!?するの?!」
エマが驚いた顔で言った。
「お前も残るか?俺は3人でも構わねぇぞ。」
「しないわよ!!」
エマが怒って出て行った。
私たちも部屋を出る。
『ほんと、しょうがねぇな。エマちゃんは。』
レオの声と、
2人がキスをする音が聞こえた。