表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移ママの異世界奮闘記  作者: 平館 あや
第13章 『隠れサモンド』
129/298

114話 レオという男

「レオさんが来たのは1年半くらい前だった。身ぐるみ剥がされた状態で、ゴミ溜めに転がっていたんだ。


スラムの誰かが身ぐるみを剥がして放置したんだろうな。

真冬だ。放っておけば死ぬだろう。

と、誰も気に留めなかった。

スラムってのはそんなところさ。

ああ、イケメンが全裸で転がってるって、女どもはキャーキャーしてたけどな。


男はいつの間にか姿を消して、いつの間にか戻ってきた。

大量の薬草を持って。


『スラムの病気を無くしたかったら、俺に従え。』ってな。


びっくりしたよ。

人間なのに、治癒魔法を使ったんだ。

サモンドってのがいるってのは聞いたことがるあったが、見たことなかったからな。


それに薬草。

今まで見たことのない使い方をしてな。

風邪や擦り傷なんてのは一発で治った。


みんなが、神が来たって騒いだよ。


そして、レオさんは言った。


『俺がここにいることを口外しない限り、俺はここでお前らの面倒を見てやる。1人でも外部に漏らしたらすぐに出て行く。』

ってな。


もちろん、スラムの全員がレオさんに従った。

レオさんがいれば、大概の病気が治ったからな。


ただ、エイズだけは違った。

何度魔法をかけてもらっても、一向に良くならなかった。

すると、レオさんは、『上級治癒で病気が治るか試したい』って言って、

1人だけエルフの病院に連れて行かせたんだ。

レオさんの頼みならと、みんなでお金を出し合って重度の患者を送り出した。


病気は治った。

でも、みんなで集めた金は全て無くなった。


それにはみんな絶望した。

何十人といる感染者。全員を病院に連れていく金がスラムにはない。

この病気だけはレオさんじゃ治せない。

重度の俺たちは一生このまま、死に怯えながら過ごすのかと。


でもレオさんは諦めてなかった。

必ず治すから、俺の治癒を毎日受けて、なんとか生きていてくれと。


そして、昨日。

夜に、レオさんが、言ったんだ。

俺たちをここに集めてな。


『ここで待てば良い。治してくれるやつが勝手にやって来る。』って。


そして、レオさんの言う通り、あなた達が来た。」


ーーーー


何というか、はめられた感がすごい。


「そういう事だ。治してくれてありがとよ。」

レオがやってきた。


やっぱり嫌な奴だ。



「おい、エマはどこだ。」

アルクが険しい顔で言う。

一緒にいるはずのエマの姿がなかった。


「あいつなら俺の家で寝てるぜ。可愛いやつだな。辛そうな顔しながら、『もっと、、もっと、、』って。」

「は?!」

「俺が出した仲間になる条件覚えるか?」


“仲間になって欲しかったらヤらせろ”


「エマと、、したの?」

「へへっ。最高の女だったぜ。」

レオがニヤリと笑って言った。


「酷い!!!」

私はレオを睨んだ。



「あ、俺の家に行くなら、お前の娘も連れて行くといい。なんなら気付け薬も出してやる。」

「紗奈を?気付け薬?!エマにどんなことをしたのよ!!」

「へっ。行けばわかる。」


私は慌てて紗奈を連れて、レオの家に行った。


「ちょっと待ってて、部屋の中を確認してから呼ぶから。」

裸だったら大変だ。


紗奈とアルクを置いて部屋に入る。

服を着た状態で床に転がされているエマ。



ん?



「紗奈、アルク、入っていいわよ。」

私は2人を呼んだ。


「はーい。あれ、エマおねえちゃん、、、」



エマは魔力枯渇で気絶していた。



「スラムの軽度の怪我人や病人達に、治癒をかけて回らせた。そしたら、こいつ、まだヤれる。もっとイける。ってな。一通りスラムを回ったところで気絶したな。」


いちいち卑猥な言い方しないでくれ。


「おねえちゃん、魔力をあげるね!」

紗奈が残っていた自分の魔力をエマに与えた。


ーーーー


しばらくすると、エマが目を覚ました。


エマがレオに言った。

「、、案外あんた、良いやつだったわね。スラムのみんなを助けようとしていたんでしょ?」

「ふっ。俺が良い奴かどうかは知らないが、スラムの奴らには世話になったからな。借りた恩を返しただけだ。」

レオが笑いながら言う。



「昨日お前らと話した時に、お前らの魔力から、相当なお人好しってのがわかったからな。スラムの現状を知ったら勝手に助けてくれると踏んだんだ。」


昨日話した時点で、そう判断し、今日の計画をした。


「なら、何で昨日の時点で、私達に治して欲しいって言わなかったの?あの場でヒーラーが必要だと言ってくれても、すぐに紗奈を連れて来きたわ。」

私がレオに問いかける。


「俺がお願いして『やってもらう』のは嫌だったんだ。お前は口にこそ出さないが、内心、スラムを“臭い”とか“汚い”とか思ってるだろ。

そんな風に思ってるやつに“仕方がないから”って助けてもらっても、こっちも良い気分はしないからな。だから、お前らが本気で助けてくれる気があるかを試した。」


私は目が泳ぐ。


「良いんだ。それでもお前は自分の判断で、汚いスラムに大事な大事な娘を連れて来た。その心意気で合格だ。俺はお前が気に入った。表面は兎みたいに真っ白な癖に、内側でこっそり黒猫を飼ってる魔術師をな。」


なんだ、兎とか黒猫って。

あ、アルクが笑ってる。


「女剣士、お前もだ。今日のお前の行動、気に入ったぜ。じゃじゃ馬みたいに鼻っ柱が強くて、猪みたいに突っ走る所をな。」

「何よ!馬とか猪とか、リサと比べて全然可愛くないじゃない!」


アルクは一言二言しか話してない割に一発合格だったらしい。

紗奈は言わずもがなだ。



「ねえ、なんであんたは、私たちが今日ここに来るってわかったのよ?」


「お前らは本当に鈍感だな。昨日、お前らが英雄の家に行くのを付けてたんだよ。もちろん話もしっかり聞かせてもらった。俺は索敵のサモンドだ。聴力だって強化できる。その気になれば壁の向こうの会話も聴ける。」


聴力強化!!

なんというか、索敵。怖すぎる。



「でもなんで診療所で姿を現わしたんだ?姿を現さなくてもサナに治癒魔法をかけてもらうことは確定していた、お前はこのまま逃げられた。」

アルクが言った。


「ああそうだな。逃げて欲しいか?俺は二度と捕まらねえぞ。」


「、、、困るわね。」


「借りは返すもんだ。お前らは俺の1番の望みを叶えてくれた。だから俺はお前たちの望みを叶えてやる。」



「つまり、、?」


「仲間になってやるよ。」


レオはヘラっと笑いながらそう言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ